劇場未公開の作品です。ケーブルテレビで見ました。
ボスニア紛争後、治安を維持するためにボスニア入りしていた国連監視団、民間軍事会社の人々が周辺の途上国などから女性を連れてきて慰安婦としていた問題に気付いたアメリカ人女性警察官キャシーレイチェルワイズがこの人身売買を告発する過程を描く作品。
出演している役者さんもレイチェルワイズの他、ヴァネッサレッドグレーヴ、デヴィッドストラザーン、モニカベルッチと有名どころが出ているにも関わらず、劇場未公開とはどうしてなんだろう?小さな映画祭では観客賞などを受賞したりもしているみたいなのに。日本って世界の中でもかなりたくさんの国の小さな作品まで見られる国だと思うんですけどね。国連の犯罪絡みということで何か黒い理由でもあるのかと勘ぐってしまいます。
治安を維持するためにボスニアにいるはずの人々がこういう犯罪に手を染めていたというのは、とてもショッキングでした。貧しい国から売られてきた(良い仕事に就けると騙されて)少女たちは、慰安婦として働かされただけではなく、逃げないようにパスポートは没収され、不潔で暗い部屋に何人も雑魚寝状態で押しやられ、逆らえば見せしめのように暴力を振るわれ、監禁され、しかも渡航費用や部屋代などを借金として返すよう強要されていた。
多額の報酬目当てにアメリカからボスニアに来て治安維持活動をしていたキャシーは全身傷だらけのラヤという少女を保護したことから偶然、少女の人身売買が行われていることを知る。女性として、母親として、警察官としてキャシーはこの事件を追う。背後にある恐ろしい力に気付かずに。
一般のバーを隠れ蓑にした売春宿に同じ民間軍事会社の連中が出入りしているという事実だけでもショッキングだったのに、少女たちの証言によると、国連、軍事会社の連中が少女たちを国境から運ぶ仕事までしていたことが分かる。しかし、上層部は当然そんな事実は認めず、軍事会社はキャシーをクビにしてしまう。
キャシーの味方は少なく、少女たちも組織の報復を恐れて証言できず、実際に証言した少女ラヤは見せしめに殺されてしまう。残る手段はマスコミにリークすることだけだが、様々な脅迫を受ける中、キャシーは証拠を持って出国できるのか。
というストーリーをサスペンスフルに描いていて、非常にうまい作りになっている。ラリーサコンドラキ監督はこれが初監督とは思えないほど、物語を分かりやすく語っているし、その上、映画的なサスペンスもあって盛り上がる。
これがただのサスペンスアクションものだったら良かったんだけど…これは実話を基にしているというんだから、本当にショッキングな話です。キャシーがこれをマスコミにリークしたあとも国連側はそんな事実はなかったと否定し、この人身売買にかかわった者たちも自分の国に帰されただけで、何のお咎めもなかったというのだからやりきれない。
たとえ、どんな強大な権力が後ろにあろうと、警察官として自分の仕事をするだけだというキャシーの姿勢がものすごくカッコいいし、こういう闘志あふれる女性の役にレイチェルワイズはぴったりだ。数少ないキャシーの味方である国連の高官を演じたヴァネッサレッドグレーヴは、反体制派として活動している人だからおそらくこの映画の製作に共感して出演したものと思われる。DVDのパッケージには日本での知名度を考慮してかモニカベルッチが大きく出ているけど、出演時間はとても短く、しかも被害者の少女たちのことよりも事務手続きを重視するヤな奴の役ですので、ファンの方は多少がっかりするかもしれません。
本当にこんな素晴らしい作品が、あまり知られていないというのはとても残念です。もちろん、目をそむけたくなるような話ではあるのですが、機会があればぜひ見てほしい作品です。
「映画」もいいけど「犬」も好き。という方はこちらもヨロシクです。我が家の犬日記「トラが3びき。+ぶち。」
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