雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

落下する緑 永見緋太郎の事件簿

2011-10-03 20:25:49 | 

田中啓文著"落下する緑 永見緋太郎の事件簿"をよみました。
先日読んだ"辛い飴 永見緋太郎の事件簿"のシリーズ物です。
このシリーズ、最近のお気に入りです。
ジャズのテナーサックス奏者の氷見緋太郎が探偵役です。
語り手は永見が所属している唐島英治クインテットの
リーダー唐島です。

こちらの本の方が1冊目です。順番をひっくり返して
読んでも特に問題はないのですがこれから読むのなら
やっぱり順番に読んだ方がいいです。連作短編集です。
JAZZの楽しさが伝わってくる本です。

永見は普段はテナーサックスの練習と部屋でCDを聴いて
いるという生活をしている人です。
一般常識に疎く誰でも知っていることをそれ何と、聞いて
まわりの人をあきれさせています。
世間しらずの永見を心配して唐島はあちこちに連れ出して
います。

"落下する緑"
永見は70歳を越える宮脇重吉の抽象画の展覧会へ唐島に
連れていかれます。
最近は年1作です。絵にサインは入れません。
書き上げたばかりの絵がいつの間にか上下逆さまに展示
されていました。誰がひっくりかえした?

"揺れる黄色"
牧沢泰洋はキング・オブ・クラリネットといわれるクラリネット
奏者です。アニー・エドマンの弟子でエドマンが亡くなる
時に代々のキング・オブ・クラリネットに引き継がれてきた
クラリネットを譲られます。
それから15年たって本物のクラリネットを譲られたのは
自分だという野々山が現れます。
実際に野々山が持っているのが本物のクラリネットでした。
はたして事実は。

"反転する黒"
クインテットのピアニストの千鶴が高校時代にいっしょに
バンドをやっていた桜島祐介をさがしています。
友人に貸したカメラに偶然桜島が写っていました。
その場所探しと、桜島が登場し、行方不明になったいきさつ
が話されます。
唇近くにできた疣を取ってしまったら今までのように
ふけなくなったといいます。演奏のじゃまになるからと
取ったはずなのにまったく逆になってしまいました。

"遊泳する青"
作家の湖波性太郎の死で未完となった"遊泳する青"の
残りの部分が見つかりました。
読めない筆跡で原稿を書いていた湖波ですが見つかった
原稿はワープロで書かれたものです。
話の辻褄は合っていいますが、編集者はこの原稿が本物か
どうか決めかねています。

"挑発する赤"
ジャズ評論家石倉泰宏は言いたい放題に批判をしています。
それが的を得たものならともかく演奏会場ではずっと
寝ている、聞きもしないうちに原稿を書いて渡すなど
まったく仕事を大事にしていません。
それでもずっと第一人者として評論家を続けています。
石倉のせいでいい作品が売れなかったり自殺者が出たり
しています。
この話はちょっと疑問が残ります。こんないい加減な人が
仕事を続けていけるものなのか、評論を読む人は自分の
耳で聞かないで人の意見のみでいい、よくないを決める
ものなのかということです。
石倉はとうとうひどい状況に追い込まれていきます。
二度と表に出て来るなといいたい人です。

"虚言するピンク"
唐島がアメリカで少しの間生活していた時に助けてくれた
フルートをやっているデイブ・スプリングが尺八の演奏を
聞いて尺八の師匠の弟子になって日本にきました。
デイブはやけっぱちになって荒れています。
「その楽器を深く知ることは、自分自身の根源を知ることに
つながります。そうなれば尺八でもフルートでもトランペット
でも一緒なのです。」 師匠の言葉です。
師匠は尺八でジャズ演奏をする人です。
尺八で吹くJAZZを聞いたことがあります。
ノリタケの森で時々演奏されるWAZZというグループで
尺八が使われています。。
師匠の言葉にもあるように、WAZZの演奏を聞いていて
思うことは尺八でもいいけど別の楽器でもいいじゃないかと
いうことです。
反対のことも言えるわけです。
他の楽器でなくても尺八でもいいじゃないかと。

"砕けちる褐色"
ナンバーワン ベーシストの片桐はわがまま者で人に
避けられています。
三千万円の楽器を使っています。
年々音が変わっていくといわれています。
たくさんのグループが集まるフェスティバルに片桐も
参加しています。
このベースが持ち出されていました。その後に誰も
入っていない部屋の中で壊れました。
事件の真相を永見が説明します。
まったく予想外の犯人でそんなばかなと思ってしまいます。
犯人は・・・ 。
(人間ではありません)

JAZZをベースにした事件はおもしろいです。
永見や唐島も好感が持てます。9/21