かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

「ドリームジェノミクス」もあと5回です。

2008-02-24 21:57:35 | Weblog
 連載小説「ドリームジェノミクス」、今日ラストまでの直しを終えました。後は投稿前にもう一度軽くチェックして、アップしていくだけです。それと休みの日は、気づき次第直ちにアップするようにしました。何もブログの更新を毎日夜にしているからといって、すでに準備済みのものまで夜まで待たなくてもよかろう、と思ったのです。
 もしご覧になっていただいている方で、今日のブログを見て「おや? ないな?」と思われた方は、カテゴリの「ドリームジェノミクス」を選んでいただくか、少しスクロールしてこの記事の下のひとつ前の記事に移動してください。そこにちゃんとアップしてありますので。
 さて、お話のほうは、ようやく麗夢ちゃんの能力喪失の謎が解き明かされました。まあかなりご都合主義的に中身をはしょった感のある文章になっておりますが、大筋としては間違っていないはずですので、より詳しい内容を知りたい方は、ぐぐるなどしてネットを検索していただければ、初心者向けの解説をはじめ、色々な文献が出てまいりますので、それを参照いただければ、と思います。
 次回はようやく副題の「奇跡」に当たる部分が登場します。ここを描くためにこの物語を書き始めた、といっても過言でないクライマックスのシーンは、3日後の水曜日に、忘れないようにアップしたいと思います。

 
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15.奇跡 その3

2008-02-24 10:04:38 | 麗夢小説『ドリームジェノミクス』
「ひ、ひどい・・・」
 くらくらする頭を押さえながら、麗夢は思わず呟いた。夢を奪うどころか、ほとんどの人間を逃れようもない悪夢に苛みながら、ウィルスによる病で死滅させる。そんな、まさに悪魔の所行としか思えない未来が、もうほんのそこまでやって来ているというのである。
『私は、自分が間違っているとは認めない。人類から夢を消すのが、夢魔を滅ぼすもっとも良い手段だと今も考えているからだ。だが、このままでは私は、それを証明するどころか、全く逆に、夢魔達に未曾有の繁栄をもたらす手助けをすることになる。だから君達にお願いする。あの子たちを助けて、死夢羅の企みを阻止してくれ』
「しかし、麗夢さんがこの状態では・・・」
 鬼童の一言が、麗夢の沸騰した怒りに水を差した。確かにそうだ。今、自分があの場に駆け付けたところで、結局足手まといにしかならない。力を失った自分には、あの夢魔達に立ち向かう手段が無い・・・。意気消沈した麗夢に、高原は言った。
『大丈夫だ。そろそろ効力が切れる。君に仕掛けたのは、遺伝子組み替えではない』
 高原の言葉にもっとも早く反応したのは鬼童海丸だった。鬼童はずっと考えていたのだ。効果が比較的ゆっくりで、持続的に麗夢のDGgeneを抑えられる手段。それが遺伝子組み替えでないのだとしたら、方法は一つだけだ。
「そうか! RNAi(アール・エヌ・エー・アイ)!」
『そうだ。私が綾小路君に施したのは、ドリームガーディアン遺伝子をベースにした、RNAiだ』
 鬼童は手短にRNAiを説明した。
 遺伝子の発現は、メッセンジャーRNAがDNAの遺伝子コードを読み取り、その情報をリボゾームに運んで、そこで機能を発揮するタンパク質を合成することで現れる。これに対し、21~23塩基対程度の小さな二本鎖RNAが、このメッセンジャーRNAを切断し、機能を失わせる現象が発見された。この現象をRNA interference(RNA干渉)と呼んだのが、遺伝子研究の爆発的な進化を生み出した、RNAiの始まりである。発見は1997年アメリカ・カーネギー研究所。当初の対象は線虫やショウジョウバエだったが、2001年には、ドイツ・マックスプランク研究所において人間の細胞でも確認され、今や遺伝子研究のツールとして必須のアイテムとなった。二本鎖RNAを、標的のメッセンジャーRNAに合わせて設計すれば、事実上あらゆる遺伝子を自在に機能喪失させることができる。このように遺伝子の機能を失わせることを、俗に遺伝子を「黙らせる」と呼び、そうして遺伝子を「黙らせた」時に生体に何が起こるのかを観察して、その遺伝子が生体内でどういう役目を担っているかを特定するのである。このような技術は過去にもいくつか存在したが、それらに比べてRNAiは、極めて簡便に、遙かに強力に、そして持続的に遺伝子を「黙らせる」事が出来る。高原は、その手法を使って麗夢のDGgeneを文字通り「黙らせ」、ドリームガーディアンとしての力を奪ったのである。
「じゃあ、私直るの?」
 鬼童の説明に麗夢の憂いがにわかに晴れた。期待の目で見つめられ、鬼童も笑顔で頷き返した。
「ええ、RNAi現象は、大体数日から長くても数週間で影響が無くなります。高原先生がもう効果が切れるというなら、確かにその可能性は大です!」
「では参ろう! いくらアルファとベータでも、あの状況では危ない」
 鬼童の一言に、円光、麗夢も同時に頷いた。
 すると榊が、携帯電話を取り出しながら3人に言った。
「鳩のことは私に任せてくれないか。ちょっと考えがあるんだ。構わず先に行ってくれ」
「榊警部に? 一体どうやって・・・」
「説明は後で、とにかく急いで!」
 麗夢は頷くと、半透明に消えかかった高原に言った。
「近道があるんでしょう? 教えて!」
 麗夢の言葉に、高原は厳かに頷いた。
『きたまえ、案内しよう』
 3人は、高原に連れられ、携帯電話に怒鳴る榊を横目に、研究室を出ていった。
「・・・ああ、私だ。榊だ。今すぐ茨城県警に連絡して、怪盗241号対策チームを大至急先端科学技術工業団地に寄こしてくれ! え? じゃない! 叩き起こしてでも出動させるんだ! 責任は私がとる! ええ? 違う! ドリームジェノミクス社じゃない。その隣のナノモレキュラーサイエンティフィックだ。ナ・ノ・モ・レ・キュ・ラー・サイエン・ティフィッ・ク! そうだ、『新兵器』も忘れずにな! 頼んだぞ!・・・」
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