この作品について多くを語ることはワタクシにはできない。
自分の娘が生まれたことと、暗殺のターゲットを殺せたことを同じときに同じ人から「おめでとう」と言われるなんて…そんな哀しみがこの世にはある。心が痛くなる作品。
スティーブンスピルバーグがこの作品を通して言いたかったこと。それはもちろん、こんな不毛な報復合戦をいつまでも続けても何も解決しない。暴力では何一つ前に進まない。ということなんだろう。
しかし、後半20分くらいの映像。オリンピック会場から空港へ人質を連れて行ったパレスチナテログループ“黒い九月”と銃撃戦になるドイツ軍。ヤケになって人質イスラエル人たちを射殺し、自分たちも銃撃されて死んでいくパレスチナ人。そうやって殺されたイスラエル人たちを思うことで自分の行為をなんとか正当化しようと努めるアフナーエリックバナをシンクロさせて見せるシーンでは、「この戦いは何があっても永遠に終わることなどないのだよ」「それがまぎれもない“事実”なのだよ」と見せ付けられている気がして涙が止まらなかった。
2000年以上もの間、紛争を続けてきたこの2つの民族間で、2000年以上の時を超えて変わったのは、テクノロジーの進化による武器の変化。それだけ。手段が変わり、簡単に大量の人間を殺せるようになったこと以外、両者の殺し合いの歴史は何も変わっていないし、これからも変わることはないんじゃないか?
どこかに希望を見出すことができればと思ってみても、それを見出すことができなかった。本当に心が痛い。これ以上、言葉はない。ただ、純粋に映画芸術としては素晴らしいできの作品である。
オマケやはり、これにもいくつか知っておかないといけない背景がある。
1、パレスチナとイスラエルの紛争
2、ミュンヘンオリンピックでのテロ事件の顛末
3、モサド、CIA、KGBとは?
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確かに背景を知らないと難しいつくりになっていたと思います。
>永遠に終わる事がないという感じがして心が痛くなる映画でした。それが監督の狙いだったのでしょうか?
きっと、監督はその逆を狙ってたんだろうと思うけど、悲しいかな、そうは受け取れませんでしたよね…
この事件の事も、事件の背景もあまり知らないまま観たので、ちょっと調べて基礎知識くらいは入っていた方が、より理解できる作品なのでしょう。なーんも知らないまま観たので、分からないシーンもあったし、日本語に訳されていないシーンが気になっちゃったり。。。
でも、ほんと、永遠に終わる事がないという感じがして心が痛くなる映画でした。それが監督の狙いだったのでしょうか?
まだ子どもだった私は、選手たちを惨殺したテロリストを「何て酷い奴ら」と感じた覚えがあります。
アヴナーたちとPLOメンバーの宿での邂逅シーンは、和める場面であるとともに、倒さねばならない敵を、同じ「人」として認識せざるを得なくなった、切ないシーンに思えました。民族や宗教の違いなんて、ほんとは大した違いじゃないのにね。
それぞれが自分たちの攻撃を最後に終わりたいと思っているのでしょうね。根本の原因より、そういう意地のほうが大きくなっていくような気がします。
そろそろどこかで終止符を打たないといけないですよね。
でもそれが難しいから出来てないんですけど。
このままじゃ永遠に続くってことを彼らはわかっているのでしょうかね。
そのシーンが唯一なごめるシーンでしたね。
結局、望みや痛みは同じ人間なのに、民族や宗教が違うということが大きな壁になるんですよね。個人レベルでの思いと民族同士での思いにズレが生じるんですよね。
>ただテロに対する考え方が少し変わったような気がします
「テロ」をどう認識するべきかワタクシはまだ少しはっきりとした立場を取れないままでいます。
ロシアの劇場を占拠したグループの一人が「自分たちは戦争状態の自分の国しか知らない」と言っていたのが思い出されました。
>ミチさんへ
当事者が見たら感想はまったく違うものになるだろうけど、スピルバーグの手腕はやはりすごいと再確認しましたね。
>あむろさんへ
>ラストのツインタワーのシーン
めっちゃごめんなさい。見たばかりなのに、そのシーンがどこのことを指してるのか分からなくって…どのシーンですか?
ラストのツインタワーのシーンで、いっそう重苦しい気持ちになりました。
でも、これが現実なのですよね。
スピルバーグにそれを見せつけられました。
スピルバーグの手腕によってサスペンス性にとんだ娯楽映画としての要素も持ちながら、訴えることの多い作品だったと思います。
私もなんら希望を見出すことができないことが苦しいです。
ただテロに対する考え方が少し変わったような気がします
>とりあえず報復なんて愚かなことを
やめることから始めよう
その通りですね。
それが難しい。と言うのは「できない」を前提に話しているようでワタクシは嫌いです。
アヴナーはあそこで初めて「敵」の素顔を知り、その事で自分達がやっている事に疑念を募らせ始めます。
アヴナーたちの場合、遅すぎたんですけどね。
スピルバーグも映画のキモはあそこだと言っていたようです。
世界の現状。厳しいですよね。
生まれたときから戦争で、両親も戦争しか知らない人たちにとってはそれが当たり前の世の中なんですよね。厳しいです。
わたしも同感です。見終わったあとには何も言葉が
出てきませんでした。
でも「終わることのない不毛」を示することで悲観的に
なるのではなく、とりあえず報復なんて愚かなことを
やめることから始めよう、それからその先の何かを
探るべきという訴えがあるのかなと思います。
その答えを探すのが難しいとは思うけれど。
たましょくは何の予備知識もなかった
のですが、現実として受け止めるには、
あまりにも壮絶で…それでも、世界の
現状は「いい面」ばかりではないと、
感じました。
ヘヴィだけどたくさんの人に見てもらいたい作品です。
これからもよろしくお願いしますね
テロの泥沼。希望が見出せないつらさがなんともいえませんでしたね。
TBさせていただきました。