佐々木譲と言えば、「鉄騎兵、跳んだ」でデビューした後、その後どうしてるのかなと思っていたら、約10年後「エトロフ発緊急電」で大復活を遂げた。第二次大戦をテーマにした作品を量産するのかと思えば、「武揚伝」では時代もの。最近では、「制服捜査」「笑う警官」と警察モノを連発。北方謙三がハードボイルドから時代ものへ行ってしまったきり。志水辰夫はハードボイルドから時代物、恋愛方面へふらふらしてるように見える(シミタツ節復活はあるのか?)船戸与一もハードボイルドから時代物方面へ行ってしまったようである。
船戸与一ならなんと言っても「山猫の夏」、志水辰夫には初期の名作が多いが、タイトルに興がある「背いて故郷」「裂けて海峡」「飢えて狼」、北方謙三は初期にハードボイルドを量産していた記憶があるのでこれ一冊と絞れない。いずれにしても、彼らに純国産純度100パーセントのハードボイルドへ戻ってきてもらって、どーーんと私をのけぞらせて欲しいと願う。
さて、佐々木譲は、上に書いたように、バラエティに富んだ作品群を発表してくれている。その多くは「読んだ時間は決して無駄にならない」作品群。○○作家というレッテルすら拒否しているように見える。
さて、「警官の血」
上下巻合わせて800ページ近くある。実はこのブログにしては珍しく、読み終わってから、すぐにPCの電源を入れてこの記事を書き始めた。いや、書かずにはいられなかったのだ。(というほどのレビューを書けるような力はないのだが)
誰かのレビューを読もうが読まなかろうが、スチュワート・ウッズの傑作「警察署長」を連想してしまう。調べてみたら、俺が高校生のときに読んだようだ。そんなに遠い昔に読んだ小説のことをいまだに覚えているとは、よっぽどの印象だったのだろう。もちろんこの「警察署長」はオススメだし、確かNHKがドラマになったものを放映したはず。原作も映像も高いレベルであるという稀有な例。
「警官の血」は: 親子三代に渡る警官の物語でもあり、戦後まもなくの日本から現代の日本を描く歴史を感じる作品でもあり、謎ときとして上質のミステリーでもある。
これだけ長い小説を、3日で一気読みしてしまった。それが端的にどれだけ面白いかをあらわしている(だから、もうレビューいらない?)実は、ラスト近辺で明らかになる謎は、「ああ、やっぱりそうだったのか」と失望したのだ。ところが・・・・・・(以下省略)なんとそう来たのか。
しかし、単なる謎解きミステリーだと思って読むと、警官の日常・苦悩などの人間的側面を読んで飽きる人もいるのかも知れない。(新本格と言われるミステリーはそれだろう)あるいは、常にどんでん返し・どんでん返しを期待するとそれも肩透かしをくらうだろう。少しずつ進むストーリー、徐々に明らかになる真相、そしてなんと言っても、三部構成になっているそれぞれの主人公である祖父・父・子の三代の警官の生き様こそが読みどころだ。
「いいか、すべて罪は相対的なものだ」(下巻355ページより引用)
このとある登場人物の台詞に大いに考えさせられた。
罪とは果たして相対的なものなのだろうか?
すべての物は相対的にしか存在しないとアインシュタインは言う。
善も相対的、人間の成すことは全て相対的・・・・・・そんな風に考えている内に、佐々木譲とアインシュタインの顔がちらちらと眼前を揺れながら、夜はふけてゆく。
警官の血 上巻佐々木 譲新潮社このアイテムの詳細を見る |
警官の血 下巻佐々木 譲新潮社このアイテムの詳細を見る |
警察署長〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)スチュアート ウッズ早川書房このアイテムの詳細を見る |
警察署長〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)スチュアート ウッズ早川書房このアイテムの詳細を見る |
人気blogランキングへ
自作面白ネタブログランキング
まだ血を吸う気持ちにはなれませんが、
いずれ読むこともあるでしょう。
佐々木譲、読んだことありませんが、今日の
北海道新聞に寄稿していました。ニンテンドー
DSで漢字検定をやっているそうです。
かなりはまっているとか。
とてもいい質問です(笑)
この本は図書館で借りて読みました。
本は買わないと気がすまない派だったのですが、できればもうこれ以上本を増やしたくないので、場合によっては図書館で借りたり、人が貸してくれたり。と言いつつ、まだ本は買ってしまいますが(苦笑)
今は基本的に再読に耐えうるか、手元に置いておいて、後で参照するかによって買う・買わないと決めてますが、この本は充分再読に耐えうる本なので、後で買おうと思っています。
まあそんなことをしていると書店で見かけたときに、
「あれ?この本買ったっけ?」と悩むのですが。
また、「カラマーゾフの兄弟」のように旧訳と新訳が両方書棚にあったり、翻訳されたモノが肌に合わないので、原書を買ったりとか。要するに無駄使いです(笑)
sumomoさんのご近所の図書館が小さいとのこと。
足を伸ばして、大きな図書館にたまには行ってみるのもよいのではないでしょうか?書店ではもう置いていない蔵書の山に圧倒されます(笑)東京なら広尾の都立中央図書館、国会図書館、日比谷図書館とか。sumomoさんの住んでおられる地域(区、市)の中央図書館なら品揃えが豊富でしょう。小説を探しに国会図書館に行く人はあまりいないとは思いますが(笑)
私個人の体験では、普段行かない書店、図書館、資料室に行くと、新鮮な本の置き方のせいなのか、新発見が多いです。
おっと長くなってしまいました。失礼。
★あお空さん、
佐々木譲は確か今も北海道在住のたずです。
北海の貴公子、あお空さんは読まねば。
しかし現役の小説家が任天堂DS、しかも漢字検定にはまるとは・・・・・・
時代は変わっているのですね。
どうりで、
私が最近コスプレにはまってるわけです。
個人的に連合赤軍に興味があるので第二部がかなり好きでしたね。
昨日夫が読了したのですが、佐々木譲に興味を持っちゃいまして、他の作品も読んでみたいと言うのです。
>「制服捜査」「笑う警官」
にもチャレンジしてみようかしら~?
私も個人的に連合赤軍および赤い旅団、バーダー・マインホフ等、当時の組織や取り締まる側の抗争、あるいは思想などに興味を持っております。いやそんなことはどうでもいいですね。
ミチさんのおっしゃる通り、
第二部への流れて行く過程など上手かったですね。
実は「制服捜査」「笑う警官」について記憶が失われてしまいましたので、
オススメなどうか不明でございます。
間違いないのは作者違いですが「警察署長」ですね。
今読んでる「フロスト気質」もオススメです。