シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ボラット~栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習

2013-07-12 | シネマ は行

以前からずっと興味があったのだけど見ず仕舞いだったのでレンタルして見てみました。

最初にはっきり言っておくとワタクシはこの作品を好きとは言えません。見終わってからすぐはブログに取り上げることはないなと思っていました。全然面白くなかったわけではないんですが、ちょっと内容があまりにも下品でおゲレツ過ぎるし、ワタクシは決して映画を見るときには生真面目さんではないつもりだけど、それでも眉をひそめるシーンが結構ありました。

公開時、映画ファンの間では話題になった作品ですが、一般の方は全然知らない作品かもしれませんね。少し説明をしますと、カザフスタンのテレビリポーター・ボラットサシャバロンコーエンが国家の命を受けてアメリカ文化を学ぶためにアメリカに渡り突撃取材をするというもの。設定だけを聞くとまぁ面白そうと思うかもしれませんが、このボラットという男、というか彼の国カザフスタンの設定がちょっとえげつない。彼らは徹底した男尊女卑でユダヤ嫌いでゲイ嫌い、妻は誘拐して娶るもので、妹が売春婦なことを自慢に思う。ド田舎の楽しみは年に一度のユダヤ人追い祭り。その他もろもろ出てくるのだけど、まぁこれだけ聞いただけでもしっかり眉をひそめた人も多いのでは?実際にはこのボラットを演じるサシャバロンコーエンはユダヤ系イギリス人のコメディアンでイギリスではテレビのコメディ番組のキャラクターだからそれを分かった上で見る分にはちゃんとシャレになるというところなのだろう。

そのとんでもない国からやってきたボラットが色んなところを突撃取材する。これがいわゆるモキュメンタリーの形を取っていて、実際にボラットがカザフスタンから来たレポーターとして色んな団体などにインタビューする。演出もあるらしいんだけど、インタビューされている人たちはボラットが本当にカザフスタンから来たレポーターだと思って答えているのがほとんどだそうで、ボラットの下品で下劣な受け答えに戸惑う表情が見られる。

ユーモア講座では弟が知的障害者であることをみんなで馬鹿にしているというジョークを飛ばし先生は大いに困惑。「ここではそういうことはジョークにしませんよ」とたしなめる。
フェミニスト団体には「女は男より脳が小さいから教育は無駄」とか言って本気で怒らせてしまう。
ロデオ大会でテロとの戦いを賞賛して受け入れられるものの、図に乗ってイラク国民を皆殺しにし向こう1000年間はトカゲ一匹住めない死の国にしてしまえ!と言い客にドン引きされたあと、アメリカ国歌のメロディにニセのカザフスタンの国歌の歌詞を乗せて歌い大ブーイングを喰らう。
社交術を学ぶために南部の上流階級の家でディナーパーティに行くが、そこにいる女性を侮辱した上、トイレの使い方が分からず大便をビニール袋に入れてテーブルのところに持ってきてしまう。友達を呼んだからと娼婦を呼び本当に警察に通報されてしまった。
ホテルでプロデューサーのアザマットケンデイヴィシャンとケンカし、2人で素っ裸のままホテル中を取っ組み合いしながら走り回り最後には住宅ローン販売員の会議に乱入し、本気で警備員に取り押さえられる。この時、本当に素っ裸です、2人とも。
パメラアンダーソンを誘拐して結婚しようとしたが、この時も本気で警備員に捕まった。(この件はパメラアンダーソン自身は知っていたらしいのだけど、警備員は知らなかった)

と他にも端折ったところが何か所かあるんだけど、まぁ、行く先々でタブーというタブーを破ってしまうボラット。もうここまで行くと本当に笑えない。ジョークでは済まされない。インタビュー相手の顔がほんっとにひきつってるのが分かるんですよ。そして、その上でうまくかわす人、引く人、調子を合わせる人、怒る人、色んな反応があって、それも人間性というか。そのあたりは興味深いなぁと。怒る人の人間性が低いとかは思わないですけどね。あれじゃ怒って当然だし、差別発言とかは怒るべきだとも思うし。ボラットの息子の局部のアップ写真を見せられて「家族の写真です」と言われたマナーの先生がとても落ち着いて「服を着ている家族の写真をお見せしたほうがいいと思いますよ」と言ったのはあっぱれだと思ったなぁ。

好きとは言えないのに映画ブログに取り上げる価値があると思うところはやっぱりそこまでやるか!?っていう根性かなー。いくらテレビカメラが回っている(というてい)だったとしても本気で相手を怒らせるようなことばっかりやるんだから本当に勇気がいると思うんだよねー。実際あとで訴訟になちゃった件とかもあるらしいので、やっぱその辺のブラックジョーク加減っていうのはイギリスっぽいのかなぁと思ったり。彼の出身が架空の国だったらもう少し平気で見られたかもしれないんだけど、カザフスタンの人の心情を考えるとツライもんはありましたね。架空の国だったら全然面白くないんだよって言われるのかもしれないですけど。

サシャバロンコーエンという人はちゃんと「ヒューゴの不思議な発明」とか「レ・ミゼラブル」にも出演しているコメディアンだけど、何年か前のアカデミー賞のレッドカーペットでは金正日の遺灰(に見立てた粉)を壺からばら撒くという恐ろしいパフォーマンスもやっちゃってますね。根っからのブラックコメディアンということなんでしょうか。



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