シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ミリオンダラーベイビー

2005-05-24 | シネマ ま行
号泣だ。「アビエイター」仕方ないな。この作品と同じ年にぶつかったことを不運と思うしかないよ。

娘に連絡を絶たれたしわがれたボクシングトレーナー、フランキー(クリントイーストウッド)、彼と旧知の仲の元ボクサー、スクラップ(モーガンフリーマン)、チャンプを目指すには年を取りすぎた素人女性ボクサー、マギー(ヒラリースワンク)。この3人の関係がそれぞれに丁寧に描かれる。

スクラップ渋い。渋すぎる。彼の俳優としての“売り”はこの渋さにあるのは分かっているのだけど、。渋い。それしか言うことがない。。。

彼がいなければ、トレーナーのフランキーがマギーを受け入れることもなかった。だからこそ、彼女が窮地に立ったときフランキーは「全部お前のせいだ」と言ってしまったりすることになるわけですが。もちろんそんなことを彼が本気で言ったんじゃないことをよーく分かっている彼。wise man(賢者)という表現がぴったりな人だ。そんな彼がジムでいざこざを起こした若者をぶちのめして、110試合目を達成するところがオチャメだ。

そして、その彼とフランキーのやりとりが絶妙だ。過去の試合のことで責任を感じているフランキーに臆すことなくズバズバと意見を言うスクラップ。頑固なフランキーもスクラップには勝てない。でも、フランキーが落ち込んでいるとそっとその場に適したアドバイスをしたりするのだ。

マギー彼女はいわゆる“ホワイトトラッシュ”と呼ばれる人種だ。あまり知らない人もいるかもしれないがアメリカには非常に貧しい生活をしている白人がたくさんいる。映画ではトレーラーに住んで仕事もあったりなかったりっていう姿でよく現れる。彼女はその一人。だからこそ、ボクシングのハングリー精神がよく似合う。そして、この彼女の家族。最低最悪の人間たちと思う人が多いだろう。そう思って当然だしワタクシももちろんそう思う。ただ、その背景には貧しいアメリカがある。日本もそんな道を辿っているような気がしてならない。

「キャスティングの妙」という言葉があるが、この作品の彼女がまさにそれだ。一時のデミームーアのようなタフ過ぎるイメージの女優だと単なるスポ根になってしまうし、綺麗過ぎる女優が体当たりでやったとしたら、(ヒラリースワンクには失礼だけど)実際殴られて血だらけのシーンなんて本当に正視できないだろう。そのどちらの意味でもスワンクはドンピシャだ。この役をやれるのは彼女しかいなかったろう。イーストウッドの作戦勝ちだ。

フランキー毎日教会に通いながらも、牧師にケンカを売るような質問ばかりで熱心なんだかよく分からんのだけど、盲目的な信者ではないだけで彼なりに熱心、と言うか、彼のような質問をする人のほうが本当は熱心なんやろうに、牧師には疎ましがられている。そして、自身のアイルランドの血を守るためゲール語の勉強をしている。頑固じじいだ。娘と疎遠なのも理由は詳しく語られないがなんとなく想像がつくような気がする。すごく義理堅いいい人なんだけどな、頑固で愛情表現が下手くそなんだろう。若い頃なら荒々しさもあってなおさらだったんだろう、と。

本当にしわがれたイーストウッドがとてもとてもカッコよかった。あの切ない演技には主演男優賞をあげてもいいくらいだ。体全体からこの役の内面があふれ出していたような気がする。うまく言えないけど。
ワタクシも彼のアドバイスを忘れないでいよう"Protect yourself at all times."

ストーリーがどうなるかは書けないので困るんですが、とにかくハンカチ、涙もろい人はタオルを用意して見て下さい。後半のフランキーとマギーの絆に涙が止まりません。こんなんで泣かすのは反則や!お涙頂戴や!とか思う前にもう涙でボロボロになってました。(そう思う人はいるでしょう、確かに)

非常に長くなってしまいました見た直後なので。まだ、興奮冷めやらずなんだな。

もしアイルランド文化をあまり知らない人は、少し基礎知識を入れていったほうがいいかも。グリーン、ハープ、カトリック、ゲール語、キーワードはそのあたりですかね。

そして一番のキーワードの意味は映画館で確かめて下さい。"モ・クシュラ"