雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

一朝の夢

2011-10-25 19:01:56 | 
梶 よう子
文藝春秋
発売日:2008-06-24


梶よう子著"一朝の夢"を読みました。
時は幕末です。
将軍継嗣問題と外国との通商条約の締結問題に揺れていた
動乱の時期です。
井伊直弼が強権を振るっていました。
大勢の人が捕らえられ殺されました。
主人公は中根興三郎です。三男です。
学者になろうと星陵塾に通っていました。
長男が病死し、次男は他家に養子に出ておりなるはず
ではなかった同心になりました。
同心といっても人事の台帳を整える事務です。
あまりしゃべることが得意でなく朝顔栽培が唯一の趣味です。
政治にも興味がなかった興三郎が朝顔を介して知り合った
人々により騒動に巻き込まれていきます。

昔近所に住んでいた里恵が借金で困っていたのをみて
朝顔を一鉢ゆずってやります。
江戸時代は朝顔の栽培が盛んだったようです。
朝顔を交配して変った花を咲かせてその花が高額で
取引きされていました。
興三郎がゆずった花は撫子咲で高価で買い取られて
里恵を救いました。

この花が宗観という茶人と知り合いになるきっかけと
なります。
宗観はたびたび興三郎の家を訪れ朝顔の話をしていきます。
実は宗観が井伊直弼です。
仕事仲間の村上の息子の登也は星陵塾生です。
塾では更新会という集まりが開かれ登也はそこに
入っています。
登也は暗殺を繰り返し父親の村上が息子とその仲間を
殺し逃げたと見られています。
水戸藩と彦根藩との争いやいろんな人たちの思惑が入り
乱れています。
興三郎の星陵塾で知り合った友人の三好貫一郎も
よく家を訪れます。
里恵が殺されたりと多くの人が殺される時代の
流れの中にあります。
井伊直弼は暗殺者が待っていることを知らされていた
のにかかわらず登城し桜田門外の変で暗殺されて
しまいます。

この本では井伊直弼が好意的に書かれています。
井伊直弼は大勢の人を捕まえ殺したという悪い
面ばかり強調されます。
別の面からみれば違ってみえます。
この本は江戸の終盤の動乱を描いて興味深いです。

興三郎はその後どこかへ消えてしまいます。
朝顔の栽培を楽しみに仕事にはげんでいた普通の
人まで動乱の世は巻き込んで変化していきました。
朝顔の黄色を出すことは難しく朝顔栽培を続けた人が
一生に一度ごほうびに出会えれるものだということです。
一朝の夢とはそのことをさしています。10/14