シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

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トランボ~ハリウッドに最も嫌われた男

2016-08-05 | シネマ た行

ハリウッドの赤狩り時代を描いた作品。当時売れっ子脚本家だったダルトントランボブライアンクランストンは共産党員であることを理由にハリウッドから追放される。下院非米活動委員会の召喚に対して非協力的だったために投獄までされた彼は偽名を使って脚本を書き続け、正体を明かさないまま「ローマの休日」や「黒い牡牛」などでアカデミー賞を受賞した。

米ソ冷戦のまっただ中、アメリカには赤狩りという思想弾圧があった。ワタクシはこの歴史を1991年の映画「真実の瞬間」というロバートデニーロ主演の作品で知り、チャップリンも赤狩りに遭ってハリウッドを追い出された人の1人だったということに非常に驚いた覚えがある。

ダルトントランボは共産党員であり、それを隠す気などさらさらなかった。彼は同じような思想を持った仲間たちの中でも急進的で、彼らを弾圧しようとする団体に対しても堂々と自らの理論をぶつけた。彼はどこにいても自分の意見をはっきりと言う。「空気を読む」なんて絶対にしない。そんな彼がめちゃくちゃカッコ良かった。(特に当時のスーパースター・ジョンウェインデヴィッドジェイムズエリオットに君がいつどの戦争で勝ったんだ?と迫るシーンが良かった)

しかし、現実にはカッコいいでは済まされないことばかり。投獄され、出所しても近所からは嫌がらせを受け、ハリウッドでは誰も雇ってくれない。家族も酷い目に遭う。それでもトランボは負けなかった。自分の名前さえ出さなければ、安いギャラしかもらわなければ雇ってくれるところはある。三流映画ばかり撮っているフランクキングジョングッドマンのところへ売り込みに行き書いて書いて書きまくった。一緒に追放された仲間たちの分まで仕事をもらって書きまくるトランボ。そのかたわらでビッグスタジオ用の脚本(「ローマの休日」など)も書き別の人が書いたことにして売り込んでもらった。家族のことをかえりみる時間などない。彼はイヤなお父さんに成り下がってしまうほどに書きまくったが、それもこれもすべて家族の生活を守るためだった。

この作品のすべてがいま現在の時代とリンクしているように思えた。自分たちと違う考えは許さない政府。自分たちと異なる意見を否定するというその言論の自由の否定そのものがいつか自分たちを否定することになるかもしれないということに気付かない。人々が疑心暗鬼に陥り、お互いを監視し合う世の中。世界で日本でまた同じことを繰り返そうとしているように思えてならない。

映画の作りとしては非常にテンポが良く、トランボを演じるブライアンクランストンが非常にうまく最初から最後までとても引き込まれる。実際の当時の映像と現在製作した映像をうまく融合させてあり、どこからがいま別に作ったものかもう一度じっくり見たい気になった。ヘビーなテーマながらところどころに笑いの要素もあって娯楽としても楽しめるようになっているところが優秀な作品だと思う。

カークダグラスを演じたディーンオゴーマンが似てるような似てないような…だったけど、とにかくカッコ良かった。今ではマイケルダグラスのお父さんと説明したほうが分かる人も多いかもしれないけど、カークダグラスってこんな骨のある人だったんだなぁと改めて知ることができて嬉しかったです。

トランボはあの時代を振り返り、自分たちを傷つけあったあの時代を許そうと話した。やはり大切なのはその寛容さである。密告した隣人を憐みこそすれ恨みはしない。と、ひとくちに言うのは簡単だが、トランボとてその心情に至るまでには多くの時間が必要だったことと思う。振り返って許す以前にこんな時代が二度と来ないようにすることが何より重要なのだと感じた。いまの時代空気を読みまくっているマスコミの方々にこの作品を見てもらいたい。


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