ウクライナとの戦争を続けるロシアのプーチン大統領への批判が国内外で強まっている中、「プーチンのロシア」がソ連崩壊後つくられた過程を克明に描いたノンフィクション『ロシア 奪われた未来』(白水社発行、訳・三浦元博・飯島一孝)が好評発売中だ。著者のマーシャ・ゲッセンはロシア人男性だが、名前が女性に多いマーシャなので、専門家でも女性と間違える人が少なくない。
著者は1967年、モスクワで生まれた。ソ連末期のブレジネフ政権当時、家族とともに米国へ移住した。その後、ソ連崩壊直前の1991年にロシアへ帰国、作家、ジャーナリストとして活動していた。だが、LGBT運動の活動家でもある著者は、反同性愛キャンペーンが激しくなった2013年、家族と自らの身の危険を感じて再び米国へ戻っている。
マーシャ・ゲッセンは、これまでにプーチンを題材にした作品など、多くの著作を残している。この新刊本は2023年、権威ある全米図書賞のハンナ・アレント賞を受賞している。
著者が男性か女性かの問題では、ロシア政治研究の大家として知られる木村汎(ひろし)北海道大学名誉教授が9年前、産経新聞に掲載された文章のなかで、マーシャ・ゲッセンを女性と明記。プーチン政権下の「報道の自由」抑圧に幻滅して米国移住を決意したと書いている。そのほかにも、米国などでは女装の写真を「マーシャ」とルビを振って掲載するなど、マーシャを女性として扱っている記事が散見される。
また、マーシャ・ゲッセンはメディアのインタビューに対し、「私はノンバイナリーです」と答えている。ノンバイナリーとは、自分自身が認識している性が男性・女性という性別のどちらにもはっきりと当てはまらない、または当てはめたくないという考え方を指している。こうした考え方は我が国では市民権を得ているとは言えないが、今後広まっていく可能性は否定できない。(この項終わり)
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