雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

緋友禅 旗師・冬狐堂

2011-10-20 20:44:59 | 

北森鴻著"緋友禅 旗師・冬狐堂"を読みました。
現代の話です。旗師とはお店を構えずに骨董品や美術品を
仕入れて、別のお客さんやお店に売る仕事です。
旗師の陶子が主人公です。
年は書かれてなかったと思いますが30代ぐらいです。
連作短編集です。

"陶鬼"
ツルさんが自殺しました。
無愛想ですが骨董品の見る目は確かで仕事に関しては
信用がおける人です。
陶子とは時々仕事先で出会い旗師としての仕事について
学ぶことがありました。
自殺する前に有名な陶工の最後の作品を壊しています。
自殺の原因は。

"「永遠(とわ)笑み」の少女"
掘り師の老人が訪ねてきます。
永遠(とわ)笑みのはにわを預けていきます。
掘り師とは古墳などの遺跡から遺物を発掘する人です。
非合法な仕事です。
老人の23歳の孫娘が行方不明になっています。
行方を捜していた老人も殺されます。
刑事が登場してきます。この後もたびたび登場します。

"緋友禅"
ふと立ち寄った画廊でみた作品に心を奪われます。
緋色の幾何学模様のタペストリーです。
作者は無名の人です。
30数点の作品を陶子はすべて買います。
代金を払い作品展が終了したら発送してもらう約束です。
1点だけ展示されてない作品を貰って帰ります。
展覧会が終わっても作品は送られてきません。
部屋に確かめにいくと作者は亡くなっていて、
作品は消えていました。
しばらくして彼の作品に手を加えたものが華々しく
世に出てきました。

"奇縁円空"
この作品は本の半分を占めており中篇です。
円空の作品は数が多く偽物が多く出回っています。
骨董品を扱う人でさえ円空の作品はためらうといいます。
本物としか見えない作品が陶子の手に回ってきました。
よく見ると炎の文字が浮かんできます。
こういうものはレプリカとしての価値があるそうです。
贋作の円空で儲けようとする人、円空の域にまで自分の
作品を高めようとする人、古材を提供する人などが
暗躍します。
殺人が起きます。
根岸、四阿の刑事と情報交換して事実に迫っていきます。

旗師という仕事を知りました。
骨董や美術品の知識だけではやっていけない仕事です。
駆け引きが必要です。
私にはたとえ知識を持っていたとしてもびくびくして
しまいとてもやってはいけない仕事だなぁと思います。
仕事にわくわく感が持てて、度胸がないとだめですね。
骨董や美術品は展覧会や博物館で見たら満足します。
手元に置きたいとは思いません。

この本 「 」 でくくられるべき語りの部分が数ページ
挿入されていることがあります。
なれないからかちょっと気になります。
円空の話はおもしろいのですが小説ですから説明文の
どこまでが真実なのかわかりません。
くどいです。もっと半分ぐらいの長さに縮めてすっきり
読ませて欲しいです。
円空仏は現実に人を魅了する仏像のようです。10/8