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『ソロモンの偽証 第III部 法廷』宮部みゆき

2012-11-01 | books
「ソロモンの偽証 第II部 法廷」宮部みゆき 新潮社 2012年(初出小説新潮2009年9月号~2011年11月号)

「第I部」「第II部」に続く最終巻 やっと裁判が始まった…

中学生によるおこちゃま裁判なんてバカらしくて読んでられるかと思って読み始めてみたら、どっぷりとハマってしまった。長い長いと思っていたのにそれも慣れてしまった。人間とは慣れる生き物なのね。

事件の関係者の誰もが持っていた闇。事件が照らし出した明るい部分。光と闇のコントラスト、がテーマだと思う。

ラストは賛否両論ではなかろうか。ラストに差し掛かったときにはうーんと思っていたけれど、結局このラストしかないんだと思うようになった。

第I部、第II部で出てきて、あれは何だったんだというような人物も最後までにはまた登場してちゃんとまとめてくれる。さすが。

ヤマシン君の、武道を修める者はいかなるときでも驚いてはいけない、驚きが平常心でなくてはならない、という筋とは無関係な言葉がどういうわけか記憶に残った。

10年後、20年後にもきっと読み続けていかれるであろう良い小説だった。

内容には触れず、短めにて失礼。


ソロモンの偽証 第III部 法廷
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4 コメント

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期待 (パール)
2013-02-12 22:21:49
図書館に予約していた本が一度に4冊届きました。2週間で4冊。そのうちの3冊が「ソロモンの偽証」。厚い、重いと言いながらも読み終え、期限までに返却できてほっとしました。

宮部さんの文章は読みやすく、予想通りの、登場する子ども達や本を手にした中高生に希望を残す結末でした。人の心の悪を徹底的に描いて、身震いするほど生きることを嫌悪させる ことをしない温かさは、宮部作品の持ち味でもあると思うので、中学生を主人公にしたのは良かったと思います。中学生には、ぜひに!とお薦めいたします。

良い小説であるとは思いつつ、心に残らないくらい巧みすぎる…なんて思ってもいる私は、あざといミステリーに慣れすぎてしまっているんでしょうか(あざとさが先に立つ作品はもちろん不快なだけです)。宮部みゆき作品への期待が高すぎるんでしょうか。最近は、時代物の方が好きですが、ミステリーでもぶっちぎりの傑作を!期待しています。
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こんにちは (ふる)
2013-02-13 13:27:10
★パールさん、

「ソロモンの偽証」を2週間で読み切るのはなかなか大変だったでしょう。

巧みすぎる小説は、心には残らない、という言葉には色々考えさせられています。

巧みでない小説でもダメなんだろうと思いますが、上手過ぎると、流れが自然すぎるのでしょうね。水が上から下へと落ちるという事象は、当然であって心には残らない、というのと同様なのかも知れません。

昔の記憶をさらってみると、強烈なオチがラストにある短篇小説についてどんなオチだったかほとんど覚えていないですね。記憶に残っているのは、壮大なオペラのような作品や人間ドラマが多いです。例外は横溝正史や江戸川乱歩、クリスティのようなネタとドラマがうまくかみ合っている作品や島田荘司の「占星術殺人事件」や綾辻行人の館シリーズのような、謎解きで腰を抜かすほど驚いた作品ぐらいです。

推移について考えてみると、昔はネタ中心、年齢とともに人間中心に読みどころが変わってきてるようです。何を小説に求めるかは人それぞれでもありますしね。

宮部作品に何を求めるかによって評価は変わるように思いますが、私はドラマ+ばら撒いた伏線の収斂を求めており、それに関しては本作品は十分に合格点でした。心に残ったかと問われると、また話は別ではありますが。
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Unknown (パール)
2013-02-13 19:05:06
いつも、読み終えて違う世界から帰ってきたまま、着替えもしないで、ふるさんにコメント書いている感じです。すみません。
心に残らないくらい巧みすぎる…なんて偉そうなのでしょう。お恥ずかしいかぎりです。

クリスティやクイーンの作品のいくつかは、今読み返しても おおっ と思わせられます。
他の方の作品でも >ドラマ+ばら撒いた伏線の収斂 が満たされると 満足度は高いです。

「ソロモンの偽証」は合格点以上だと思います。大勢の登場人物、メインのストーリーと周囲のストーリーがバランスよく描かれています。好きな作品だといえるでしょう。
おそらく、私が不満なのは、群像劇のようでありながら、一部の登場人物が、いいこちゃんすぎることでしょうか。後付けですけど。
いつもおかしなコメントで申し訳ありません。
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こんにちは (ふる)
2013-02-14 14:04:55
★パールさん

心に残らないほど巧みである、ということは充分にあり得ることだと思いますよ。偉そうだとは全く思いません。

滑らかすぎるものよりも、「カラマーゾフの兄弟」や「ドグラ・マグラ」のようなひっかかりのある作品の方が心に残ることはおおいにあると思います。

一部の登場人物がいい子すぎるとのことですが、確かにその傾向は強いですね。そんな子はいないよ、というツッコミを入れられるほどリアリティに欠けているかどうかはギリギリかなと思っています。見方によって若干違いますでしょうか。

リアルすぎる小説は、現実を忘れさせてくれなくて、面白さに欠けてしまう可能性はありますし、また1日を24時間かけて見せるのではなく、10年を2時間で読ませるわけですから、そこで様々なテクニックが駆使される過程でリアリティが犠牲になる可能性もあります。

本作は、リアルじゃねえよというツッコミの可否よりも、リアルじゃないからつまんねえよというツッコミの可否の方が考えるに値するように思います。

第II部の感想に書いたのですが、本作を「警察小説」だと考えて、登場人物は本来は警察官なのですが、この場合は中学生という入れ物に入っていると考えると、リアリティがなくていい子すぎるのも許せるような気がします。そして面白かったからいいではないかとも。

とは言いつつも、おっしゃる通り私も、いい子ばっかりで何か気に障るのー、と思っていたのは事実ではありますが。
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