ロシアが昨年2月にウクライナへ侵攻してから、両国間の戦闘が続いている。その一方で、今秋からイスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃が始まり、ウクライナに厳しい情勢になりつつある。特にイスラエル側に立つ米欧と、それを非難する中東諸国などに国際世論が二分されてきたのが大きな要因だ。
中東情勢に変化が起きたのは、ガザを支配するイスラム組織ハマスが10月7日、イスラエルを越境攻撃したのがきっかけだった。これに対し、イスラエル軍はガザへの空爆や地上侵攻を開始したため、中東諸国はイスラエルへの批判を強めた。特に欧米諸国が民間人を巻き込んでガザを攻撃するイスラエルを擁護したため、中東諸国は「二重基準だ」と強く反発した。
当初、イスラエルを擁護していたウクライナのゼレンスキー大統領もその後、「紛争地域の全ての側が民間人や子供に配慮しなければならない」と軌道修正した。だが、ウクライナを支える米国でもバイデン政権と野党・共和党の意見が分かれ、下院では共和党が提案したイスラエルに限定した予算案しか通らなかった。
一方、ウクライナ側の反攻作戦も大きな成果が上がらず、苦戦が続いている。その要因は、空軍力がロシアに比べ劣っているためとされる。当のロシア軍は、東部ドネツク州での占領地域拡大を目指していているといわれる。近く同地域で大規模な攻撃が準備されているとの情報も流れ、冬を間近に控え、予断を許さない状況が続いている。(この項終わり)