シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

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縞模様のパジャマの少年

2009-09-04 | シネマ さ行
ワタクシはいままでたくさんの映画を見てきた。「セブン」を見ても平気だった。「ソウ」も大丈夫。「ダンサーインザダーク」も「オールドボーイ」も全然平気だし、「ファニーゲームU.S.A」だって、そういう映画だと思えば納得できた。でも、この「縞模様のパジャマの少年」を見終わった直後の後味の悪さは他に類を見ない。いままで、映画を見て気分が沈んだことは何度もある。でも気分が沈むということとは絶対的に違う後味の悪さがそこにはあった。

お父さんデヴィッドシューリスはドイツ軍の偉い軍人で、今度昇格して郊外に引っ越すことになった。お父さんのお母さんシーラハンコックはその事に対してなぜか批判的だ。お母さんヴェラファーミガは引っ越してからしばらくすると、なぜか様子がおかしくなった。お姉ちゃんアンバービーティは、お父さんの部下の若い軍人コトラー中尉ルパートフレンドと仲良くなって、どんどんナチスに傾倒していっている。僕ブルーノエイサバターフィールドは新しい家が退屈で行っちゃいけないって言われている近くの農場に遊びに行って、鉄の柵の向こうにいるシュムールジャックスキャンロンと仲良くなった。シュムールはなぜ柵の向こうにいるの?と聞くと「ユダヤ人だからだよ」と言った。

僕にはどうしてシュムールがいつも縞模様のパジャマを着ているのか分からない。お父さんに農場の人たちのことを聞くと、「彼らは僕らと同じ人間じゃない」と言っていた。どういう意味だろう?

家には家庭教師の先生が来て、「ユダヤ人はロクな奴がいない」なんて書いた本を読まされたけど、シュムールは良いユダヤ人だよね。

ブルーノは8歳。自分の周りで起こっていることがなんか変だと思いつつも、その実態に気付けるほど成長していない。8歳と言えば小学校2年生。まだまだ幼稚園に毛が生えた程度だ。しかも、彼はユダヤ人収容所の所長の息子。あの当時、もっとものほほんと暮らしていた中の一人だったと言えるだろう。疑問に思ったことを聞いても大人たちが教えてくれるはずもない。お父さんはお母さんにさえ、任務の詳しいことは教えない。お母さんはある日、夫が本当にしていることを知り、喧嘩が絶えなくなりふさぎこんでしまうが、それもブルーノには何かがおかしいということしか分からない。

お母さんは収容所で行われていることを知り、この場所に子供たちを置いておくのを嫌い、子供たちを連れてまた引っ越すと言う。ブルーノは、最後の日、シュムールのいるところへ行こうとしていた。そこで何が行われているのか何も知らないまま。家族はいなくなったブルーノを懸命に探すのだが・・・

この物語の原作はジョンボインというアイルランドの若い作家が2006年に出版し、世界的ベストセラーになったということらしい。そして、それをイギリスが映画化。

もし、これがドイツの映画だったら、見た直後の後味の悪さというのはまだましだったと思う。あのラストをなぜ、わざわざイギリス人が?(あとから考えるとアイルランド人が?)いまさら?60年も経って?ドイツへの見せしめのようにこの映画を作る必要があったのか?もちろん、言うまでもなくあの時代ナチスがおこなったことを肯定しているのではない。ただ、あんな方法で8歳の子供を使って、昔の傷をえぐる必要があったのか?これが見た直後の正直な感想だった。いつもならエンドロールが流れ終わる最後まで劇場で座っているのだが、このときばかりは立ち上がって帰らずにいられなかった。ふつふつと怒りがこみ上げて、隣ですすり泣いている女性までもが憎らしく思うほどだった。



いま、見終わってから丸2日が経っている。あえて、自分からこの作品を別の角度から見てみようと思う。この作品を執筆したジョンボイン氏もこの作品に携わった人たちも、これをドイツ人への見せしめにしてやろうなんておそらく考えてはいないのだろう。

たった一人の大切なドイツ人を助けるために奔走する人たちと、何十万人ものユダヤ人を虫けらのように殺した人たちがまったく同じ人たちなのだ。やはり、別の角度から見るとすれば、この切り口しか考え付かない。ブルーノが彼らにとって大切な人だったように、シュムールもそしてその他のユダヤ人も当然誰かの大切な人だったはずだ。その「当然」が戦争という名の下に簡単に踏みにじられていく。その怖さ、人間の愚かさ。それを気付かせるためのあのラストだったと思えば、実際に人間が戦争で行う残虐行為に比べれば、あのラストなんて衝撃的でもなんでもないのかもしれない。ワタクシが感じた“後味の悪さ”などとは比較にならないほどの現実が戦争というものにはあるということなのだろう。

オマケ1ヴェラファーミガが、収容所での真実を知って夫から心が離れていく感じのお母さんを非常にうまく演じていた。「ディパーテッド」の記事には“きれいだけど、ちょっと微妙な感じ”と書いている。今回も美しさについてはそんな印象だったけど、演技に関してはかなり良かったと思う。これからも注目していきたい。

オマケ2シュムールを演じたジャックスキャンロン君。この映画のためにオーディションしたっていうことだけど、収容所に入っているわりにはふくよかなお顔でしたね。もうちょっと痩せた子を選んだほうが良かったような…

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13 コメント

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Unknown (Unknown)
2012-04-21 16:29:40
私も、この映画を鑑賞したまたま拝読させて頂いたのですが

〉女性までもが憎らしく思うほどだった。

↑個々に受ける印象、感じ方は違って然りだと思います。
逆に笑っていたり思慮深い素振りをしていれば
他者を「憎らしい」と感じませんでしたか?

鑑賞後の 感じ方の相違で仮に感情の例えだとしても「憎らしい」
という表現は相応しくないと思います。

この映画が深く、当時の歴史的背景も複雑で
更にはドイツと同盟国だった我が国の1人としても色々と考えさせられた為、上記引用部分の表現が
軽率に感じ思わずコメントしてしまいました。

Unknownさま (coky)
2012-04-23 15:56:28
ワタクシがこの映画を見終わった直後の自分の感情の例えとして他者を「憎らしい」という言葉を使用したことは相応しくないとはいまでも思いません。

ナチスのしたこと、日本の帝国主義がしたことを考慮してもこの作品に対してワタクシが感じた感想として、この表現が軽率であるとも思いません。

ワタクシがナチスや日本帝国主義を肯定しているわけではないことはこのレビューを読んでいただければ分かっていただけると考えます。

それとは別の次元で、この作品を見終わった直後に感じた嫌悪感を表現したまでであり、このレビューを書いてから2年半が経ったいまではその表現を変えたいとは思っておりません。

Unknownさまがおっしゃる通り感じ方は様々ですので、Unknownさまのお考えは尊重いたします。

ただこれからコメントをくださるときはハンドル名で結構ですのでせめてお名前をお書きください。よろしくお願いします。
うーん。 (チャグラン)
2012-05-03 22:35:02
僕は憎らしいという表現はありかと…。
あの作品を僕は「感動する!」「良い作品」と言われ見てみました。普段僕は感動作で泣けるのですが、これは泣けません…。

ある意味良い作品なのかもしれません。ただ、もう二度と見たくはないとそう思いました。勝ってながらコメントさせて頂きました。すみません。
投稿者に激しく同意です!
同感です! (shinodeth)
2012-05-07 12:44:51
はじめまして
同感です
この映画を見た時の違和感というか、なんとも言えない感じを見事に解説して下さり、ありがとうございました
チャグランさま、shinodethさま (coky)
2012-05-07 14:15:56
チャグランさま、

ワタクシも見る前は感動する作品と聞いて行きましたが、実際には違っていました。
もちろんそういう評判があるということは、そう感じる方が多いということなのでしょうね。
本当に感じ方は人それぞれですね。

shinodethさま、

shinodethさまもこの「なんとも言えない感じ」を共有された中のお一人のようですね。
ワタクシのレビューでうまく解説できているか、と思っていましたがそう言っていただけて嬉しいです。
前々から気になっていた (しぇーん)
2012-07-11 17:32:01
んですが
やっと観賞して色々調べるうちに
こちらを拝見いたしました。

確かに後味の悪さは格別な作品になってますね。
この題材での作品では
シンドラーのリスト
戦場のピアニスト
などが最近では有名で上記2つは
ノンフィクションであるのに
この作品はフィクション

ですが
私が見て感じたのは
リアリティーでした。
死 戦争
私たちが思うよりも
不条理な世界、時代だったのだと

作品の作者、監督の狙いは
子供に見てほしいとのこと
不条理な事がまかり通り
その歴史を知り
繰り返さないこと
を作品に込めたそうです。

主さんのように誰もが
嫌悪感を覚えたでしょう。

それがまさに監督や作者の
狙いだったのだと思います。

戦争を憎み
差別を憎み

それを繰り返さないこと

作品を見た人がそう思えれば
誰もが平和を望むことでしょう。

長くなりましたがおじゃまいたしました。

追記
ユダヤ人の子供役の子は
撮影でお菓子を食べまくったので
ふっくらしてたのではないかと

ワンシーンで50個くらい
食べたらしいですから

しぇーんさま (coky)
2012-07-18 14:55:10
コメントありがとうございます。

ワタクシが感じた嫌悪感が監督の狙い通りだとしたら、すっかり狙いにハマってしまったようです。
確かにその狙いはしっかり達成されていますね。
平和を望むとともに、あの時代のあの出来事が決して特別なことではなく、人間というものが簡単に陥ってしまう可能性のある出来事であるということを心に刻んでおきたいと思っています。

ユダヤ人の子役の子、お菓子のせいであんなことになっちゃったんですか!?
スタッフが止めないとダメですよね~。

人間を相手にしていない。 (赤尾憲男)
2012-08-03 10:43:58
今まで観た映画が全て薄っぺらく感じてしまう衝撃でした。ナチやホロコーストが背景ですが、テーマは人間社会の不条理ではなく、なにか人間界を超えた処にあるようです。生命、自然としか言いようがありません。食べ物として殺される牛や豚の運命、運命の拙さを嘆くとしか言いようがありません。
赤尾憲男さま (coky)
2012-08-07 10:48:53
コメントありがとうございます。
人間の残酷さ以上のものを感じるという意味に捉えてよろしいでしょうか?
ホロコーストの状況というものが一体何物なのかいまだに分からずにいますが、これが歴史上最大ではあっても特別な出来事ではないことにつねに驚かされます。
今日観ました。 (ケイ)
2013-04-07 00:24:45
見終わってショック覚めやらずでレビュー探してました。私は後味の悪さというより、悲劇的な結末に胸が締め付けられてしまい、洗濯物畳む時もずっと頭はラストシーンばかり思い浮かべてました。救いはDVD鑑賞だったことで、本編以外のボーナス映像により、俳優陣含む製作に携わった人たちの作品への思いに触れられたことですね。特にコトラー中尉役俳優の熱い想いは印象的でした。おかげでま見終わった後のやり場のない悲しみが癒されましたね。しかし、もし映画館で観たら場合によってはあなたと同じ気持ちになったかもしれません。とにかくいろいろ考えさせられた映画でした。

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