まほろば日記

fujioの日常の出来事、記録等を思いつくままに書いた日記です

命が惜しければヘルメットを被りましょう

2010-08-10 22:39:29 | 日常
平成22年8月6日から8月9日
2年連続して西穂高岳から奥穂高岳の縦走をガイドに頼んだが雨のため中止された不運な会員から今年はぜひとも実行したいと同行を依頼されました。連れて行くのではなく十分訓練をつみ自立的に行動することを条件にお引き受けしました。1年間、岩登り、ボッカ訓練等あらゆる困難を想定し、よく訓練しました。初めは5人でしたが家庭の事情、健康状態から3人になりました。軽量でいければそれが一番ですが万一の状況を考慮しツェルト、コンロ、ザイル、じゃくかんの登攀用具、アマチュア無線が共同装備で各自に分担、水は各自3リットルその他アイゼン、雨具、食料、着替え等で12キロ程度とかなり多めになりました、もちろん涸沢までヘルメットは着用しました。これだけ準備していれば何があっても大丈夫、対応できます。睡眠不足による体調不良者もあり予定より2時間あまり余分にかかりましたがマイペースで無事5時に奥穂高岳山頂に着きました。こんな重荷を背負いよく岩峰を越えたものだ。1年間の苦労が実り大感激でした。5時も過ぎ、暗くなり、頂上は誰もいません。少し下ったところで中年のご夫婦が立ち止まっておられた。「妻の体調が悪くて歩けない」その症状から高山病と思われダイアモックスを差し上げた。このまま放置できないのでご主人を先頭にそのザックを奥さんが持ち私が最後で奥さんにハーネスをつけザイルをタイト状況にして確保しながら下る。薬が効いてきたのか足取りは大分よくなった。急坂では足元を固め確保して下ってもらった。難関の山荘前の絶壁に架かる2段はしごではご主人は先の降りていただき、奥様は私が上部よりザイルで確保し、自力で下ってもらった。
ご主人はストックを2本所持しておられた。次は私が確保をとき下る順番であり、ご主人が奥様を横に引っ張られたとき何か跳ねたような気がした。ご主人が横倒しになり「ごろり、ごろり」と3,4回転して落下した。「あなた」「あなた」、奥様の悲鳴が響く。私もすぐ下のテラスにたむろする人ごみに向かって救助依頼を叫ぶ。しかし、誰も動かない。時間が止まっているようだ。早くするよう再度叫ぶ。奥様をご主人の転落したところまでザイルを緩めて下ってもらう。ずいぶん時間がたったような気がしたがようやく数名の隊員が現れ奥様にご主人が呼びかけに応えるか聞いている。落ちた所が安定した広い場所なので私も下る。頭部から血が出ている。上がってきた隊員が負傷箇所の確認、三角巾で頭部の止血、歩けないようなので背負って降りることをきめられ、背負いベルトをご主人にセット、その間にも他の隊員が懸垂用にザイルを2本セット。上部でザイルを繰り出し、背負った人の下に2人、横に一人サポートにつきたちまちに下っていった。さすがプロ、まったく無駄の無い動きであった。命には別状は無いようなので一安心。ただヘルメットを被っていれば頭部は保護され、足の骨折か打撲ですんだものをまことに残念。転落しても頭さえ保護されていれば命には別じょうない。一般の人にもヘルメットの大切な役割を理解されただろうか。
下から見ていた仲間の言によればご主人は落ちる時、奥様のザイルをつかんでいたとの事であり大きく飛び跳ねることなく斜面を転がったので大事には至らなかったようです。翌朝ヘリコプターで搬送されました。
翌日下山中、まちがってガラ場の沢に下った者があり蟻地獄のごとき状態で上がれずもがき苦しんでおるところを私がザイルで引き上げ喝采を浴びました。共同装備のザイルがこんなに役立ったことはありません。よかった。よかった
念のため申し上げれば稜線上は岐阜県警、麓の涸沢は長野県警の管轄です。どういう意味があるの・・・それは秘密。
コメント (1)
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八ッ峰(剣岳)縦走

2010-08-04 16:15:38 | 日常
平成22年8月4日
剣岳の八ッ峰は槍ヶ岳の北鎌尾根、前穂高岳の北尾根とともに日本3大岩稜のひとつで登山者の憧れの岩稜であり今回ですべての岩稜を踏破しました。
この八つ峰は人気、知名度では他の岩稜に劣るかもしれませんが緊張感、困難さ、スケ-ルの大きさは他の岩稜の数倍も勝るようなすばらしい岩稜でした。

先月30日から8月3日まで永年の夢である八ッ峰を仲間3人で縦走してきました。
昨年は天候不良のため途中で撤退、今年に賭けて訓練を続けてきました。
アルペンガイドのビデヲを見てこれなら1日で踏破出来ると確信を強めていましたが実際は大変でした。プロの一流ガイドだから簡単そうに見えたのですが悪天候もあり途中でビバークし2日掛けてしてようやく成し遂げました。碧空にするどく天に伸びる岩峰、触れれば落ちる浮石、何回も繰り返される懸垂下降、落ちれば何百メートル下の雪渓まで、命はありません。長時間にわたる緊張の連続です。
頂点の八つ峰の頭に到達したときは皆,大感激でした。今迄で一番苦しい登山の一つでした。
いろいろな場面を予測し、その対策、技術を取得してきました。未知の岩壁のとはん,急な雪渓での下降の仕方、確保技術の研鑽等。予想外の試練もありましたが一つ一つ克服して頂きに立つ喜び、まさに登山の真骨頂です。涙は今までの厳しい訓練が実った証でしょう。
我々が誇るべきは1峰からすべて登ったことです。たいていは時間短縮のため1峰は省略されるとの事。
真砂沢のご主人も何回も登っているが1峰には1回しか登っていないといわれました。
困難が大きいほど得るものも大きいと実感した山行でした。
コメント (2)
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