ロシアの侵攻から始まった対ウクライナ戦争は9ヶ月目に入ったが、戦闘はいっこうに収まらず、このまま年越しを迎える可能性が高まっている。このため、両国とも越冬対策を急いでおり、国民は厳冬の中、今後も耐乏生活を続けることになりそうだ。
このところ、ロシア軍の戦死者や逃亡者が増加しているとの海外からの報道が急増している。特にロシア側が危機感を示しているのは、戦死者の多くが同士打ちによるとの見方が強まっていることだ。米政策研究機関「戦争研究所」によると、ロシア軍部隊の相互の連携不足と、司令官の相次ぐ交代による指揮命令系統の混乱が同士打ちの頻発に繋がっているという。
戦争が起きると、戦場での同士打ちは珍しくないが、対ウクライナ戦でのロシア側の同士打ちは全体の6割に上るとの見方も出ている。この数字が事実だとすれば、異常な高さといえる。
一方、ウクライナでは、ロシアが自国領土に併合した4州のひとつ、南部ヘルソン州でウクライナ軍がロシア兵士を追い出そうと必死の反撃を続けている。だが、ロシア兵は民間人を装って民間施設に入り、市街戦に備えているとみられ、奪還作戦は難航している。
最近、ロシア軍を中心に、ウソの情報を流して戦場を混乱させる「マスキローフカ=ロシア語で偽装の意」が広がっていて、双方で疑心暗鬼に陥るケースが増えているという。いわば”だまし討ち”作戦で、お互いが味方を信じられない状況が生まれてきている。
いずれにしろ、ロシア、ウクライナ双方とも近々に和平交渉に入れる状況にはなく、越冬対策を行いながら戦闘を続ける作戦に切り替えつつある。長期戦が続くと、民間人の犠牲者もますます増える可能性が高い。双方の国民にとって、この冬は寒さも加わって、厳しい耐乏生活が続くことは間違いなさそうだ。(この項終わり)