かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

「マリみて」既刊通読1周目の感想

2005-03-13 21:52:51 | マリア様がみてる
 2月23日に第1冊目のページをめくってから2週間と少し。遂に、「マリア様がみてる」既刊20冊を通読しました。途中、しばらく続きの購入が途絶えた期間などを考慮すると、文庫本約5000ページ、ざっと300万字超を実質1週間余りで読み切った計算になります。かっこうとしても、これだけ活字に浸りきりになるのは、さすがに久々の事でした。私にこの作品を紹介してくれた友人が、「面白い」と憑かれたように力説していたのが、今更ながらに頷ける半月でした。 通読完了した私の第一声が、「早く続きが読みたい!」ですから。
 コバルト文庫のオフィシャルサイトで調べてみますと、4月1日に新刊が出るらしいです。また、ざっと巻末の奥付をみてみますと、大体3ヶ月ごとに一冊出ているようですので、順調なら年内に4冊づつ新しい本を手にできる計算になります。いつまで続くのか判りませんが、かなり長期間に渡って、楽しめそうです。
 当面、友人からは「3回通読」を義務づけられておりますので(笑)、感想文100枚はその後にしようかと思いますが(書く気か?)、取りあえず一応の終着点に到達したので、ここまでの感想を一言まとめておこうと思います。

 舞台は明治時代創立のカトリック系お嬢様学校。そこで平凡な生活を送っていた容姿も成績も中庸な一年生「福沢祐巳」が、ふとしたことから個性豊かな面々が集う生徒会の一員になり、波乱の学校生活に巻き込まれていく、というお話。涙有り、笑い有りのドラマが展開されるなか、事件や友人達との交流を通じて成長していく主人公という、学園ものの王道が描かれています。それだけ書くと類似の話はたくさんあるでしょうが、独特なのがこの学校にいつ頃からか根付いた独特の先輩後輩関係。ロザリオの授受という儀式のもと結ばれる「姉妹(スール)」という一対一の強固な上下関係が、単なる学園ものにはない彩りを作品全体に与えております。話の構成は第1巻の秋の文化祭から順に季節を追ってイベントが並べられているのですが、20冊でまだ作品中では一年しかたっておりません。経過する時間だけみてると希有のゆっくりさですが、主人公や、主人公を取り巻く人間群像劇が丹念に描きこまれ、けして間延びもせず、読む者をじっくり「聖リリアン学園」に誘ってくれます。

 全体に読みやすく、テンポのよい文体が、きっちり性格分けされた魅力的な登場人物達を生き生きと動かし、それだけでも読んでいて快く、主人公達に感情移入できるのはさすがだと思います。
 ただ、ここまで読んで気になったのは、やはりもう少し中身の掘り下げや書き込みがあってもよかったんじゃないかな、と思う話が幾つかちらほらあったのと、話によっては舌足らずというか、読んでいて誰の何時の何処の話なのかが見えにくい所があった点。作品効果として意識的に舌足らずにしているのかと思いましたが、私は読みながら、「枕草子」を連想いたしました。私は古典文学は好きですが、どうしてもあれだけは読むことができないのです。私にはあれはあまりに主語や述語が省略され過ぎているようで、いくら頑張って読んでも、すぐに何が書いてあるのか判らなくなってしまうのです。理屈っぽい私には一番苦手な類の本なのですが、この「マリみて」にも、多分にそう言うところが目に付く事があります。これは平安時代から連綿と受け継がれた女性文学の伝統なのでしょうか? 2周目は、より具体的にそう言う点へ注意しつつ読んでいきたいと思っております。うまくいけば同人ネタが拾えて、この夏は「麗夢」に加えて「マリみて」も、などというような展開もできるかも知れません。

 もう一つ気になるのは、前半10冊と後半10冊で、中身の濃さが異なる点。前半の方が祐巳とそのお姉さま小笠原祥子を軸に、魅力的な人物が丹念に描き込まれていて、読み応えがあるように感じます。特に前半は祐巳と祥子を大きな挫折が何度も襲い、そのたびにどう巻き返すのかある意味手に汗握る展開があるのですが、祐巳2年の夏以降は、どのお話もどうも全体にインターバル的な足踏み感が感じられてしまいます。このあたりは4月の新刊以降に新展開があるものと期待しております。

 そんな後半ではありますが、中でも読んでいてうれしかったのは、小道具に「とりかへばや物語」が出てきた所でしょうか。これは作者不詳、平安末期成立と推定される古典ですが、女の心を持った男の子と男の心を持った女の子を授かった貴族が、女の子を男として、男の子を女としてそれぞれ朝廷に出仕させたことからおこるドタバタ劇を、魅力たっぷりに描いた佳作です。今昔物語と言い、「とりかへばや物語」といい、昔の人の発想の豊かさには本当に驚かされます。今でも講談社学術文庫などで全訳本が入手可能ですので、「マリみて」ファンには是非一度読んで欲しい一冊です(講談社学術文庫では4冊ですが)。かっこうは平家物語、今昔物語と並んで、この本を気に入っています。
 
 さて、読み返してどんな新しい発見ができるのか、今から心躍らせながら、2週目、入ります。
コメント (1)
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