「さらば雑司ヶ谷」樋口毅宏 新潮社 2009年
5年ぶりに中国から帰国した俺が向かったのは故郷、雑司ヶ谷。祖母は教祖で、すげえ力と金を持っている。昔つるんでた悪い仲間たちは死んだり殺す側に回ったり。親友の京介を殺した芳一への復讐、昔好きだった雅子への思い、中国で俺を蹂躙した閣をどうしてくれようか。複雑に絡みながら…
いやいやいや。なんじゃこりゃ?これが読み始めて思わず発した我が独り言。ずっとこんな感じが続く。一言で言えば「超ウルトラスーパーB級バイオレンス」
細かいエピソードの進め方は強引でB級。なのに全体として破綻していないのはすごい力量なんだと思う。バカバカしいのについ読んでしまう。体に悪いと知っているのについ食ってしまう深夜ラーメン、ついやってしまうドラッグのようなものだ。「民宿雪国」と同様に。
宗教、グロテスク、エロ、深くて狭くて、広くて浅い。
夏目漱石パスティーシュはあるし、小説内小説「ごころ」なんかも実に読ませる。そしてそして。長い引用許されたし。
「むかし、いいともにオザケンが出たとき、タモリがこう言った。『俺、長年歌番組をやってるけど、いいと思う歌詞は小沢君だけなんだよね。あれすごいよね、”左へカーブを曲がると、光る海が見えてくる。僕は思う、この瞬間は続くと、いつまでも”って。俺、人生をあそこまで肯定できないもん』って。あのタモリが言ったんだよ。四半世紀、お昼の生放送の司会医を務めて気が狂わない人間が!まともな人ならとっくにノイローゼになってるよ。タモリが狂わないのは、自分にも他人にも何一つ期待をしていないから。そんな絶望大王に『自分はあそこまで人生を肯定できない』って言わしめたアーティストが他にいる?マイルスに憧れてトランペッターを目指すも、先輩から『おまえのラッパは笑っている』と言われて断念して、オフコースが大嫌いで、サザンやミスチルや、時には海外の大物アーティストが目の前で歌い終えても、お仕事お仕事って顔をしているあの男が、そこまで絶賛したアーティストが他にいて?いるんなら教えてちょうだい。さあさあさあ」(46頁より引用)
「愛が神へと導かれていくことを示唆しているのよ。どう、すごいでしょ?歌うことがないからとりあえずラブソングを歌っている連中とは違うのさ。誰もが気軽に聴けるポップソングの中に深い真理をこめたフレーズを織り交ぜる。それが大事なんだよ。エリート主義や選民意識は要らない。敷居は低く、でも分かる人にはよりその深みと凄さが分かる。それがポップソングの優れたところなんだ。私にポップソングの深みと有効性を教えてくれたのはビートルズじゃない。ましてジャズでもない。オザケン、小沢健二なのさ」(47頁より引用)
「愛が神へと導かれていくことを示唆しているのよ。どう、すごいでしょ?歌うことがないからとりあえずラブソングを歌っている連中とは違うのさ。誰もが気軽に聴けるポップソングの中に深い真理をこめたフレーズを織り交ぜる。それが大事なんだよ。エリート主義や選民意識は要らない。敷居は低く、でも分かる人にはよりその深みと凄さが分かる。それがポップソングの優れたところなんだ。私にポップソングの深みと有効性を教えてくれたのはビートルズじゃない。ましてジャズでもない。オザケン、小沢健二なのさ」(47頁より引用)
ストーリーとは無関係なので取り上げてみた。なんだろう。この文章の力。小沢健二なんてあまり興味ないと思っていたのに、ちょっと聴いてみようかと思わせる。小説から外に出て何かをさせるのが真の小説の力だと思う。そしてこの小説には力がある。
しかし超B級であることには変わらない。
ミシュラン三ツ星シェフが作った闇鍋のようなものだろうか(どんな喩えやねん)
毎日カラダが溶けそうなくらい暑い。この本を読んでココロも溶けてしまった。
では、また。
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なるべく早くR.I.P読みたいと思っています。
オザケンの動画は記事の一番下に貼り付けてありますよ。
よく知らない曲だったのですが、興味を持つようになりました。
決してメジャーになってはいけないB級感がよかったですね。
お久しぶりです。
読まれたんですね。
熱い内に
“雑司ヶ谷R.I.P”を読んでみて下さいね。
私は すぐにオザケンのYouTubeを続けて見てました。
オザケンの疑惑についてはR.I.Pに書かれてたような。
アントニオ猪木も調べましたよ。
ふるさん もジェットコースターみたいに読んだんですね。
バキとか読んだ時の感覚に似てるかな。
B級ですよね。
けど面白いです。