頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『十三階の神(メシア)』吉川英梨

2018-09-12 | books
公安の捜査官、黒江律子は仕事に埋没するタイプ。(オウム真理教を連想させる)カイラス蓮昇会は20年ほど前に、無差別テロ事件を起こした宗教団体。教祖や実行犯は逮捕され、死刑判決が下っている。カイラスは解散したが、分派は活動しており、その一つの輪芽11に、律子の母親が入会してしまったと妹から知らされた。母親をどうやって脱会させればよいのか・・・病院で薬品盗難事件が起こった。律子はその捜査を妨害しようとする。なぜ?・・・公安は、カイラスの教祖が死ぬと、信者たちがテロを起こすのではないかと危惧している・・・

うーむ。ラストはかなりストーリーが詰め込まれすぎてごちゃごちゃしてしまった。それまではぶっちぎりで面白かった。

なぜこんな大変な仕事を続けているのか尋ねられ、

「ここまできて今更やめられない、ここ以外に居場所がない、というのも正直、あります」
うんうん、と久間は幼い子供と接するかのように頷いてみせた後、「同じだよ」と厳しく律子に投げかけた。
「信者たちも同じだ」
「なにが同じなんです」
「彼らは宗教が好きなんだ」
律子は思わず、眉をひそめた。
宗教が、好き。そんな感情がこの世にあると想像したこともなかった。久間が続ける。
「君は捜査や諜報活動が好きなんだろ。緻密な作戦を立てて実行することに、血湧き肉躍る高揚感を覚えて、それが楽しくて仕方ない。彼らだってそうだ。彼らは宗教の話が大好きで、修行が大好きなんだ」

なんて表現があったり、また、

ビールが喉を通るたびに上下するの喉仏を見て、もう自分がビールになって飲まれたいと思うほどに、古池に恋焦がれていた時期もあった。

ビールになって、飲まれたい!巧い。

どんでん返しが大量にあり、読み飛ばせない重厚さは嬉しい。ラストの渋滞さえなければ年間ベスト級だったろうか。


十三階の神
吉川英梨
双葉社



今日の一曲

Suedeで、"Life Is Golden"



では、また。
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