飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

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ロシア大統領選;プーチン首相、一発当選を決めたが、得票率7割に届かず、厳しいかじ取りに!

2012年03月05日 14時15分00秒 | Weblog
プーチン首相は4日深夜、モスクワの中心部、マネジ広場で支持者を前に勝利宣言したが、その目には涙がいっぱいたまっていた―。彼が泣き顔を公の場で見せたのは恐らく初めてではないか。今回の選挙は、彼が初めて味わった逆風の中での選挙で、目論見通り一発当選を決めたことが余程嬉しかったのだろう。

昨年暮れ、下院選挙で与党は得票率が50%以下に落ち込み、さらに不正選挙疑惑のダブルパンチを食い、プーチン氏は相当苦しんだに違いない。とくに不正選挙疑惑は下院選挙の正統性を揺るがすものだった。そこで大統領選では一発当選にとどまらず、70%以上の得票率を目標に掲げ、なりふり構わない選挙戦を展開してきた。

 その結果、勝ったことは勝ったものの、プーチン氏の得票率は63.7%にとどまり、再選された2004年の時の得票率71.3%どころか、前回(08年)のメドベージェフ氏当選の時の70.3%にも及ばなかった。現職大統領・メドベージェフ氏の強い再選願望を振り切ってまで立候補したプーチン氏にとっては「苦い勝利」で、「国父」とまで崇められたかつての威信は地に堕ちたといってもいい。

 今回は得票率とともに、不正選挙防止ができるかどうかが、もうひとつの焦点だった。プーチン首相は約400億円かけて約10万ヵ所の投票所にカメラを2台ずつ設置し、インターネットでどこからでも監視できるようにした。だが、一度にたくさんの投票用紙を投票箱に入れる「投げ込み」や、同一有権者が複数の投票所を回って投票する「メリーゴ-ラウンド」などの不正投票が多数見つかり、投票をすべて無効にせざるを得ない村まであったという。全国で不正投票がどの程度の件数になるかは不明だが、相当数に上ったことは間違いないようだ。
 
 その一方、プーチン氏は年金生活者や公務員の待遇改善、国防予算の増額などを次々に約束、その額は約77兆円にのぼり、ロシアの国内総生産(GDP)の半分に当たるとの試算もある。新政権がとても実現できない大盤振る舞いで、今後野党などから「約束違反だ」として抗議行動が高まる恐れがある。

 また、大統領選や下院選挙で明らかに「野党つぶし」といえる政党・候補者登録の厳しさや、民主主義に反する地方首長の任命制がヤリ玉に上がり、議会で制度改革の動きが出ているが、プーチン新大統領がこうした改革をどの程度受け入れるかは不透明だ。もし、改革の動きにブレーキをかけるようなら、民主化要求を強める野党との対立が一層激しくなるのは目に見えている。

 以上のように新政権にとって野党との抗争の火種がいくつもあるのが実情だ。こうした内政問題に加え、ミサイル防衛(MD)システムの東欧配備など、欧米との間で未解決の問題も少なくない。プーチン新大統領がこれまでのように外交問題に強硬姿勢で臨めば、再び西側との摩擦が強まるのは必至だ。

 選挙結果から、プーチン新大統領が憲法に定められた連続2期12年(1期の任期が4年から6年に延長)を務めるのは極めて困難だといえる。それを本人が十分自覚して、民意を実現するよう努力すれば6年間の任期は務まるだろう。だが、それ以上の長期政権を望んだら、市民意識が高まっている中流層の怒りを買い、任期を全うできない可能性が高くなる。その意味では「プーチン時代の終わり」がこれから始まると言っても言い過ぎではないだろう。(この項終わり)
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