最近は引きこもりまくりだったので今日は一念発起して朝から晩まで外出してきました。昼は暑くて夜が寒いと上着をどうすればいいのかわからないので暑いのか寒いのか即刻はっきりしてほしい。
というわけでゲームレジェンドの原稿締め切りが迫ってきてるというのに余裕ぶっこいで映画ですよ。まあ気分転換は必要なので。
というわけで今日見てきたのはこれ!
「死んではクローニングされて生き返る使い捨て労働者」という設定だけでそういうのが好きな人は注目するであろう作品。
惑星ニフルヘイムにて過酷な任務に従事しているミッキー。地球で借金取りに追い詰められた挙げ句ミッキーが選んだのは、死ぬたびに肉体を複製、記憶を移植されて蘇生させられる「使い捨て労働者=エクスペンダブル」として契約することだった。
危険な調査や薬物の実験台など散々な扱いをされ、17回目の複製を遂げるミッキー。しかしミッキー17は現住生物に救われて生き延びていました。這々の体で自室に戻るミッキー。しかしそこには、ミッキー17がすでに死んだと判断されたために複製された18人目のミッキーがいました。
同一人物の複製体が同時に存在する「マルティプル」の存在はご法度。正体を隠そうとするミッキー17ですが、ミッキー18はニフルヘイムへの入植船団の支配者であるマーシャルへの復讐を企てます。
率直な感想としては「もっと倫理観をフルスイングでぶん投げてくれよ!」といった感じ。
せっかく「死ぬたびにクローン再生されて人権無視の任務に従事させられる」って設定があるんだから、ミッキーを増やしまくってミッキー軍団を作るとか全員で殺し合うとか命が紙より安いムービーにできたと思うんですが、インパクトのある設定からスタートしてるのになんか最終的に無難なところに着地したのでかなり拍子抜けというか肩透かしというか。
見終わったあとで考えると、そもそもこの「同一人物のクローンがふたり同時に存在している」って設定はあんまり作品の重要ギミックとして機能してないんですよね。本作のストーリーラインは「底辺労働者が支配者に反逆する」なんですが、このストーリーラインにおいて「同一人物がふたりいる」って設定が活きてる部分がありません。お約束で入れ替わり展開も来ると思ってたんですがそれもなしで、本当に「ミッキーが二人いる」以上の事態にならないという。これは非常にもったいない。
さらには「死んではクローン再生される」って部分も冒頭のミッキーの回想シーンで消化されてしまってるので、それ以降の展開にはそれ以上のインパクトがありません。
また本作、各所に散りばめられてる要素どうしがうまく連携してない感もありました。前述のミッキーが二人いるって要素だけでなく、ニフルヘイムの先住生物であるクリーパー、ミッキーのボタンに関するトラウマ、ミッキーの死と蘇生を見続けてきたヒロイン、そしてラストの選択など、ひとつひとつの要素は魅力的だしいろいろ展開できそうなのに、これらの要素は出してるだけで相互に連携してないので作品の魅力につながってない。
なので結局本作は、冒頭のミッキーの死んでは蘇生してきた過去の回想がピークであとは「被支配者が支配者に反逆する」以上の展開がないっていうわりと残念な結論となります。
でもまあいいところもあるにはありました。
前述の通りミッキーは肉体だけでなく記憶もバックアップされており再生されるときには記憶も継続しているんですが、ミッキー17とミッキー18のふたりが出てきたせいで、ミッキー17が死んでも18がいるので17は再生されません。この「もう一人の自分が出てきたことで『自分』の連続性が断絶する」というのはSF的に面白みを感じました。
ミッキーは同一人物であっても17は悲観的で気弱、18は短気で攻撃的という性格の違いがあります。これはミッキーという一人の人間の外面と内面なんでしょうね。外面では自分が使い捨てられることを受け入れているように見えて実は支配されることに強い憤りを感じているという。この外面と内面の違いを「性格の違うクローン」という形で表現したのは面白かったと思います。
また、ミッキーは幼い頃に車のボタンを誤操作したことで交通事故を起こし母を失っています。このことがミッキーにとっての大きなトラウマになってるんですが、17がトラウマを想起して苦しんでるのを同じ記憶と同じトラウマを持っているはずの18が「あれはお前のせいじゃない」と声をかけてあげるシーンは印象的。いやだからそこもっと掘り下げろって……。
あとはマーシャル司令官の妻役のトニ・コレットの顔芸が炸裂するラストシーンはもはや映画のジャンルが変わっててすごく良かった。でも他の要素と噛み合ってないんだよなここも……。
本作、なんかこう全体的にもったいないんだよな。食材はいいものが揃ってるのに調理が不十分だったパターンかな。