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シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

フローズンリバー

2010-03-04 | シネマ は行
イギリス映画の「この自由な世界で」に少し似ているこの作品。2008年サンダンス映画祭のグランプリを受賞しています。サンダンス映画祭には結構注目しているワタクシ。今回もグランプリ受賞作を見に行くことにしました。サンダンス映画祭だけじゃなくて色んな賞を受賞していますね。

ギャンブル好きの夫が購入予定の家の残金を持って蒸発。15歳と5歳の息子を持つレイメリッサレオは夫の車を盗んだモーホーク族の女ライラミスティアッパムのところに車を返すよう言いに行き、行きがかり上、ライラが手を染めている不法入国者を運ぶ仕事を手伝うことになる。たった1回だけのつもりがお金欲しさに何度も仕事をするようになるレイ。

ニューヨーク州とカナダの国境。この辺りにはモーホーク族の保留地がある。アメリカにはここだけではなく各地に様々な部族の保留地があるのだが、そこでは独自の政治が行なわれていて、ある程度その部族の自由がきくようになっている。ライラがビンゴ会場で働いているが、賭博が禁止されている州においても保留地では独自に許されている場合があったりする。このモーホーク族の保留地はアメリカとカナダの国境をまたいで存在するため、彼らが行き来する分には違法ではない。そして、それを利用して他国からの不法入国者をカナダ側からアメリカ側へ運んでいるのだ。

レイの家庭はいわゆるホワイトトラッシュとまではいかないまでも、貧困層である。購入予定の家というのもワタクシたちが一般的にアメリカの一戸建てと聞いて想像するような郊外の家ではなく、トレーラーハウスと言われるタイプのものだ。それでも、レイたちは頑張って働いてお金を貯め、貧しいながらも大きくて断熱材の入ったトレーラーハウスを手に入れるはずだった。ここには、絵に書いたような温かい家族愛が存在するわけではないが、子供たちはきちんと学校に通っているし、長男のTJチャーリーマクダーモットは弟の面倒をよく見ている。反抗期だし、父親がいなくなったのは母親のせいだと思ってはいるが、家族に対する愛がないわけではない。母親のレイも憎まれ口を叩くTJを苦々しく思いながらも、子供たちを愛する気持ちは確かに存在する。ただお金がなく苦しい生活に心の余裕が持てないだけだ。

一方のモーホーク族のライラも若くして夫を亡くし、産んだばかりのわが子を夫の実家に奪われ、子供を取り戻すために違法なことに手を染めている。お金が貯まったら、息子のために使ってもらおうと夫の実家にこっそり届けるが、それもつき返されてしまう。

追い詰められた彼女たちがどこへ向かうのか。毎回、彼女たちが“仕事”をするたびに観客はハラハラさせられる。不法入国者の赤ちゃんが入ったカバンをそうとは知らずに凍った川の上に捨ててしまったときには、本当にドキドキした。彼女たちがそれを知ったとき、一瞬の迷いもなく凍った川へと引き返したときには、やはり二人とも母親であることに安心した。もちろん、違法行為をする彼女たちに共感はできないが、どこかで同情はしてしまう。

最後のピンチのときのレイの意外な決断が、この映画をより素晴らしいものにしていると思う。レイとライラの“夫のいない母親である”というただ一つの共通項が、この決断をよりリアルなものにしていると思う。15歳のTJはもちろんとても傷つくだろうけど、彼ならそれを乗り越えてくれるものと信じたい。


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