雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

カデナ

2011-10-10 20:14:32 | 
池澤 夏樹
新潮社
発売日:2009-10-31


池澤夏樹著"カデナ"を読みました。
1968年、ベトナム戦争がまもなく終了するという
時期の沖縄のカデナ基地周辺での話です。
4人の人がスパイ活動に関わります。

フリーダ・ジェインは空軍の曹長の秘書官として働いて
います。
父はアメリカ人の軍人で、母はフィリピン人です。
恋人のパトリックは爆撃機の操縦士です。

嘉手苅朝栄(かでかるちょうえい)は第二次世界大戦時
サイパンで暮らしていました。
戦争の悲惨さを身を持って知っています。
戦後沖縄に帰ってきて結婚し働き者の奥さんは食堂を
経営しており、自分は米兵相手の模型屋をやっています。

安南(あんなん)は朝栄のサイパン時代の知り合いです。
ベトナム人です。

タカはロックバンドをやっています。

フリーダは母親に諜報活動をするように働きかけられます。
安南は自分の国の戦争です。
朝栄は安南に手伝いを頼まれます。
タカは朝栄から頼まれます。

フリーダは爆撃の作戦会議の内容を記録して資料に
まとめる仕事をしています。
情報を知ることが出来る立場にいます。
自分が書いたメモを基地外へ持ち出します。
タカはフリーダが友人とシェアーしている家のガーデン・
ボーイとして働きフリーダからメモを受け取ります。
メモは朝栄に渡り暗号化され無線でベトナムへ送られます。

こうやって何回となく情報はベトナムへ送られます。

タカはもう一つの活動にもかかわっています。
姉の大学の先生が中心になって行っている脱走してきた
米兵を受け入れてくれる国へ逃がす活動です。
数日間脱走兵と共に暮らします。

1年ぐらいの間の出来事です。
アメリカがベトナムから撤退して活動は終了しました。

フリーダの恋人パトリックは爆撃を恐がっていました。
沖縄を離陸する時に失敗して機体が爆発して死にました。

スパイ活動といえば死を覚悟した厳しい仕事を想像しますが
みんなわりと安易にかかわりを持っています。
安南は自分の国の人々の生死や、国が破壊される被害を
食い止めようとする使命感があり、命をかけていること
は間違いありません。
フリーダにしてみても軍人でありながら国を裏切る行為は
発覚すればどんな重い罪になるか想像できます。

朝栄とタカは自国の戦争ではないとはいえ捕まれば
どれほどの罰を受けるかわかりません。

自分の心の中の声を聞いて動いた行動だと感じます。
水に落ちた人は助けたい、体が自然に動く、そんな
行為だと思います。

それぞれの人の心理が深く書かれてはいません。
それぞれに覚悟した上での行動なのでしょう。
死ぬまで人に話すべきではない秘密なのに軽々しく
知人にしゃべっていて、だいじょうぶかと心配に
なる場面があります。
フリーダの行動は裏切り者と、追ってくる暗殺者が
現れてもおかしくないです。
命や人生に関わる重大な行為をしているのにちょっと
軽々しくて話がちぐはぐな感じを受けます。

スパイ活動にしても脱走兵を逃がす活動でもなんとか
したいと思う普通の人が少しずつ自分のできることを
したのだと思います。
現実にも危険なのに追われる人を助ける行為をした
人たちは多くいることでしょう。10/03