頭の中は魑魅魍魎

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『東京クルージング』伊集院静

2017-03-14 | books
作家伊地知は当時ニューヨーク・ヤンキースにいた松井秀喜を特集したテレビのドキュメント番組の制作でディレクターの三阪に会う。とても好感が持てる青年だった。三阪には、15年前大学生だったときに付き合っていた女性がいた。しかし彼女は突然失踪した。そしていまだに彼女のことが忘れられない・・・ 後半は、その彼女はどこで何をしてたかを描く・・・

前半は臭い。猛烈に説教臭い。よくこんな説教臭い小説書けるなと思いながら読んでいた。しかし、公判になったら思わず前のめりになって読んでしまった。

「そう。日本だけじゃなくて、世界中に”天使のわけまえ”はあるんです。たとえば春になって美しい桜が咲きはじめますよね。毎日、それを眺めていて、或る朝、その前夜がとても風が強い夜だったとするでしょう。朝、目覚めて桜を見に行くと、半分近くが散ってしまっているとするでしょう。それを眺めて、悲しんだりせずに、きっと昨夜、天使たちが花見をしに来たんだろうって。私たちは自分だけが美しいものを見ることができれば、それでいいと考えがちですが、そうじゃなくて、世の中には理屈だけで片付かないものがたくさんあって、そういう時に、前向きで考えられるかどうかが大切なんだと思うんです」


白石一文の小説によく出て来るファンタジーが含まれている、いわゆる「いい話」だった。何かに打ちのめされていたり、何かに癒されたいと願っている人に、オススメ。

東京クルージング

今日の一曲

東京クルージング、ということで、Basiaで、"Cruising For Bruising"



では、また。
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