「愉楽の園」宮本輝 文藝春秋 1989年(初出文藝春秋1986年5月号~1988年3月号)
バンコク、内務大臣サムスーンの愛人として囲われる女、恵子、会社を辞め世界中を放浪しバンコクにたどりついた男、野口。サムスーンと暮らして三年。なぜ恵子はこのような生活を選ぶことになったのか…
うーむ。宮本輝作品の中で、そのトップクラスの作品である、とは言えない。何がテーマなのかよく分からないのと、登場人物に感情移入しにくいのが難点。
しかし、謎が解かれていく様は悪くないし、バンコクの描き方は秀逸だ。
野口が、バンコクで身も心も溶けてしまうのだが、私自身も同様の経験があって、自分がなぜあんな風になってしまったか考えるヒントを貰った。
東南アジアでどこか永住しなければならない国、もしくはまた行きたいところときかれたら、ベトナムかマレーシアと答える事との関連はよく分からないけれど。
いや、ほんと、分からないことが多すぎる。
では、また。
宮本輝作品は割と最後まで読み切ってしまうタイプのように思いますのが、しかし本作が読みきれなかったのも分かる気がします。
エロティックな作品が他にないかなと思い出そうとして、どういうわけか最初に松浦理英子の「犬身」のことを思い出しました。
そうですか、ものすごくいやらしいんですね(笑)。
長い年月を経たので、今なら(いやらしい作品でも)大丈夫だと思います。
なんと言うか、不思議な作品でしたね。
確かに、ものすごくいやらしかったです。
作者がいやらしいから、もしくは作者の脳内がいやらしいからこそ書けるのか、あるいは登場人物が勝手に動き出しているので、作者のいやらしさとは無関係なのか。
なんてことを思ったりして面白いです。
私はかなり好きでした。
宮本輝さんが
「これって俺、どんだけいやらしいんやろ、って思った」
と自作品を述べられていました。