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シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

デブラウィンガーを探して

2005-09-10 | シネマ た行
ロザンナアークェットが自分の人脈をフルに利用して作ったドキュメンタリーというか女優仲間へのインタビュー映画。何人かの女優の座談会的なシーンもあります。映画ファンにはたくさんの有名女優の話が聞けてたまらない面白さがあるのですが、こんなワタクシでもアメリカのTVシリーズで有名は人までは分からず結構知らない人も出ていたので映画をたくさん観ない人にとっては知らん人ばっかりーってことになりかねませんが、彼女たちが有名人ということを度外視しても働く女性、家庭を選んだ女性それぞれの苦悩や喜び、ハリウッドの内情話を聞くには十分興味深い作品だと言えると思います。

シャーロットランプリングヴァネッサレッドグレーヴのような大御所の話や一線から退いたジェーンフォンダがどんな瞬間が映画を撮っていて一番快感だったかを語るところはかなり素敵で、かつその快感を夫と子供のためにあきらめたことを後悔していない彼女はより輝いて見えた。彼女の夫はよっぽど素敵な人ということなのか。

その他有名どころではシャロンストーングィネスパルトローメグライアンウーピーゴールドバーグなどでしょうか。サルマハエックもメキシコの女性らしい発言をしていますね。

座談会(メラニーグリフィスの家らしい)では、久しぶりに見るマーサプリンプトンサマンサマシスダリルハンナケリーリンチパトリシアアークェットといった面々が。彼女らがハリウッドでプロデューサーたちにどんなイヤな目に合わされたかという話をします。

「中学、高校でモテなかったガリ勉野郎たちがスタジオの大物になって、女優を自分のものにしようとする」

「演技ができるかどうかではなく、fuckableかどうかで選ばれる」 (つまりヤレる女かどうかってことね)

とかいう話はホンマにそんなんあんねんやーって感じでした。

“若い”ということが重要視される世界で、「それでも整形なんてしたくないわ」という彼女たちには、 「嘘つけー、やってるやろー」と思ってしまったけど…
ま、ロザンナだって女優なんだからそんなことを暴いたりしないでしょ。

マルチェロマストロヤンニとカトリーヌドヌーヴの娘、キアラマストロヤンニが「自分の頑張ろうというモチベーションは他の女優の活躍ぶりからくる。」と言っていたのが印象的でした。役の取り合いなどやたらとスキャンダラスに女同士の争いを醜くマスコミは扱いたがりがちですが、本当に一流の人たちはそれぞれをライバル視しながらも理解し尊敬しあってるのではないかなーと思います。お互いの苦労を一番理解し合える仲だしね。

そして、個人的にはエマニュエルベアールが「どんなに頑張って仕事をしていても、いつか私を私の子供ごとさらってくれる王子様を待っているのよ。」と言っていたのが好きでした。(彼女のファンなので)

すべての発言に対して、ま、女優が言うことだからと話半分で聞きながらも結構聞き入ってしまった97分間でした。

トゥーブラザーズ

2005-09-08 | シネマ た行
ワタクシのもっとも大好きな動物、虎のお話である。親が殺され別々に拾われた2匹の兄弟クマルとサンガ。クマルは臆病でどんくさい。サンガは好奇心旺盛で運動能力がある。そのクマルはサーカスに、サンガはフランス大使の息子の元に引き取られるがそこで飼い犬を殺してしまい、闘虎用に地下で檻に入れられて育つ。

山の中で2頭の虎が結ばれ、この兄弟が生まれるところから物語が始まる。この虎たちの山での生活の部分はまだまだ子虎で2匹とも非常に可愛い。

2頭で遊んでるうちに親からはぐれてしまい、親が捜しに来る。ここでは親虎はどんくさいクマルのほうをくわえて連れて行き、サンガは後から付いていく。でも、人間が銃を持って狩りに来た時は、クマルは後で迎えに来るつもりでサンガをくわえて逃げていく。この2つのシーン。ジャン=ジャックアノー監督はわざとそうしたのか?それとも偶然か?もし、わざとならすごい!親虎はたいした危機じゃないときはどんくさいほうを助けたけど、本当の危機のときは自然界で生き残れるであろう強いほうを助けたのだ。こういうことは本当にあるんじゃないかなと思わせた。いや、偶然かもしれんけど

それぞれ引き取られてからはやっぱりハンターガイピアースの飴ちゃんを欲しがるクマルが最高に可愛かったなぁ。あとは、再会してからの2頭がすっかり大人のような体格になっていたけど、それでもやっぱり愛らしさが残ってましたね。こっちがそういう目で見ているからかもしれないけど。

実際、虎の兄弟があんなふうに再会してお互いが分かるのかどうかは疑問ですが、冒頭から虎の家族を擬人化して見ているので、そんなアホな~みたいには思わなかったですね。そのへんはファンタジーでいいかと。

映画そのものはたいしたことないかもしれないけど、とにかく虎好きにはたまりません。(そんな人あんまりいないかな?)クマルを乗せたトラックを追う親虎や追いつけずに見送る親虎とサンガの後ろ姿、逮捕されたハンターを追いかけるクマル、フランス大使の子どものベッドで一緒に眠るサンガ。もうどれをとっても虎たちの表情に釘付けです

最後に臆病者のクマルが活躍する見せ場もあって拍手したくなっちゃいますね。ほのぼのとお子さんと一緒に見るのもいいかも。大人向けな作品ではないかもしれないけど、人間と動物の共生とかそういうテーマもあるので、子どもさんにはいいんじゃないでしょうか?




時計じかけのオレンジ

2005-09-06 | シネマ た行
この作品を見たのはもうかなり前のことだと思うけど、その頃スタンリーキューブリックに対してはすごく難解なイメージがあった。なんか評判を聞いてそう思っていただけなんだけど。この作品を見るとワタクシには大して難解には思えなかったし、「2001年宇宙の旅」なんかに比べると見やすい作品とも思えた。

悪いこと三昧の主人公マルコムマクダウェルが仲間の裏切りによって捕えられ、強制的に更正するように無理やり残虐な映像を見せられ、それに嫌悪感を抱くように教育される。そして、最終的に更正したかに思われたが…

製作年度は古い(1971年)がテーマは普遍的というかそれ以上にその当時に将来を予見したようなテーマとなっている。現在、先進国で実験がされている犯罪者の社会復帰プログラムに通じるものがある。今、現実的に行われようとしているプログラムの「倫理上の問題」というものをすべて無視してとっぱらってしまったようなやり方を映画の中ではしているのだ。だからこそ、面白い。

製作年度が古いがゆえに、どうしても今見るとチープに見えてしまうようなところがなきにしもあらずだけど、その辺は全ての映画に共通することで、その当時であれば斬新だったんだろうなと想像しながら見て欲しい。映像技術の進歩は日々めざましいものがあるから、その辺は仕方ないとしても映画自体の面白さは色あせないものだ。

結局、言わんとしていることは何かとか「悪とは?善とは?人間とは?」みたいなところまで掘り下げていくとやたらに哲学的なことを考えないといけないような気になってくるけど、特にそんなことをムリに考えなくてもこの作品は素直に娯楽として面白いんじゃないのかなぁ。最後の主人公のセリフにゾッとする。その瞬間のエンターテイメント性のために全編があると考えるだけでもワタクシはいいと思う。

トゥルーロマンス

2005-08-23 | シネマ た行
まだ、「パルプフィクション」を撮る前のクエンティンタランティーノが脚本を書き、トニースコットが監督をした作品。クリスチャンスレーターパトリシアアークエットが主演ですが脇でゲーリーオールドマンブラッドピット(←超ジャンキー)がちらっと出ていたりします。

ストーリーはかなり短絡的なもので、誕生日プレゼントとしてあてがわれた娼婦と恋に落ちた主人公がそのポン引きを殺しちゃって二人で逃走。彼女の服が入っていると思って持ってきたカバンにはヤクが大量に!なので、追われる身となるんですが、登場人物が例によってみんなイカレちゃってます。主人公の二人からしてねー。ビデオ屋の店員(ほとんどチンピラ)と娼婦なんですが、いきなり恋に落ちちゃって激しく愛し合ってます。 (電話ボックスの中でまで…えーーーっ)んで、二人で仲良く平和に暮らせばいいものをねぇ。ヤクを売りさばいて一儲けしようなんて思うからロクなことにならんわけですよ。と言いつつ、でもこの二人の馬鹿さ加減&一直線度がキュートでねぇ、なんか応援しちゃうワタクシなんですが。

当時ものすごく珍しいなーと思ったのは、追っ手のジェームズガンドルフィーニにパトリシアアークエットがボコボコにされるシーンですね。女性があんなにボコボコにされて血まみれになるシーンっていうのはかなり少ないんじゃないかと。TV放映の時にはもちろんカットされてますけどね。目を伏せたくなるような壮絶なシーンです。

全体的にはタランティーノのウダウダ加減をトニースコットが非常にうまく料理して、スピード感あふれる作品に仕上げたっていうところでしょうか。それでも、エルビスの亡霊(生霊???)が主人公を元気付けるとこなんかはかなりタランティーノ節入ってます。音楽もやっぱり良くてサントラ即買いしました。バイオレンスラブストーリー(とまた勝手にジャンルを作る)がお好きな方に

血と骨

2005-08-22 | シネマ た行
このところヘヴィなものを見る気になれず、この作品も話題にはなっていたけど、手をつける気になれなかった。特に、身近な暴力を扱ったもの(いや、それがテーマではないけど)だし、和製(朝鮮人という設定だけど)のものとなるとなおさら変にリアルなのがイヤで見ていなかったのだけど、父親に薦められて今回見てみた。

とにもかくにも、役者たちがスゴイ。ビートたけしは本当にめちゃくちゃ恐かった。この人のキャスティングは絶妙だった。途中の裸のシーンなんかではハーベイカイテルを思わせたなぁ。最後のあたりの爺さんになってからは、ちょっとだけ彼のコントを彷彿とさせる危険性もあった(!)けど、それもそこに至るまでの恐さでカバーしたという感じか。あとから考えると彼以外にこの役をできる役者が他にいただろうかとさえ思わせる存在感があった。「本物の親父を見てるようで恐かった」とまで原作者に言わせるのだから、現場でも相当の迫力があったに違いない。

そして、みんな大阪弁がうまいのには本当にビックリした。どこの地方のものでもそうだろうけど、やっぱり大阪人としては、大阪弁が下手な芝居はもうイライラして仕方がない。もうそうなると、ストーリーにちっとも入り込めなくなる。今回も見る前はそういう不安もあった。しかし、だ。もちろん、関西出身の出演者もいただろうけど、全員非常にうまかった。たけしはちょっとごまめで許そう。奴の演技はもうそんなもの以上だから。

大阪弁以外にもみんなの体当たり演技が物を言うのだけど、ワタクシが個人的に好きな鈴木京香が凄かったと書きたいところだけど、彼女はいつも通りだった。うまいのは言うまでもない。でも、そこまで。彼女は汚れた役でもやはりキレイで、その線も崩しきってはいなかった。スゴイのは濱田マリ。この人、女優でもなんでもないのに、ここまでやる必要があったのか?と思ってしまうほどだった。まぁ、女優でもなんでもないからこそ何のリスクもなくできたということなのかもしれないけど。

残念だったのは、ストーリーが少し希薄に感じられたこと。原作を読んでいないので、何とも言えない部分があるけど、なんか物足りなかった。全体的な迫力は役者の演技とそれを引き出した監督の手腕から来るものだということは分かるけど、脚本としての深さはあんまり感じなかったなー。あれだけの人生を全部詰め込もうと思えばあーいうふうになってしまうのは仕方ないのかもしれないけど、迫力だけでゴリ押しした感があった。もう少し、この父親の若い頃の体験(日本に渡ってからどんなふうにやっていたかなど)を見せてくれたら、この人の人格形成の部分が見れて興味深かったかも。(それは原作にもないのかな?)そして、手込めにして女房にしたわりには、自分の妻には冷たく、子供のできなかった愛人は脳腫瘍で付随になっても面倒を見続けたことなどの理由も描かれていなくて不可解だった。(まぁ、そんな不可解な人だったのかもしれないけど。)

この父親のパーソナリティに主人公はじめ、周りの人間全員が振り回された感覚となんとなく似てるというかな。脚本までが彼のパーソナリティに振り回されてしまったということか。

オマケオダギリジョーがしている背中の“もんもん”が非常に美しくてビックリしました。あーいうメイクの技術の向上って目を見張るものがありますよねぇ。




原爆のこと~映画「トータルフィアーズ」に関連して

2005-08-10 | シネマ た行
ワタクシは広島、長崎の原爆資料館には一度も行ったことがない。「怖いから行きたくない」というのが正直な気持ちだ。でもその反面、それではいけないなという気持ちも常にある。

「唯一の被爆国」ということがどれだけの重みを持っているか、やはり日本人には世界に伝えないといけないメッセージがたくさんあるように思う。

「シネマ日記」としては、映画「トータルフィアーズ」から少しだけだけどこの問題を考えてみたい。

この作品では、ロシアの核工場からアメリカに核爆弾が持ち込まれ、スーパーボウル(アメリカンフットボールのチャンピオンシップ、野球で言うところのワールドシリーズ)の会場でその核爆弾が爆発、何十万人が死亡する。

もちろん、話の中心は核爆弾の恐ろしさではなくこのロシアとの緊張関係をご存知ジャックライアンがどう解決するかというところにあるので、仕方ないといえば仕方ないのだけど、この「核爆弾」の扱いがあまりにも軽すぎるのだ。本当に核爆弾がスーパーボウルの会場で爆発したら。。。を本当に想像できる国民は日本人くらいじゃないのかな?この作品の爆破場面から想像するに、核爆弾って「とてつもなく大きな爆弾」くらいにしか受け取ってないんじゃない?っていう印象だった。話の軸を他に持っていくための導入部的に扱える程度の爆弾ではないっていうことをあまり認識していないような気がする。

もちろん、映画や小説を「現実に沿っていない」と批判するのはナンセンスだと思う。けど、それが多くのアメリカ人、その他の国々の人たちの一般的な認識じゃないのか?というのが見えるところが非常に怖い。

他にも核爆弾が盗まれて行方不明。世界が一気に緊張状態へっていう設定の映画は多い。世界を一気に緊張状態に持っていきたいなら、一番手っ取り早い設定だろう。でも、その先にある本当の恐怖を知識としてでも、伝え聞いたことでも知っているワタクシたちは、たった一人の外国人にそれを伝える、だけでもいいからできることがあるんじゃないだろうか?たとえ外国人の友達がいなくても日本人同士の間でそれを伝えていくことによって、外国人と交流のある日本人に伝えてもらうことはできると思う。大きなことではなく、そういう草の根的なことでいいんじゃないだろうか?



とらばいゆ

2005-07-22 | シネマ た行
あんまりご存知の方はいないですかね。瀬戸朝香主演の日本映画です。「とらばいゆ」とはフランス語で「仕事、労働」という意味。ま、みなさん聞いたことある言葉でしょう。表記方法が違いますけどね。

このお話なかなかに設定が個性的です。瀬戸朝香はスランプを迎えている女流棋士。そして、その妹市川実日子も女流棋士という姉妹棋士のお話。この二人、棋士というだけあって超超超負けず嫌いの意地っぱりです。そのため、姉は夫塚本晋也 と喧嘩ばかり。妹は本当の愛を求めるものの意地っぱりな性格が災いして次々と彼氏を変えている。そして、またこの姉妹も喧嘩ばかり。

と、出演者同士が思いっきりぶつかり合う。普通に会話が弾んでいてもいつの間にかヒートアップ。喧嘩に至る。というわけで、自然と台詞の応酬となるので、非常に台詞と長回しが多い。それでいて、喧嘩のシーンがうるさすぎず、うっとおしくなく、小気味良く思えるのは監督大谷健太郎という人の演出力か。

ま、この姉妹が夫、彼氏、そしてお互いとぶつかり合い、素直になっていくまでのお話なワケでストーリーは単純明快ですが、このそう簡単には反省しないヒロインたちっていうのも面白いし、そこで語られる夫婦、姉妹、親子などの関係があまりにもナチュラルで隣の家族のお話を見ているよう。それでいて、「渡る世間」のような貧乏臭さというかぬかみそ臭さがないのは、主人公が瀬戸朝香ということと、セリフやファッションの構成がどこかヨーロッパ的というかフランス語のタイトルがよく似合う雰囲気を持っているからでしょうか。導入部からすごく自然に観客を引き込んでいきます。ラストでは、夫の優しさに触れ脱皮する主人公と共に観客も爽快感を味わうことができます。

そして、ここで主役を演じる瀬戸朝香。彼女の演技がとても素晴らしかったとワタクシは思います。妹役の市川実日子がこの役で賞を取り、その後の映画でもモスクワ映画祭で賞を取ったらしく評価されていますが、ワタクシは瀬戸朝香の一皮剥けた感のある演技が良かったと思います。

ワタクシはとにかく台詞の多い芝居が好きなのでこれはドンピシャでしたそして、将棋はまったく分からないのですが、分かる人にはもっと楽しめる部分もあるかも。(もちろん、将棋なんてまーーったく分からなくてOKですけどね。

タイタス

2005-07-12 | シネマ た行
血生臭い復讐劇だ。またまたシェイクスピア。ワタクシ、シェイクスピアが好きとか言いながら、この「タイタス」はこの作品を見るまで知りませんでした。恥ずかしながら。

いやー、本当に血生臭いな。ジェシカラングバリ怖いし。

ローマ時代が舞台だからか暴力の度合いがえげつない。現代のマフィア物なんて真っ青だ。生贄、生首、生手、レイプ、カニバリズムと恐ろしい言葉がズラリと並ぶ。そんな話なのにキャストが豪華。これもシェイクスピア効果か。

「えっ、なんでそうなるのん?短絡的ぃ~」と思うところは多々あるだろうが、それはシェイクスピアのパターンだ。その昔、TVも何もない時代の観客をエンターテインすることに徹底した脚本だからだろう。いつの時代も人間はそういう血生臭いフィクションが好きなのだろう。

原作を読んでいないので詳しくは分かりませんが、この映画の演出にはかなり思い切ったとことがある。ローマの円形劇場で演劇が始まりますよ、というところから物語に入っていき、ローマ時代のはずなのに突然現代的な機械とかが飛び出したりもする。そういう風に思いっきりニセ物風に見せることによってこの物語の残忍さを完全にファンタジーに仕立て上げるという効果があるように思えた。

様々な人間の思惑が絡み合い、騙しあい、知恵者に踊らされる者はいとも簡単に引っかかるという本当に本当にシェイクスピアな作品。あんまりエグいのは苦手という方は見ない方がいいでしょう。

テルマ&ルイーズ

2005-07-04 | シネマ た行
女性二人の逃亡劇。女性二人が主演を張る映画というのはそんなに多くない。よく、「ハリウッドは男社会。女優にいい役はなかなか回ってこない」とこぼしている女優さんがいるが、まんざら嘘ではなさそうだ。最近でこそ、女優が一人で主役という映画も増えてはきているけど。

このテルマ&ルイーズ(ジーナデイビススーザンサランドン)テルマをレイプしようとした男をルイーズが射殺してしまい、逃亡するハメになる。自分からすすんでというわけではなく、受動的に逃亡犯になってしまう。いわば彼女たちも被害者。こういう被害者的犯罪者というのは、実社会でも男性より女性のほうが多いのかもしれない。

物語の核はやはりこの二人の友情だろう。(「女の友情」とか「男の友情」とかいう言葉があるけど、ワタクシはその二つに違いなどないと思っているのであえて「女二人の友情」とは書かないでおきたい)この性格がまったく違う二人はなぜかそれでも仲がいい。そして、その性格の違いが二人の恋愛感覚の違いともうまく関連していて、テルマの恋愛感覚が一夜限りの男ブラッドピット(まだ初々しい)を登場させることになり、その結果二人をさらなる悲劇に陥れることにもなるのです。

こういう作品には、人情刑事か鬼刑事がつきものですが、この場合は人情刑事です。ハーベイカイテルがいい味出してますよね。この頃の彼は一番良かったような…

初めてこの作品を見たとき、テルマとルイーズの友達関係に何か違和感を感じたんです。それは、「あれ、この二人アメリカ人同士なのにほとんどハグとかしないなぁ」というものでした。物語の途中、二人のフィジカルコンタクトが非常に少ないのです。それは、最後のシーンで納得となりました。あの最後のガシッを強調するための演出だったんだなぁと。リドリースコット監督、うまいですね。

平凡な日常がひょんなことからガタガタと崩れていき、最後には悲劇に至る。とてもドラマになりやすい題材です。ジーナデイビスとスーザンサランドンという実力のある二人の女優に演じさせたところにこの作品の成功はあるように思えます。この二人だとなんか説得力ありますもんね。

最後に好きなシーンを。ルイーズが彼マイケルマドセンに「君の瞳が好きだよ」と言われすかさず目を閉じ、「私の瞳は何色?」と聞くシーン。彼女は大人の女性だから、彼が答えられないタイプの人だと分かってたろうし、答えられなくても怒ったりしないけど、本心では答えてほしかったろうな。せつないな。日本人にはできないラブシーンですね。


トークトゥハー

2005-07-03 | シネマ た行
んーーー、これはどうなんだ?ペドロアルモドバルのことだから、偏狭的な愛を描くのは得意技だし、主人公ベニグノナヴィエルカマラの心の優しさは映画の前半で随分見せつけられているから、彼に同情している自分もいたりするのだけど、、、えっ、いやいや、それはあかんやろとハタと自分の同情心に歯止めをかける。

事故で植物状態に陥ったバレリーナのアリシアレオノールワトリングをかいがいしく看護する看護師のベニグノ。彼女の体を拭き着替えさせ、その間ずっと彼女に話しかけてあげる。

平行して描かれる闘牛の事故で植物状態になってしまったリディアの恋人マルコダリオグランディネッティは彼女に触れることも話しかけることもできない。

この対照的な二人が友情で結ばれていく、というところまでは静かだけどペドロらしい演出が効いている。しかし、この後ある事件が…

以下完全にネタバレ



植物状態のアリシアが妊娠していることが分かる...なんで?...答えは明白だ。ベニグノだ。冒頭に書いた“そりゃあかんやろ”の部分ですね。

批評の中には彼の孤独を浮き彫りにした、とか、宣伝では究極の愛ってなふうに書いてるのもあったけど、ワタクシはそうは思えなかった。

やっぱ、それやっちゃうとなー。孤独やからってレイプが正当化されることにはならない。たとえ、彼女を愛していても、それも絶対に理由にはならない。いかなる理由もレイプを正当化することはありえない。

最後にベニグノが自殺することでペドロもレイプを正当化はしていないと思う。ワタクシは彼がそういう終わらせ方をしてくれてホッとした。

気に入っていないようなのにどうして取り上げたのか…
刑務所に訪ねていくマルコとの友情やベニグノの心の内が丁寧に描かれているし、元彼とヨリを戻してしまうリディアの姿がきれいごとだけじゃない恋愛の世界を描いていて不思議な爽快感があったりもする。

ただのストーカー映画やん。なのになにか心に残るのはペドロアルモドバルだからなのか。

誰も知らない

2005-06-16 | シネマ た行
やっと見た。先月ケーブルテレビで放映していたものをビデオに撮っておいたのだけど、やっと日曜日に見た。なんだかね、、、すっかり落ち込んでしまったよ。つらいよぉ、胸が苦しいよぉっていう感じです。

それにしてもこの母親YOUは…

ひっでぇ人間だな女でも母親でもなく「人間」としてヒドイと言いたい。彼女なりの事情???そりゃあるやろ。あーあるやろうけどさ。そりゃやっぱあかんでしょ。

この母親の考えはドーナツ屋で露呈する。「明柳楽優弥の父親はもっと身勝手なヤツだ」と。そうかもしれない。明の父親だけでなく、それぞれの子の父親はみなが身勝手な人間のクズだ。でもね、それを選んでるのはお母さん、あなたですよ。自分の恋人や結婚相手を責める人はそれを選んだ自分の非に気付かない、もしくは認めない。典型的だ。そして、この母親タイプの人は罪の意識が非常に低い場合が多い。そのしわ寄せをくらう子供はたまったもんじゃない。

百歩いや一万歩譲って子供が明だけならな。下の子達はまだまだ小さいし、いくら弟妹想いっつったってさ、やっぱ面倒見切れないよ。面倒見のいいお兄ちゃんなんてレベルじゃないもの。荷が重過ぎるよ。そりゃ、学校も行きたいし、友達とゲームもしたいし、野球だってしたいよな。

柳楽優弥くんがカンヌの主演男優賞を取ってしまったので、他の子供たちへの注目度が薄れてしまったが、京子北浦愛がマニキュアを床にこぼしてしまいお母さんに「勝手に触らないで」と怒られてしまうシーンが印象的だった。それが、京子にとっての最後の母親の記憶になってしまう。そして、私が怒らせたから母さんは出て行ってしまったのかとも。大人からするとバカバカしいのだけど、子供とはこんなものだ。親の身勝手でした行為も自分のせいかと自分を責める。

木村飛影は限りなく地に近いなっていうのが見て取れる。髪を切られすぎた時鏡の前で照れくさそうに髪をひっぱっている姿が可愛かった。

ゆきちゃん清水萌々子はやはり駅までお母さんを迎えに行くシーンだろう。今日は自分の誕生日だからお母さんは絶対に帰ってくると言い張って聞かないのだ。そんなゆきちゃんを見るに見かねて明が特別に外に出してあげる。その時ゆきちゃんが選んだ靴はもう小さくなってしまったゆきちゃんより更に幼い子が履く、歩くたびにキュッキュッと音のする赤いぞうりだ。おそらくこのぞうりがピッタリだった時には外に行けたことがなかったのだろう。だから、小さくなっていてもこのぞうりを履きたかったんだ。

この4人の子供たちの自然な演技を引き出したのはひとえに監督是枝裕和とYOUのおかげだろう。柳楽くんもカンヌで賞は取ったが演技がうまいとは思えない。「自然な演技」と書いたがそもそも演技なんかしていない感じさえする。その環境を作り出したスタッフとYOUがスゴイ!

そして、ゴンチチの音楽も森田童子を彷彿とさせるタテタカコの「宝石」も涙をさそう。

この社会ではこういった子供たちは見落とされがちになる。実際ワタクシのマンションの隣に明たちがいても気付かないかもしれない。いや、不審には思っても何もしないんじゃないかと。救えるはずだった命が無残に踏みにじられるのを食い止めるにはそんなに大きな力がいるわけではないだろうに。自分と社会の関わりを考えさせられた。

この映画のベースになった西巣鴨子ども置き去り事件を少し紐解いて見たが実際には映画よりも何倍も気の滅入る話で、この映画はこの事件を基にしたファンタジーに過ぎないとさえ思われた。

トイストーリー2

2005-06-01 | シネマ た行
何を隠そうワタクシはディズニーファンである。よく意外だと言われるが(なんで!?)純粋にかわいいディズニーものが好きだ。それに、実際映画としてよく出来ていると思う。(ワタクシはディズニー社の醜い部分はあんまり考えないようにしている)

というわけで、なんで「1」ではなくて、「2」を取り上げたかと言うと、「2」のほうがとても出来がいい。断然パワーアップしてるのだ。もちろんCGアニメの技術は日進月歩していて「1」を作ったときよりリアルになっているというのもある。(特に“人間”が顕著にリアルになった)

そして、技術面だけでなくストーリーの面白さも大いにパワーアップしている。(それはもちろん「1」が面白かったからそれを土台に面白くなったわけですが)パロディも満載で映画ファンにはニンマリシーンがいっぱい。

捨てられていくおもちゃたちの悲しみを見て、自分が遊んだおもちゃたちはどうしたっけなぁとちょっとセンチになってしまったもっと大切にしてあげれば良かったな。
と言いつつ、結構物を捨てるのが好きなワタクシ…ゴメンね。

ワタクシの一番のお気に入りのシーンは、本物と偽者のバズがいて、どちらが本物かみんなで確かめるシーン。仲間はみんなアンディのおもちゃ。だから、本物のバズにはアンディの名前が入っているのだ。ワタクシのバズ人形にもちゃんと名前入れましたよ。


友だちのうちはどこ?

2005-05-25 | シネマ た行
イランのアッバスキアロスタミ監督の「ジグザグ道三部作」の第一作目だ。

主役の子供の表情やしゃべり方がものすごくかわいい。(アラビア語なのでニュアンス的なものさえさっぱり分からないけど)

物語はとっても単純だ。学校で隣の席の子のノートを間違えて持って帰ってきてしまい、そのお友だちが宿題ができないからノートを返しに行こうとするんだけど、その子の家が分かんなくって…というお話。

今、大人になって考えればそんなこと大したことじゃないのに、小学生にとってはそれはそれは大変なこと。うん、振り返ってみれば自分もきっとそうだったんだろうなー。

それが、日本ならクラスの名簿かなんか見て電話しておうちを聞けばいいのだけど、国の事情が違うイランのこと、名簿がないか電話がないかなんだろう。だから、主人公はどうするか?近所の人に聞きながらお友達のうちを探すのです。まさに、「友だちのうちはどこ?」です。詳しい地理のことはよく分からないけど、日本なら小学校の校区が同じならそう大して遠くはないはずだけど、これもお国柄、きっと、すごく遠くから学校に通っている子もいるのだろう。しかも、小学校低学年の感覚ならなおのこと。

一生懸命探すうちに周りは真っ暗になってしまう。この男の子どうするんだろ…?

うー、けなげだ。

残念ながら、この作品以降似たような作品ばかりでイラン映画にはワタクシは少し飽きてしまったけど。イラン映画を見たことがない人は是非どうぞ。

タイタニック

2005-05-17 | シネマ た行

非難を恐れずに言おう。ワタクシはこの映画が好きだ。「何回見ても涙が出ちゃうぅ」とかいうように情熱的に好きなわけではないけれど。

作品の規模が馬鹿デカく、主人公がレオナルドディカプリオということでチャラチャラしたミーハー映画だと批判する声もあるだろうし、少し大人な人たちの中ではこの映画を好きと言うのが恥ずかしいという向きもあるだろう。

でも、世界中の人が始めから沈むと分かっている船の話で3時間ひっぱって見せるのは容易なことではないと思うし、莫大なお金をかけてディティールにこだわったセットもすごい。

主人公の二人の恋物語はたいして珍しい設定ではないし、舳先でのあの超有名なシーンなんかは確かにちょっとププッと笑っちゃうかもしれない。でも、ジャックがローズ(ケイトウィンスレット)に下町の世界を体験させるシーンは躍動感があって初めて見る世界にときめくローズの新鮮な驚きと喜びがよく伝わってくるし、キャシーベイツ演じる気のいいお金持ちのおばさんや設計士や(ビクターガーバー)船長(バーナードヒル)がいい味を出していたし、最後まで演奏を続けた音楽隊、死を覚悟して抱き合う老夫婦、子供たちを怖がらせまいとお話を聞かせて寝かしつける母親には自然と涙が出た。

船が沈んでからは、ローズが海ん中と板の上をたまにジャックと交代してたら二人とも助かったんちゃうん?とか思ってしまったけど、二人とも生き残ったらお話にならないんだものな…映画としてはこれで良かったんだろう。


天国の口、終わりの楽園。

2005-05-03 | シネマ た行
この映画、付き合い始めたばかりの恋人とは見ないで下さい。
うえーーーっとアセる羽目になります。かなりHです。

青春真っ只中の男の子二人(ガエルガルシアベルナルディエゴルナ)が年上の魅力的な女性(マリベルヴェルドゥ)と旅に出るロードムービーです。

この男の子たちは彼女がいるにもかかわらず、この女性を取り合ったりしちゃうワケです。そして、この女性、大人だからこんな子たち相手にしないと思ってたら大間違い。すっかり相手になってなんかすごいことになっちゃいます…

ま、この女性がこんなことをしたのにはワケがあって…となるのでそれには納得できるんですけど…この男の子たちの友情は…んーーーー、あんなことになっちゃったらなー、キャーーー、やっぱりその後疎遠になるよな、普通。

っと、何が起こってそうなるのかはちょっと言えませんが…この「(元)ドリカム構成」を考えていただければ容易に想像はつくでしょう

そりゃ、こういう映画作った人(アルフォンソキュアロン)がハリーポッター3を撮るって聞けば、「マジで?大丈夫?」って思うよなー。ま、それは取り越し苦労に終わって良かったんだけど。

とにかく、気まずくならない相手と見てくださいね。