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『がん消滅の罠 完全寛解の謎』岩木一麻

2017-02-24 | books
大日本生命の森川と水嶋は、不思議なことに気づいた。保険加入から比較的に早くがんと診断され、リビングニーズ特約として亡くなる前に保険金が支払われたのに、そのあとでがんが寛解(完全に治ってしまった)という例が何件も続いたのだ。担当の医者は日本がんセンターの夏目。高校時代からの友達なので、話を聞きに行くと、何も不審な点はない。しかしがんが治る・・・10年前、夏目が大学にいたとき、自分がついていた西條教授が突然辞めてしまった。「医師にはできず、医師でなければできず、そしてどんな医師にも成し遂げられなかったことを」するために。その後、西條先生は湾岸医療センターの理事長になっていた。がんが治る件は、このセンターが関わっているらしい。夏目は研究所の羽島とともに「がん寛解」の謎を解く・・・

こりゃ、面白かった。もういっちょ。こりゃ、面白かった。

がんが治るのならそれはいいことなのだけれど、その裏に何か不正があるとすればそれは見逃してはいけない。仮説を立て検証し、誤った仮説だと分かれば、別の仮説を立てる。それを繰り返して真相に迫る。面白い。面白すぎる。

西條率いる湾岸医療センターが怪しいのはすぐに分かる。担当の医者が怪しいことをしているから。しかし、どうやって不正なことをしているのかはさっぱり分からない。羽島と夏目と森川たちが少しずつ検証していくのを一緒に検証していく。高度なミステリーだ。

政治が官僚機構に有効に対抗し得ないことはこれまでの歴史が証明している。厳しい採用試験を通過したエリート集団である官僚に、衆愚的に選出された政治家が対抗できるわけがないのだ、そういう意味では民意を実現する手段としての政治というものは、形式的な幻想に過ぎない。その構図を変えることは容易ではないだろう。

なんて言葉も出てきたりする、「このミステリーがすごい!」大賞受賞作だった。

【2017年・第15回『このミステリーがすごい!大賞』大賞受賞作】 がん消滅の罠 完全寛解の謎 (『このミス』大賞シリーズ)

今日の一曲

がん、と言えばやはり、Guns N' Rosesで、"Live And Let Die"



ガンダムの方がよかっただろうか。では、また。
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