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シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

セッション

2015-04-22 | シネマ さ行

アカデミー賞絡みの作品。こちらも予告編を見て面白そうだったので行きました。アカデミー賞絡みというよりもサンダンス映画祭でグランプリを獲ったっていうほうに期待して見に行きました。

プロのドラマーを目指しニューヨークの名門音楽院に入学したアンドリューニーマンマイルズテラー。鬼教師として有名なフレッチャーJ.K.シモンズの目に留まり彼のバンド練習に参加することになる。初めての練習に緊張しているアンドリューの前で音がずれている先輩がクビにされた。「出ていけ!」フレッチャーの大きな声が練習室に響き渡る。みな自分に火の粉がかからないようにうつむいている。そんなピリピリムードの中、次はアンドリューはお前の番だと言われて休憩に入る。

ほんの少しの休憩時間。練習室の前でフレッチャーに声をかけられるアンドリュー。「ご両親は音楽家かね?」「誰に憧れているんだい?」「音楽が好きなんだろ?」「固くならないでいい。リラックスして楽しめ」あれ、さっきの鬼っぷりはどこへ?なぁんだ、案外良い人じゃん。

などと思ったのもつかの間。アンドリューの演奏に「いや、ちょっと遅いな。今度はちょっと速い」と最初は優しかったフレッチャーだが、「テンポが大事なんだよ!!!!」とドラムを叩いているアンドリューの頬を平手打ち。その後もバンバン何回も頬を叩いてくるフレッチャー。「俺の手は遅いか?速いか?お前のテンポはどっちだ?遅いか?速いか?」こえぇ。19、20歳以上の男たちが泣いちゃうんだからね。"F-cking, tempo!!!!"と叫ぶフレッチャーの声と表情がいつまでも頭に残ります。

しかしアンドリューはへこたれなかった。手のひらの豆がつぶれてスティックもドラムセットも血だらけになるほど自主練を続けた。出会ったばかりで良い雰囲気だったニコルメリッサブノワにもドラムに集中したいからと別れを告げ、とにかく練習練習に明け暮れる日々を送った。フレッチャーのスパルタ練習に応えようとアンドリューも徐々に狂気じみていく。

フレッチャーはライアンオースティンストウェルという別のドラマーを連れてきてアンドリューを刺激した。競争してドラムパートを勝ち取れというわけだ。もともとのドラムパート・カールネイトラングと3人のうち誰がフレッチャーの満足する演奏をすることができるか徹夜で叩かされたりもした。大会の日、会場に向けて乗っていたバスがパンク。レンタカーを借りて会場に向かう途中、衝突事故に遭ってしまうアンドリューだったが、彼の頭の中には大会のことしかない。全身血だらけで会場に向かい、ライアンをドラムにというフレッチャーに反抗して無理やりドラムセットに座ったが、意識は朦朧、手は思うように動かない。スティックさえもまともに持てずアンドリューはその場に倒れてしまう。

こりゃ完全にうつ状態だわな。と思っているとやはり数日後学校を退学になったアンドリューに弁護士が訪ねてくる。フレッチャーの元教え子が最近自殺した件で、遺族はフレッチャーを訴えない代わりにもう二度と同じようなことが起こらないようにしてほしいと願っている、と。つまり、アンドリューにフレッチャーを告発させようというのだ。

学校をやめてバイト生活をしていたアンドリューはふと町でジャズバーの前にスペシャルゲスト・フレッチャーと書いてあるのを見つけ思わず入っていく。彼の演奏を見て帰ろうとしたアンドリューだったが、フレッチャーに見つけられてしまう。「アンドリューだろ。どうしてた?」とまたあの優しい顔で近づいてくるフレッチャー。「俺も学校を辞めたんだよ。昔の学生がどうやら密告したらしくてね。俺の指導に行き過ぎがあったってことらしいよ」なんて近況を話すフレッチャー。彼のスパルタ指導についての持論を初めて聞かされたアンドリューだったが、「それで潰す才能もあるかも。やっぱり越えてはいけない一線はあるのでは?」と反論するがフレッチャーには納得してもらえなかった。

「いまはプロのバンドを率いてるんだ。ドラムが気に入らなくてね。俺のバンドに来ないか?」アンドリューをあんなに酷い目に遭わせたフレッチャーでもやはり音楽の才能は認めてくれているんだ。そう思い嬉しくて参加することにするアンドリューだったが、これは実は甘いワナだった!!!

この話、どうオチをつけるつもりなんだろう?スパルタ教師だったけど、やっぱりいい人だったみたいなありきたりの話でまとめるのかなぁ?と考えつつ見ていたワタクシはまさかまさかあれがフレッチャーのワナだなんてみじんも考えなかった。映画のCMで「ラスト9分19秒、歴史が塗りかえらる」となっていたのでラストに何か起こるんだろうとは思ってはいたけど…

演奏前バンドのメンバーを集めて話すフレッチャー。音楽院にいたときよりずっと穏やかな表情だ。「君たちにとってチャンスの演奏会だ。スカウトがたくさん来ている。スカウトは一度見た人を忘れない。一度失敗してしまえばキャリアは終わってしまう」

このセリフがどんな伏線になっているかも知らず漫然と聞いていたワタクシ。まさかここからすでにフレッチャーの復讐の幕が上がっていたとは。

「密告したの、お前だろ」くぅーーーーーーー、この時のフレッチャーの顔。ぞっくぞくしたねー。J.K.シモンズ、すげぇわ。ラスト9分19秒。何が起こったのか。フレッチャーの復讐劇とアンドリューがそれにどう応えたのか。それは劇場でチェックしてみてください。


ソウルサーファー

2015-04-14 | シネマ さ行

ケーブルテレビで見ました。

舞台はハワイ。子どものころから父デニスクエイド、母ヘレンハントのと2人の兄の影響でサーフィンが日常にあったベサニーアナソフィアロブは当然のようにプロのサーファーを目指していた。ある日、幼馴染でサーフィン仲間のアラナロレインニコルソンと彼女の父と兄と一緒にサーフィンの練習に出かけたベサニーはサメに襲われ左腕を付け根から噛みちぎられてしまう。

奇跡的に命は助かったベサニーだったが、片腕での慣れない生活が始まり戸惑いを覚える。サメに襲われたが生き残った少女ということでマスコミにも注目され、苛立ちは日に日に募って行った。ハワイの海でサメに襲われるってそんなに珍しいことじゃないのかなぁと思っていたんだけど、あんなにマスコミが押し寄せてくるっていうことは数としては少ないものなのかな。

しかしベサニーはサーフィンで大会に復帰することを目標にし練習を始める。片腕を失ってもベサニーにはサーフィンをやめるという選択肢はまったくない様子だったのも、片腕を失ってから初めての練習ですでにボードに立つことができたっていうのもすごいなぁと思いました。元々地区大会に出ることができるほどの実力者でスポンサーもつくほどだったわけだけど、それでもあんなふうにすぐできるようになるなんて思わなかった。

練習を積み復帰戦に臨んだベサニーだったが、大会では波に飲まれて浮上することができず、レスキューに助けられてしまう。やはり片腕で大会に出るなんて無茶だったのか…

落ち込むベサニーにはっぱをかけようとする父といまはそっとしておこうという母の意見が分かれる。父はベサニーに困難から逃げて欲しくないと思っていたし、母は彼女の人生にはサーフィン以外にも大切なことはたくさんあり、サーフィンだけの人生を送らせるのはイヤだと考えていた。両親どちらとも娘のことを考えてのことだったし、どちらの意見が正しいというわけではなく、どちらも親として愛があるからこその考えだと思いました。

ベサニーは少しの間サーフィンから離れて津波の被害に遭ったタイのプーケット島へとボランティアへ向かう。そこで家族も希望も失い笑顔を失くした子どもたちにサーフィンを教えることによって、自分が忘れていたサーフィンへの気持ち、助かった命に感謝すること、そして、障害を負った自分が人々に与えることができる希望を見出すベサニー。ここはかなりベタな展開だけど、それでもやはり感動してしまいました。

帰国したベサニーはもう一度再起をかけてサーフィンの練習に励み始める。そこで父がこっそり作っていた片手でもうまくコントロールできる取っ手付きのサーフボードを出してきます。え?ルール的に大丈夫?と思ったんですが、ちゃんと映画の中でも「ボードに乗ってからの採点だから関係ないよ」とお父さんが言っています。そうなんだね。

大会では最高のサーフィンを見せたものの時間切れで惜しくも優勝を逃したベサニー。それでも、いまのベサニーは最高の波に乗れたという喜びに溢れていた。

アナソフィアロブは雑誌などで見ていたときはそんなに可愛い子じゃないなーと思っていたのだけど、映画で動いている彼女はとても可愛らしかった。そして何よりも片腕のCGがすごくて、最初はついそこばかり見てしまってしばらく物語に集中できなかったな。

ベサニーを襲ったサメを誰か(漁師さん?)が捕らえてきてお父さんがサーフボードの歯型と合わせて個体を確認するシーンがあるんだけど、人間ってやっぱりそこまでしないと気が済まないものなのかなぁと疑問に思いました。海はサメの住処で、そこにお邪魔してるのは人間のほうなのにね。

こういうベタな話は嫌いという方もいらっしゃるかと思いますが、なんせ本当の話ですのでね、やっぱりすごいなぁと思います。いま現在ベサニーはプロのサーファーとして活躍しているそうです。そしてベサニーがサーフィンだけではなくいまでもずっとボランティア活動などをしているというのも素晴らしいと思いました。最後に映る本物のベサニーと家族たちの映像がとてもキュートでした。


ザ・ホークス~ハワードヒューズを売った男

2015-03-30 | シネマ さ行

たいがい変な日本語題が多い中これは原題のまま「ザ・ホークス」カタカナだし音だけ聞くと普通の日本人なら the hawks と思わないかな?本当は the haox で、「タカ」ではなくて「だます」という意味を持つ単語。副題のハワードヒューズのほうはピンと来る人も多いかもしれない。レオナルドディカプリオが「アビエイター」という作品で演じた潔癖偏屈大富豪。

1970年代、冴えない作家のクリフォードアーヴィングリチャードギアは持ち込む本持ち込む本ボツにされ、思いついたのが当時隠遁生活を送っていた大富豪で超有名人のハワードヒューズの自伝を発表すること。しかも、自分だけが特別に本人と手紙のやりとりをして自伝を書くことを許されたと大嘘をついて、筆跡を真似て偽造した自筆の手紙を持参して出版社に売り込む。

筆跡鑑定までした出版社はクリフォードの言うことを信じて契約を結ぶ。出版社が払う大金をエサに親友ディックサスキンドアルフレッドモリナにハワードヒューズの調査を手伝わせる。ハワードヒューズと知り合いであることや彼から自伝を依頼されたことなどは全部真っ赤な嘘だったが、書く内容としてはきちんと書くつもりだったらしくクリフォードとディックはハワードの人生について調べて回る。

実際にあった詐欺事件を描いているのですが、原作はこのクリフォードアーヴィング本人が事の顛末を本にしたものらしく、ハワードヒューズの自伝のほうは最終的に嘘だとばれてしまったけれど、自分が起こした詐欺事件を本にして儲けたわけですね。どこまでもちゃっかりしています。

映画のほうは、クリフォードアーヴィングが周囲に疑われるたびにうまく切り抜けるさまや、彼がハワードヒューズに扮してテープレコーダーに声を吹き込んだりするシーン、そして、だんだんと自分の嘘に溺れていったクリフォードが何が本当で何が嘘なのかの境があいまいになっていくさまが描かれています。見ているこちらもどこからがクリフォードの幻想でどこからが実際にあったことなのか分からなくなってきて頭がこんがらがります。

人は小さな嘘よりも大きな嘘のほうがかえって信じやすいと言いますが、彼の嘘はまさにとてつもなく大きな嘘。いくらハワードヒューズが隠遁生活を送っているからといって自分が許可していない自伝が勝手に出たら、そりゃどこかからそんなウワサを聞きつけてバレるだろうことくらいは予想できたと思うんですけどねぇ。出版にこぎつけるまではいいけど、その後はどうしようと考えていたんでしょうか?そこまで考えないからあんな嘘つけるんでしょうけど。

クリフォード宛に送られてきたハワードヒューズとニクソンの関係が示された文書の入った段ボールは誰から送られてきたのだろう?ヒューズがニクソンに対して送ったワイロについての記述があったもので、ニクソンのことがだんだん疎ましくなってきていたヒューズ本人からのものだとクリフォードは考え、それを本に書くと意気込んでいたけれど、実際のとこあれはどこから来たものだったのかワタクシには分かりませんでした。

それが表沙汰になるのを恐れてニクソンが民主党がその本を手にしているかどうか知るためにかのウォーターゲート盗聴事件を起こしたというんだけど、本当?そこんとこが本当なのかどうかよく分からない。

このニヤついたクリフォードアーヴィングをリチャードギアが好演しています。彼って演技賞とかでノミネートとかされることはないけど、決して下手な役者さんではないですよね。熱演タイプではないけど。こういう役似合います。

あんまり見る機会がないかもしれませんが、ケーブルテレビなどで放映があればぜひ。


水曜日のエミリア

2015-03-10 | シネマ さ行

ニューヨークの弁護士事務所で働き始めた駆け出し弁護士のエミリアナタリーポートマンは、事務所のパートナーの既婚男性ジャックスコットコーエンに一目惚れ。妻子があることは分かっていたが出張先で誘惑することに成功。不倫関係を続けていたがエミリアが妊娠したのを機にジャックは妻で有名な不妊クリニックの産婦人科医キャロリンリサクードローと離婚。10歳の連れ子ウィリアムチャーリーターハンと一緒に暮らすことになる。

エミリアは出産するが生後3日で赤ん坊イザベルは亡くなってしまう。エミリアは悲しみを抱えつつも10歳のウィリアムとの生活をなんとかうまく続けようとしていた。

ジャックの前妻キャロリンっちゅうのが、所謂今時のエリートママで、子供にジャンクフードは食べさせないとか、映画は一週間に1本だけとか色々とルールを作ってウィリアムに守らせている。ウィリアムも頭の良い少しマセた子供でママの言うことにそんなに不満はない様子。エミリアは結構普通の感覚を持った人なのでそういうママのルールをアホらしいと思っていてウィリアムにルールを破らせたりするが、それが普通の子供にならウケたんだろうけど、ウィリアムはママが正しいと信じているのでエミリアがルールを破ったよとチクられたりして分が悪い。

ウィリアムはママの入れ知恵なのか何なのか、亡くなった赤ちゃんの用品はもういらないからネットで売ればいいとか、ユダヤの戒律では人は生まれてから8日経たないと人ではないからイザベルは人じゃなかったんだって。お葬式も必要なかったってママが言ってたよ、とかいちいちエミリアの気持ちを逆なでするようなことを言ってくる。こういうことを言うガキはしばきまわしてやったほうがいいんじゃないの?って思うんだけど、なんせエミリアは継母だし、その場で叱っても後で父親にまたチクられて注意されたりしてしまう。

略奪女はこれくらいバチが当たってもいいんじゃないの?と思う人もいるだろう。ワタクシはあまりそういうふうには感じないタイプなので必要以上に詠美リアに反感を持たずに見ることができました。前妻は当然エミリアのことを恨んでいるわけで、まぁ辛く当たってくるのはある程度仕方ないかもしれないけど、この旦那がちゃんとエミリアの味方をしないところにイライラしたなぁ。

と言ってエミリアがすごく性格の良いコかというと特にそういうわけではなくて、友人たちに毒舌で愚痴をこぼしたり、確執がある父親のことは完全に拒絶していたりと、結構どこにでもいそうな人っていうのが逆にワタクシは好感が持てました。まぁハーバード出の弁護士なのでどこにでもいるってわけじゃないけど。「ブラックスワン」のような分かりやすい派手な役よりもこういう普通にいそうな女性を演じるほうが難しい面があると思うのですが、やはりナタリーポートマンって上手だなと思わせる演技でした。優等生的なイメージのあるナタリーポートマンが本音トークをする(時にはちょっと言い過ぎる)女性を演じていたのが好印象でした。

どうしてもワタクシは生後3日の赤ん坊を亡くした女性という視点でエミリアを見てしまって、彼女に同情心を強く感じてしまった。映画の主題はそこではなかったのかもしれませんが。彼女が赤ん坊を抱いているうちに寝てしまって窒息させたんじゃないかと罪悪感を持っていることを告白した時のジャックの態度は酷いと思ったのですが、自分もショックを受けたらあんな態度になってしまうものなのでしょうか?彼女のことかばってやる気持ちにはなれないものなのかな。

ウィリアムもエミリアのおかげで少しずつ教育ママゴンの呪縛が解かれていって最後には「エミリアは僕の妹のお母さんだから永遠に家族だよ」と言ってくれるまでになってベタだけど感動してしまった。前妻さんも再婚したし、一度は別れたジャックともやり直すことになってちょっと都合が良いハッピーエンドになっていました。ジャックとはやり直さないというシナリオでも良かった気はしますが、どっちでもまぁ悪くはないかな。


シェフ~三ツ星フードトラック始めました

2015-03-05 | シネマ さ行

「スウィンガーズ」のジョンファブローは「アイアンマン」などでいつの間にかビッグバジェットな監督になっていて、もう「スウィンガーズ」の人だってことを忘れかけていた今日この頃。彼が非常にパーソナルな低予算作品で帰って来た。

一流シェフのカールキャスパー(ファブロー)は有名料理ブロガー・ラムジーオリヴァープラットが店に来ると大張り切り。いつもの料理をやめて独創的な料理を作ろうと計画していたが、レストランのオーナー・リーバダスティンホフマンに創造性あふれる突飛な料理は作らずに昔からそのレストランで出している料理を作れと言われ仕方なくいつもの料理をラムジーに出す。

翌日のラムジーのブログでこき下ろされたカールは、ツイッターでラムジーに暴言を吐きケンカを売ってしまう。ツイッターの使い方をよく知らず、メールのようにラムジーだけにメッセージを送ったつもりだったカールだが、それは全世界に発信されていて、カールのアカウントは大炎上。そこでリベンジマッチを申し込んだカールだったが、結局リーバにまたもや独創的な料理を出すことに反対され店をやめてしまう。

かねてから思い通りにならない店で働くより自分でフードトラックを出したほうが良いと元妻イネスソフィアベルガラに言われていたカールはこれを機にフードトラックを出すことに。元部下のマーティンジョンレグイザモは速攻で店をやめて手伝いに来てくれ、夏休み中の息子パーシーエムジェイアンソニーと一緒に里帰り先のマイアミからLAまでキューバンサンドイッチ他を売りながらフードトラックで帰ってくる。

このフードトラックを始めるまでのくだりがちょいと長い気がしたのと、元妻イネスがどうしてやたらとフードトラックを薦めていたのかっていうのがちょっと分からなかったってとこが前半引っかかった部分。あそこまで一流のシェフにフードトラックなんか普通薦めるかな?あと元妻の元夫にロバートダウニーJr.が出ていて「アイアンマン」の付き合いで出たことは明らかなんだけど、この元夫がなんだか妙な奴で、と言ってがははと笑えるシーンでもなく、なんか意味不明だった。

いったんフードトラックを始めてしまえばこっちのもの。待ってましたよ、この展開。息子パーシーがさすが現代っ子、ツイッターを駆使してパパのフードトラックを宣伝しまくって行く先々で大盛況。またねぇ、カールの作るキューバンサンドイッチやらなんやらが美味しそうなんだよねー。映像的にもツイッターのあの小さい青い鳥がピヨピヨ~と飛んでいったりしてとても可愛らしいし、マイアミ、ニューオリンズ、テキサスとロードムービーとしての魅力もたっぷり。

この作品の魅力はその料理と何と言っても息子のパーシー。両親が離婚してパパと過ごす時間が少ないことに不満を覚えている彼が夏休み中パパとフードトラックで過ごせるとなって大喜び。小さい体でパパの料理を一所懸命手伝ってツイッターで宣伝までして可愛いのなんの。ビジュアル的にもお目目くりくりで成長したらハンサムな青年になりそうな雰囲気。彼とパパとの関係がとても良かったです。

部下であり、カールの親友でもあるマーティンを演じたジョンレグイザモも素晴らしかったですね。ぶっちゃけ、彼がいなかったらカールだけではフードトラックは成功しなかったんじゃないかとさえ思えるほど、頑張ってくれていました。ラテン料理のトラックに彼は絶対に必要な人材でした。

最後、フードトラックで成功して、批評家のラムジーとも和解し、和解どころか仕事のパートナーにまでなって彼が持っている店のシェフになるカール。これって当然大成功のハッピーエンドってことなんだろうけど、ワタクシはなんか「あ、結局やっぱお店がいいのね。フードトラックじゃダメなのね」と思ってしまった部分はありました。ひねくれてますかね?

ラテンミュージックが中心のサントラもノリノリで最後の再婚ウェディングパーティも可愛らしかったです。

あ~キューバンサンドイッチ食べてみたいー。(って多分みんな思ったな)


サプライズ

2015-02-06 | シネマ さ行

予告編を見て面白そうだったのでレンタルしてみました。

ポールロブモランと母バーバラクランプトンの結婚35周年を祝うために集まった兄弟たち。長男ドレイクジョースワンバーグとその妻、次男クリスピアンAJ.ボーウェンとその彼女エリンジャーニヴィンソン、三男フィリックスニコラストゥッチとその彼女ジーウェンディグレン、長女エイミーエイミーサイメッツとその彼氏タリクタイウェストが両親の別荘にやってくる。

長男ドレイクはなんだかイヤな奴で、次男は頑張ってるけどなんか大学の仕事がうまくいっていないらしい(でも彼女可愛いからいーじゃん)、三男はチンピラ風で彼女もそんな感じ。

両親はどうやらお金持ちっぽい。お金持ちだけど良い人なのは珍しいとクリスピアンだかエリンだかが言っていたけど、本当に良い人っぽかった。長男坊と次男坊は仲が悪いみたいで、ディナーの席でも言い合いを始めてしまう。と、そのとき外に誰かがいると窓をほうに行ったタリク。そして窓ガラスがぱりんと割れてタリクが倒れた。一瞬何が起こったか分からない一同。タリクを見ると矢が刺さっている。

ぎゃーーーーーー。

なごやかな(いや、なごやかじゃなかったか)ディナーの席が悪夢に変わる。

次々に撃ち込まれる矢。三男カップルは早々にリビングから避難。パニックの中、なぜか一人冷静にみんなに指示を出している人がいる。窓から離れて。イスを盾にしてこの部屋から出るのよ。なんて。ん?このコはなんだ?可愛い顔して随分冷静だなぁ。次男の彼女エリンである。彼女はソフィーマルソーみたいな可愛らしい顔をして、なんだかすごく頼りがいがある。

全員をリビングから出したあともエリンは、ケガ人に対して的確に手当し、この状況を分析している。この状況になってもまだ兄弟げんかを続ける兄たちに呆れたエイミーは自分が助けを呼びに行くと言う。外に襲撃犯たちがいるが、車まで走って行けば大丈夫。廊下からダッシュで出ていくエイミーを待っていたのは1本のピアノ線だった。首をぱっくり切られどくどく血を流すエイミー。用意周到に罠を仕掛けている犯人たちへの恐怖が増す。

そうこうしているうちに犯人たちは家の中に侵入してきたらしい。ヒツジ、キツネ、トラのマスクをかぶった男たちが家族を襲う。奴らの目的はなんなのか?そしてエリンは何者なのか?

エイミーの首がすっぱり切れるまでは結構衝撃だったんだけど、ここからはちょっとだらっとした展開になる。こういう状況なのにパニックになったお母さんを一人っきりで2階に寝かせたりとか、他の人たちもやたらと別行動を取っていて、んなわけねぇだろー、と思った場面も多かった。

まぁそんなツメの甘さもありますが、実はサバイバルキャンプで育ったというエリンがとにかく強い。体力的に強いだけではなくてキャンプで培った生き残りの知恵がすごくて、そこらへんにあるものを使って色々と武器や罠を作っていく。エリンが作った板に釘を打ちつけた罠を犯人が踏んじゃって「痛いよー痛いよー」なんて大騒ぎするところは笑ってしまった。

このエリンが犯人を殺すときに、これでもかというくらい殴ってもうすでに死んでいるのに殴り続けて三男坊カップルは引いちゃってたけど、だいたいこういうスリラー系映画では殺したと思った犯人が実は死んでいなくてまた反撃してくるっていうパターンが多いから、ここまでやっちゃうのは本当に珍しい。これもサバイバルキャンプで教わったのかな。ミキサーを頭に押し付けられて殺されたやつが一番すごかったな。エリンのオーバーキルっぷりにすっきりしたと言っては悪趣味ですが、実際そうでした。

キツネたちはこの一家に来る前にご近所さんを2人殺していて、それは多分無差別殺人に見せかけるための小細工だったんだろうけど、実は三男坊カップルの金目当ての犯行だとバレちゃう。ってか、なんかこんな土壇場になって実行犯グループともめたりして、実行犯グループも見た目ほどプロ集団ってわけじゃなかったのが、なんだかマヌケだった。助けを呼びに行くと言ったままずっと帰ってこなかったクリスピアンも当然怪しいってのはある程度予想がつきましたね。

途中でエリンが玄関ドアに仕掛けた斧に誰が殺されるのかっていうのがずっと気になっていましたが、まさか最後に入ってきた警官に刺さるとは。かわいそうな警官さん。

こういうスリラーものらしく突っ込みたい部分は結構ありますが、エリンのサバイバル術を楽しめたのでヨシとします。

オマケサバイバルキャンプというのは終末論者が集まって、終末に備えて日々を暮らしている集団のことです。


ジャッジ~裁かれる判事

2015-01-27 | シネマ さ行

ここのところ「シャーロックホームズ」「アイアンマン」「アベンジャーズ」とアクションものでしか顔を見られなくなっていたロバートダウニーJr.のドラマが久しぶりに見られるということで楽しみにしていました。共演がロバードデュヴァルということでなおさら期待が高まります。

シカゴで働く金持ち相手の弁護士ハンクパーマー(ダウニーJr.)のところに母親の訃報が届き故郷インディアナへ帰る。絶縁状態の父ジョセフ(デュヴァル)との再会は予想していた通り苦々しいものだった。ゆっくりしていくように言う兄グレンヴィンセントドノフリオや弟デイルジェレミーストロングの言葉を振り切り早々にシカゴに帰る飛行機に乗り込むハンクだったが、父がひき逃げ容疑で逮捕されたというグレンからの電話を受け実家に戻る。

故郷の町で42年間判事として勤めてきた父のこと、もしひき逃げをしたとしたら、母の亡くなったショックでお酒を飲み、飲酒運転してしまった結果だろうと考えるハンクだったが、ひき逃げの相手が過去に父が甘い刑罰しか与えなかったために出所後少女を殺した犯人だったことを知り、しかも父が何も覚えていないと言い張ることからハンクは真相をなんとか突き止めようとする。

映画のポスターが「父は犯人なのか」というコピーだったので、もっと法廷での丁々発止が見られると思っていたのですが、それよりもハンクと父、ハンクと故郷の町、といったようなドラマ要素のほうが強かったのが、少し期待とずれてしまいました。

ロバートダウニーJr.はこういう優秀だけど少しちゃらんぽらんでイヤな奴でもどこかチャーミングみたいな役が十八番と言ってもいいかもしれませんね。ハンクと父がどうしてお互いに嫌い合っているのかというのが、少しずつ明らかになっていくのだけど、それと事件の真相が明らかになっていくのが交互に出てきてちょっと忙しかった。最終的には少女を殺した犯人に最初甘い判決を下したのは、不良だった次男のハンクと重なったからという父の愛とリンクすることになるシーンがあまりにもさらっとし過ぎていてちょっと見逃しそうになってしまった。

故郷に帰ったハンクは元カノのサマンサヴェラファーミガと再会。2人のシーンもちょくちょくあって作品の息抜き的にはなっているんだけど、ハンクは妻と離婚係争中だし、娘もインディアナに来てるし、お父さんはひき逃げ犯として裁かれてる最中ってのに、2人でイチャイチャしている場合なのか?と後から考えると思う。2人のシーンはクスクス笑えるところも多くて嫌いではなかったのだけど。

お父さんは判事としてこの町を守ってきた自負があり、自分のガン治療のせいで時々記憶があやふやになったりすることを公表すると近年の自分の判決に疑いが生じることを恐れ、ひき逃げの真相を覚えていないということを隠したかったというのがこの裁判のポイントだったらしい。最終的には裁判では真実を述べるべきという自分の信念に立ち返って自らも真実を述べることにする。

ワタクシが勝手に丁々発止の裁判物を期待してしまっていたので、ハートウォーミングな物語にちょっと肩すかしを食ったのですが、そういう先入観なしにご覧になった方にはとても高評価だったようです。確かに物語としてはうまくできていると思うんですが。

父との確執の雪解けは素直に良かったと感じましたが、ちょっとそこまでの道のりがまどろっこしかったような気はします。ありがちな感じがしたのも残念でした。彼が自分自身を振り返り妻サラランカスターとの関係も見直すというほのめかしがあっても良かったかなぁと思いました。

最後にお父さんが亡くなった時、裁判所に半旗が掲げられていたのには、服役までした人でしたが、やはり町の人たちは立派な判事だと認めていたんだなと感動しました。


二郎は鮨の夢を見る

2015-01-21 | シネマ さ行

この作品が公開された時点で5年連続ミシュランの三ツ星を獲っていた「すきやばし次郎」の店主・小野二郎さんとその息子たち、弟子たちにアメリカ人のデイヴォッドゲルブ監督が迫るドキュメンタリー。現在では8年連続ミシュラン三ツ星を獲得している。

ドキュメンタリー作品なので物語があるわけでなく、淡々と二郎さん本人や息子さんたちへのインタビューを綴って行き、仕入れ、下ごしらえ、鮨を握る姿などを映しだしていくのだけど、全体がクラッシック音楽で彩られており、二郎さんの握る鮨や弟子たちが下ごしらえをする姿などと非常にマッチしていて美しい映像となっている。

二郎さん自身は大正14年生まれで幼少のころから丁稚奉公に出され、戦争にも行き、80歳になる現在でもカウンターに立ち鮨を握っているそうだ。銀座のすきやばし次郎本店では現在では長男の禎一さんが中心になっているようだけれど、それでもまだ息子に譲ったわけではなさそうだった。六本木ヒルズには次男の隆士さんが独立しているヒルズ店があり、こちらもミシュランの二つ星を獲得しているそうだ。

鮨職人と聞けば頑固でイヤなオヤジだったりするのかなぁと思っていたのだけど、二郎さんは全然そういうふうではなく、もちろん仕事に関してはとても厳しいのだと思うけど、話をしているのを聞いていると柔らかい雰囲気でユーモアも感じさせるところもあったのが少し意外だった。そして、ここまで何年も何年も鮨職人をやっていながら美味しい鮨を作るにはどうしたらできるかというのをいまだに夢に見るというのだからそれはそれはもの凄い職人気質なんだろう。そういう姿勢で鮨を作っているからこそ、めんどくさい作業を経て下ごしらえをするようになり、自分が下働きの時より今の人のほうが大変だよと言っていたのが印象的だった。自分がどんなに苦労をしたかということを強調する老人が多い中さらっとそういうことが言えてしまう二郎さんは偉大だと感じた。

息子さん2人も同じような雰囲気を持っていて本店の店主である禎一さんのほうがインタビューが多かったのだけど、鮨職人になっていなかったらレーサーになりたかったと言い、いまでもスポーツカーに乗っているという意外な素顔も見せてくれていた。

インタビューも興味深かったのだけど、クラシック音楽をバックに映し出される海苔を炙ったり、すし飯をしゃもじで切ったり、玉子焼きを焼いたり、実際に寿司を握ったりするひとつひとつの職人さんたちの姿がしびれるくらいカッコ良かった。

お弟子さんが10年修行して初めて玉子焼きを焼かせてもらい、二郎さんにOKをもらうまでのエピソードがあった。洋食でもはやり最初は玉子焼きですよね。玉子焼きって奥が深いんだなぁ。

禎一さんが築地に仕入れに行くシーンが何度かあるんだけど、当然良いものを見極める目は持っているんだろうけど、「餅は餅屋」とばかりにまぐろはまくろの専門家、たこはたこの専門家が選ぶ目を信じていると話していたことも意外だった。鮨職人さんてネタに関してもすべて自分の目が正しいと信じて疑わないのかなと勝手なイメージを持っていたから。すきやばし次郎に下ろしている築地の問屋さんたちはこれほどの鮨職人さんから全幅の信頼を寄せられるだけの目利きなんだろうけど、それでもそこに絶対の信頼関係が成立しているということがとても美しい関係に思えた。

その日の仕入れで良いものが出てくるんだろうけど、玉子焼きとかかんぴょう巻きとか庶民的なものも出てくるというのも驚いた。きっとすべてが調和された順序で出てくるんだろうなぁ。そして、1貫目を食べたお客さんの手を見て、右利きか左利きかを判断し2貫目からは利き手に合わせた方向に鮨が出てくるというのだから、そういう細かいところにまで目が届く二郎さんはやっぱりすごいんだな。

料理評論家の山本益博さんが一人3万円から、おまかせで出てくる鮨20貫を次々に食べ早い人だと15分で終わってしまうと話していた。それでもみながその値段に納得して帰るというのだから。あぁ、いつか行ってみたい。

オマケレビューを書いて初めて気が付いたのだけど、どうして小野「二郎」さんなのにすきやばし「次郎」なんだろ?


戦場カメラマン~真実の証明

2015-01-14 | シネマ さ行

1988年のクルディスタン。イラク軍との紛争が続く地域へイギリスから戦場カメラマンのマークコリンファレルと友人のデイヴィッドジェイミーシーヴェスが向かう。

クルド人と共に行動し、様々な前線の写真を撮る2人。激しい戦闘の後、さらに激しい前線へと向かう部隊について行こうとするマークだったが、デイヴィッドは国に残してきた妻ケリーライリーが身重なこともあり、帰国を望んだ。砂漠の真ん中で口論をする2人。マークはさらに前線へと向かう道を選び、デイヴィッドは帰国する道を選ぶ。

気が付くとマークは重傷を負い、現地のクルド人医師の治療所で眠っていた。以前そのクルド人医師の元に運ばれてくる兵士たちの取材をしたことがあったマークは医師が運ばれてくる患者のトリアージを行い、手遅れの札を置いた患者たちを外に運び出して自らの手で拳銃で安楽死させる姿を目撃していたので自分の上に黄色いまだ治療できるという印の札を置かれたのを見てほっとする。このトリアージのシーンに関して安楽死させるのを他の兵士にさせるのではなく医師自身が行っているところに医師の覚悟と責任を感じた。

治療所で静養したあと妻パスベガの元に帰るマークだったが、先に帰国しているはずのデイヴィッドはまだ帰っていなかった。

現地の赤十字などに問い合わせをしながらデイヴィッドを探していた矢先、自宅で突然倒れたマークは病院に運ばれ頭に爆弾の破片が残っていたことを知らされる。破片は無事取り出され身体的にには問題のなくなったマークだったが、精神的には立ち直っておらず、妻はカウンセラーの祖父クリストファーリーにマークのカウンセリングを頼む。

この時点で観客はデイヴィッドの行方を知らないばかりか、なぜマークがこんな重傷を負ったのかも詳細は知らない。クルド人部隊と一緒に前線へ向かったので、そこで爆弾に当たったのかなぁと勝手に想像していたのだが、カウンセリングの結果マークから思いもよらない真実が語られた。

帰国を望むデイヴィッドと砂漠の真ん中で口論になり、別々の道を行ったと思われたマークだったが、砂漠の中を町へと戻るデイヴィッドを一人放っておけず、結局自分も前線に行くのはあきらめデイヴィッドと共に帰ることにした。2人で町に戻るところを爆撃に遭いデイヴィッドだけが命を落としてしまったということだった。

見ていてそれを予想できた人も多かったと思うのだけど、ワタクシはそういうことを想像せずに見てしまっていたので、少しびっくりというか、あ~そういうことか、、、とそれまでのマークのいまいち煮え切らない行動がすべて説明がついた。原題が「Triage」であるのも、クルド人医師の行為と、あの爆撃の場でデイヴィッドを助けたくてもどうにも助けられなかったマークの状況のことを言っているのかなと思う。

戦場カメラマンが主役ながら実際の戦闘シーンは少なく、尺にすれば帰国してからのほうがずっと長いと思うのだけど、それでも緊張感を持って見られる作品でした。コリンファレルの演技がなかなか良かった。


ジャージーボーイズ

2014-09-25 | シネマ さ行

試写会に行きました。クリントイーストウッド監督の作品が好きなので見に行くつもりでしたのでラッキーでした。

世代的にザ・フォーシーズンズと言われてもピンとは来ないのですが、「Shelly」「Big Girls Don't Cry」「Can't Take My Eyes Off Of You」(君の瞳に恋してる)と言われれば、あぁーと分かるくらいではある。

今回はブロードウェイミュージカルの映画化ということでイーストウッドとしてはめずらしいけれど、音楽に精通している彼のことだからジャンルとしては得意なものだったのかも。元のミュージカルがそうだからか、イーストウッドにしてはめずらしくくすくすと笑えるシーンが多いのも本作品の見どころと言えそう。

ザ・フォーシーズンズの最初の成り立ちから成功をおさめ栄光を勝ち取り解散し、という長い年月を同じキャストで表現しなければいけないので仕方のないことなんですが、初めフランキージョンロイドヤングが「16歳」と言われたときにはズコーッとなりました。「え?32歳の間違いじゃないの?」と思ったよ。もちろん、それは始めだけでだんだん年相応になっていくわけですが。

フランキーヴァリの実際の歌声ってぱっと頭に浮かばないんですが、ジョンロイドヤングみたいな声だったんでしょうかね…正直言って彼のあの声は、、、なんかへーんな声ーって思ってしまったのですが、、、失礼。ミュージカルのほうも彼が演じているようですし似てるんですかね。あれだけの高音を出せるのはすごいと思うけど、なんかあの鼻にかかったようなヘリウム吸った後のような声はちょっと苦手だった。。。

内容としてはよくあるグループの波乱万丈といいますか、大ヒットを飛ばしていても内情は、、、みたいな話ですね。グループのリーダーでマネージャー的な役割もしていたトミーデヴィートヴィンセントピアッツァが大借金作って仲間に迷惑かけているにも関わらずまったく悪いとも思ってなくて開き直って文句ばっか言ってた姿には一発殴ってやりたい気持ちになりました。その借金を全部自分が歌って返すと言ったフランキーはすごいなぁ。やっぱりその辺がジャージーボーイズたるゆえんなんですかね。メンバーの一人ニックロッシマイケルロメンダはそんなものクソくらえって辞めちゃったけど、心情的にはニックの気持ちが一番よく分かる。

映画ファン的にかなりツボだったのは、最後のメンバー・ボブゴーディオエリックバーゲンを紹介したのが若い頃のジョーペシだったってこと。ジョーペシを演じるジョセフルッソが結構彼の雰囲気を醸し出していて笑えた。あと彼らをバックアップしていたマフィアのジップデカルロクリストファーウォーケンがラストにみんなと一緒に踊るのを見られたのも映画ファン的にはおいしいところでした。

フランキーの娘がドラッグで死んでしまって、その時にボブがフランキーを元気づけようとプロデューサーのボブクリューマイクドイルと一緒に作った曲が「Can't Take My Eyes Off Of You」だったというエピソードに一番感動したのに、それはミュージカル版の創作で本当はこの曲がヒットしたのはフランキーの娘が死ぬずっと前のことだったみたい。それにはちょっとがっかりだったな。

上映時間が長めですが、音楽もたくさん、笑いもあるし飽きることなく見られると思います。でもこれアメリカではコケちゃったらしいんですよねー。古臭い曲のミュージカルだから敬遠されたんでしょうか。日本人は好きそうなお話だと思いますけどねー。特にザ・フォーシーズンズが青春だったという世代にはたまらないかも。


さよなら渓谷

2014-09-09 | シネマ さ行

公開時、集団レイプ事件の加害者と被害者が夫婦になっている話。と聞いて、は???と思ってまったく見る気がしなかったのだけど、今回ケーブルテレビで放映していたので見てみることにしました。

んんん…まぁ映画作品としては悪くないんではないでしょうか。この作品に出てくるこの加害者と被害者がなぜ一緒にいたのかという部分の説明はきちんとできていると思う。このお話の中の説明は完璧だと思う。ただどうしてもどこか割り切れない、もやもやする、という感想は残る。頭で理屈は分かっても心がついていかないとでも言おうか。そういう感じ。

この尾崎俊介大西信満とかなこ真木ようこの内縁の夫婦の過去は思わぬところから明るみに出る。彼らが住むぼろアパートの隣の家で幼児が母親に殺され母親が逮捕され、尾崎がこの母親と不倫関係にありその子どもを殺すよう教唆したのではないかという容疑がかかる。そこへ妻かなこが警察に夫はその子の母親と不倫関係にあったと証言したことで尾崎は連行される。この事件を調べていた記者・渡辺大森南朋は尾崎夫妻の過去へと調べを進めていく。

その過程で尾崎が大学時代、集団レイプの加害者として大学を中退しており、その被害者というのがかなこ(本名ではない)だったということが分かる。なぜレイプ事件の加害者と被害者が共に暮らしているのか。徐々に事件以来2人が歩んだ道が明かされていく。

かなこは事件以来、婚約しても事件を理由に破談にされ、その後結婚した相手からは事件を理由に暴力を受け、自殺未遂を2回していた。その後尾崎と再会。大学の先輩のコネで小さな証券会社に勤めていた尾崎は結婚まで考えていた女性がいたが、かなこと再会したことにより2人で堕ちていく道を選ぶ。かなこは尾崎に復讐のつもりで一緒にいたのだろうか。「私が死ぬことであなたの気が楽になるのなら生きてやる。あなたを殺してあなたが楽になるのなら私は絶対にあなたを殺さない」と言うかなこ。“一緒に不幸になる”それだけが2人が一緒にいられる条件だった。

渡辺の相棒記者鈴木杏が言った「尾崎といれば自分の過去を隠す必要がないからなのか」という一言だけはなるほどと思ったが、実際集団レイプ事件の被害者のPTSDがかなこのように消化されるというのはあまりにもファンタジーの世界のような気がしてならない。高校生だった自分を集団レイプした相手と夫婦として暮らし連日のようにセックスをしているという設定にはどうしても納得はいかなかった。それからいくら若かったとはいえ、女性を集団でレイプした男といまの尾崎の人物像があまりにもかけ離れていて、同じ人間だとは思えない。あんなことをする奴がこんな殊勝な男になるかなー?過去の尾崎と現在の尾崎の架け橋がまったくなくて納得いかない。

かなこが警察にウソをついて尾崎を逮捕させたのは、尾崎への復讐心かそれとも「死ねと言われれば死ぬから」とまで言う尾崎を試したのか。実際尾崎は妻の証言は正しいと警察でウソの自白をしている。それはかなこからされることは何でも受け入れるという証明だったのだろう。そして、いったんその証明がされてしまえば、かなこは満足したのか証言を撤回している。警察もいい迷惑だね。

警察に釈放されたあと、テーブルを買い棚を買い気持ちも新たに生活をと思った矢先、かなこは尾崎の前から失踪する。“2人で不幸になる”それだけが一緒にいられる条件だったので、ふと2人で幸せになりそうになってしまったのからなのか。それまでにはかなこも尾崎に魅かれていただろうし、かなこが幸せになるのはいいとしても尾崎まで幸せになってしまいそうだった。それはかなことしてはできない相談だったというわけか。それでもいつか必ずかなこを探し出しますよという尾崎。

最後に渡辺が尾崎に聞く。「かなこさんに出会わなかった人生と出会った人生のどちらを選びますか?」と。映画は尾崎の表情のアップで終わり、尾崎はその質問には答えないのだけど、おそらく「かなこと会った人生を選ぶ」と考えていそうで虫唾が走った。だってかなこを探し出そうとしている男なんだもの。そりゃ会った人生を選ぶでしょう。でもさ、あなたにさえ出会わなければかなこはあんな目には遭わなかったんだからさ、本気でかなこのことを思うなら自分とかなこが会わなかったほうが良かったと思うはずでしょう。でも、結局尾崎は自分の幸せを考えている。そんな気がして吐き気がした。しかも自分がかなこを探し出すことがかなこの幸せとか思っていそう。っていうのはワタクシの勝手な妄想ですがね。。。ここの解釈はそれぞれにゆだねられているのでしょう。ただ尾崎を幸せにしてしまいそうだから出て行ったかなこには溜飲が下がりました。この後かなこには良い人生があってほしい。

この作品で日本アカデミー賞主演女優賞を取った真木よう子ですが、どうなんでしょうね…彼女の演技はうまいのかどうかいまいち分かりません。激しいベッドシーンに挑んでいるという大胆さと演技力は別に関係ないと思うのでね。。。まぁがんばってるよねーとは思うけど。

読み返すと悪口しか書いていないですね。。。完全にフィクション、ファンタジー、として見るならばいいかなと思います。集団レイプの被害者がたとえ15年の時を経たとしてもその加害者と幸せになるなんて妄想爆発のお花畑もいいところだとはっきり言って思っています。でもこのブログでは過去の作品の場合は自分が面白くなかった作品は取り上げないことに決めています。この作品に関してはかなり評価が難しい。でもあくまでもお話として、映画としてはきちんと成り立っていると思うし見ていて色々と考えさせられるし悪くないと思います。見るときは精神的な覚悟が必要かと思います。


シュガーラッシュ

2014-08-28 | シネマ さ行

今年「アナと雪の女王」で大ヒットを飛ばしたディズニーの1作前の作品です。このブログに何度も書いているようにワタクシはディズニーファンなのですが、この作品は見に行きませんでした。ちまたの評判が良いのは知っていたのですが、ぱっと見のキャラクターにあまり魅かれなかったのです。それで、今回遅ればせながらレンタルで見ました。

やっぱり見に行けば良かったーーーー。やはりさすがディズニー!な作品でした。

舞台はゲームセンター。「フィックス・イット・フェリックス」という昭和のゲームの中の悪役ラルフジョンC.ライリーは30年間も悪役であることにうんざりしていた。ゲーム30周年のパーティーにも自分は呼ばれず主役のフェリックスジャックマクブレイヤーと他の登場人物だけで盛り上がっているところへ乗り込んでいき、自分だってヒーローのメダルを手にできる!と宣言。それができたら仲間に入れてやると他の登場人物と賭けをすることになってしまう。

最新ゲーム「ヒーローズデューティ」に入り込んだラルフは、そこでヒーローのメダルを手にするが、敵キャラであるサイバグの卵を孵化させてしまい幼虫と一緒に脱出ポッドで「シュガーラッシュ」というゲームの中に入ってしまう。そこはお菓子のレースゲーム。ラルフはヴェネロペサラシルバーマンというプログラムの不具合のせいでみんなから除け者にされている少女と出会う。ヴァネロペのレース出場のためにラルフのヒーローのメダルは使われてしまい、激怒するラルフだったが、ヴェネロペのペースに引き込まれ彼女がレースに出場する手伝いをするハメになる。

「ヒーローズデューティー」からはサイバグを退治するためにカルホーン軍曹ジェーンリンチが、「フィックス・イット・フェリックス」からはフェリックスがラルフを探して「シュガーラッシュ」の世界に来ており、2人は行動を共にすることに。

ゲームセンターの個々のゲームのキャラクターたちがどうやってそれぞれのゲームを行き来したり、交流したりするのか?と疑問だったのだけど、すべては電源タップでつながっていて、ゲームセンターが閉店するとそれぞれのキャラクターがタップを通ってひとつの共通の「ゲームセントラルステーション」で交流できるようになっていて、また開店時間になるとそれぞれのゲームに戻っていくという設定がすごくうまかったです。とにかく、ディズニーはまずこういう設定を作るのが非常にうまいですね。ゲームの悪役たちがグループセラピーで悩みを分かち合ってるところもアメリカ的で面白かった。

最新ゲームのキャラクターの解像度がめちゃくちゃきれいで30年物のラルフのいるゲームは動きが昔風だったりするところもいいですね。なぜかラルフとフェリックスは普通なんだけど…そして、やはりゲームが舞台ということで日本発祥のゲームがたくさん出てきて、これもまた楽しいですね。それも昭和な感じが。日本文化へのリスペクトなのか、「シュガーラッシュ」のゲーム内にビアードパパのキャラクターも登場します。「シュガーラッシュ」の世界にはお馴染みのお菓子もたくさん登場します。

ディズニーアニメの良さは設定が非常にうまく練られていることに加えて、やはりストーリーがしっかりしているところです。今回も悪役のラルフとなぜか同じゲームの仲間からつまはじきにされているヴァネロペというワケありの2人の友情が描かれていて涙なくしては見られないし、ヴァネロペがどうしてみんなから疎まれているのかというのも、過去をさかのぼってきちんと描かれておりすべてがうまく収まる物語となっています。まさかあいつがラスボスだったとはなぁ。ちゃんと伏線があったのに、ワタクシは全然気付かずに見ていて驚いちゃいました。

涙なくしては見られないなんてさらっと書いちゃいましたけど、本当なんですよ。このおっさんラルフと生意気少女ヴァネロペの友情が泣けるの。まさか泣けるとは思ってなくて油断して見ていたら気付いたら泣いちゃってました。

クライマックスで結構重要な役割を果たすサブストーリーに登場するカルホーン軍曹の声をジェーンリンチが演じているんですが、男どもを蹴散らす鬼軍曹に彼女の声がぴったりすぎて大ウケしました。まさか彼女がちんちくりんで解像度の低いフェリックスとくっつくとはねぇ。なんか嬉しい展開でした。

ラスボスの企みによって起こされていたヴァネロペの不具合も直り、悪役のラルフがいないとゲームは全然面白くないんだってことに他のキャラが気付いてくれたことでみんなとも仲良くできるようになり、それぞれのゲームの世界で幸せになったラルフとヴァネロペ。そして、閉店になればきっとゲームセントラルステーションで一緒に遊んでいるんだろうな。あぁ、なんかすでにもう一回見たくなってきた。


さよなら。いつかわかること

2014-07-31 | シネマ さ行

9.11後のイラク戦争に出兵している陸軍軍曹である妻。その帰りを待つ夫スタンレージョンキューザックと2人の娘。長女ハイディシエランオキーフは12歳。思春期の入り口に立ってはいるが優等生のようだ。次女ドーングレイシーベドナルジクは8歳。おしゃまだがまだまだ小さい子どもといった印象。一日のうち決まった時間にアラームをセットし、イラクにいるお母さんと同じ時間にお互いのことを想い合うと決めていた。

ある日の早朝、陸軍のメッセンジャーが一家を訪ねてきた。玄関に立つ軍人を見た途端スタンレーには全てが分かった。妻は戦死したのだ。

学校から戻った娘2人を大切な話があるとソファに座らせるスタンレー。いつものようにふざけ合う2人。スタンレーはとっさにご飯食べに行きたい人!と言ってしまう。突然の外食の誘いに大喜びのドーンと複雑な表情のハイディ。夕食のあとスタンレーはまたもや、これから一番したいことをしよう。何がいい?と2人に訪ねる。「魔法の庭に行きたい!」と即答するドーン。どうやら、うちから数泊の移動距離にある遊園地らしい。「バカね。行けるわけないじゃない」と冷めた目で言うハイディに対して「どうして?行けるさ」と答えるスタンレー。

学校も休んで仕事も休んでそのまま車で遠くの遊園地まで行こうという父親に幼いドーンは無邪気に喜んでいるが、ハイディはいぶかしげだ。この12歳のハイディの複雑な心情が絶妙だ。学校をサボって遊園地に行きたい気持ちがないわけではない。でもやっぱり学校を黙ってサボることも気になるし、お父さんの仕事のことだって気になる。もしかして、お父さん会社クビになったの?何があったの?と色々考える。

一方でスタンレーは娘たちに母の死を伝えなければいけないと思いながら、なかなか言い出すことができない。何度も出先から家に電話をかける。当然誰もいない家の電話は留守番電話になる。妻がメッセージを録音している留守番電話。「いま留守にしておりますので、メッセージをどうぞ」その妻の声を聞きたいがために何度も自宅に電話をかける。そして、まるでそこに彼女がいるように話しかけるスタンレー。これがもう涙なしでは見られない。

娘に母親の死をなかなか伝えられないお父さん。そういう構図で物語は進行するのだけど、ワタクシには彼が“お母さんのいる子供たち”という状態をできるだけ続けてやりたいと考えているように思えてとても胸が痛みました。お父さんが娘たちに「お母さんは死んだんだ」ということを伝えない限り彼女たちの中でお母さんはイラクで生きているわけです。どちらにしてもお母さんはその場にいないわけですが、「お母さんはイラクで生きている」という状態と「お母さんは死んでしまった」という状態ではもうまるで事情が違うわけで、でもこのまま「お母さんはイラクで生きている」という状態を続けようと思えば続けることができる。自分さえ黙っていれば。そして、その状態のままできるだけ楽しい経験を、おそらく彼女たちの心の中で「不幸」というものが一点もない状態で楽しい時間をできるだけ長く過ごしてほしい。そういうお父さんの行動に涙が止まりません。このお父さんのしていることはもしかしたら正しくはないかもしれません。でもそんな理屈は抜きに気持ちが震えました。

そして、この作品で描かれる家族像、父と娘像というものがとても自然で良かったと思います。お父さんも喋り方とかどこかぶっきらぼうだし、娘も反抗期なこともあってお互いにべたべたし過ぎてないところや、姉妹も仲は良いけどしょっちゅう小競り合いをしているところなんかもとても自然でした。

ジョンキューザックは年齢的にはお父さんなんだけど、あんまりお父さんの役柄のイメージのない役者さんなので、最初はちょっと違和感があったのですが、その違和感が突如娘と自分だけという家族にされてしまった父親の違和感となったからなのか徐々にしっくりきました。タバコに興味を示す思春期の娘に一緒に吸おうと誘ってこっそり咳き込んでいるところなんか、とても愛おしい不器用な父親像で良かったと思います。

昔であれば銃後を守るのはもっぱら女性の役目とされていたけれど、今の時代妻やお母さんが出兵して戦死したという家族も珍しくはなくなっているのだろう。そういった意味でもなかなかスポットが当たらないこういった家族に目を向けた貴重な作品であると思います。

オマケ音楽を担当しているのがあのクリントイーストウッドです。彼が音楽も得意なことは有名かと思います。胸に染み入る音楽です。


サードパーソン

2014-06-25 | シネマ さ行

好きな脚本家&監督ポールハギスの作品で、しかもその中でも秀逸な「クラッシュ」と似たような群像劇ということで見に行きました。

パリ

小説家マイケルリーアムニースンはパリのホテルに籠って執筆中だが、スランプに陥っている。

マイケルの愛人アンナオリヴィアワイルドはマイケルに会いにパリのホテルにやってくるが、別の部屋も取っていて、マイケルとは駆け引きばかり。もう一人ダニエルという恋人もパリに来ているようなのだが、、、

マイケルの妻エレインキムベイジンガーは、マイケルが不倫していることも承知しているが、マイケルと別れようとは思っていない様子。

ローマ

ケチな産業スパイのアメリカ人スコットエイドリアンブロディはバーで出会ったロマの女性を助けようと奔走する。

スコットがバーで出会ったロマの女性モニカモランアティアス。8歳の娘を売られそうになっておりお金を工面しているが、そのお金を何者かに盗まれてしまう。

ニューヨーク

子どもを自らの過失により死なせてしまいそうになったため面会権を奪われ元夫と裁判中の元女優ジュリアミラクニス。お金がなくホテルの客室清掃係になんとか就職する。

ジュリアの元夫で有名な画家のリックジェームズフランコ。息子と暮らしているがうまくなついてはくれていない様子。

ジュリアの弁護士テレサマリアベッロ。依頼人のジュリアが約束を破るなどするため愛想を尽かしそうになっている。

3つの場所で3組の男女の物語が語られる。誰が特に中心というわけではなく、平等に重きを置いて語られるところはまさに「クラッシュ」を彷彿とさせる。この3組の話がどこでどう交わっていくのか。それが気になりつつ、3つの物語の行方も気になる。

パリの不倫カップルは駆け引きばかりで、楽しくもあるけれど少しイライラもした。裸にバスローブで男の部屋を訪ねてきた女をバスローブだけ受け取って素っ裸で部屋に帰してしまう、などそれだけ見ていると面白いけど、その後本当にまったく何もなく済ませてしまうなんてよくやるなぁと逆に感心してしまう。男には妻が、女には他に恋人がという状況で素直になれない2人なのかと思いながら見ていたけど、どうやら事はそう単純ではなかったようだ。

ローマのモニカとその娘を必死に助けようとするスコットと彼の好意をはねつけながらも頼らざるを得ないモニカ。この2人が徐々に距離を近づけていくラブシーンはとても切なくてじーんと来て、なぜかちょっとうるっとさえきました。

ニューヨークのジュリアはとても悲しい。彼女は子どもとの面会権を得るための精神鑑定の面接にも遅れて行ってしまう。不可抗力だったとはいえ、「私のせいじゃないの」が口癖のように口をついて出てくる彼女を信用してくれる人はもういない。それでも無理やり会いに行った息子。その息子に「お父さんの世話をお願いね」と言い残したことで図らずも元夫の心を動かすことができた。

この3組の共通点は子どもだ。パリのマイケル、ローマのスコットはどうやら自分の不注意で幼い子供を亡くしてしまったようだし、それによって夫婦の絆も壊れてしまったらしい。モニカは子どもを失くす寸前で、ニューヨークのジュリアは不注意だったのか、故意だったのか子供を死なせてしまいそうになり親権を奪われている。

3つの物語は少しずつ交差しているように見える。ローマのスコットの元奥さんはニューヨークのジュリアの弁護士のテレサだし、マイケルとアンナが滞在しているホテルの客室清掃係がジュリアだったりする。

ん???

マイケルとアンナが滞在しているホテルの客室清掃係がジュリア???

この辺りからどうにも話がおかしいぞ、と。もっと前から気づいていた人はいたんだろうけど、ワタクシは初めてこの辺りでおかしいなと感じ始めました。ジュリアはニューヨークにいるはずで、マイケルとアンナが滞在しているのはパリのホテルのはず。。。

カタカタカタカタカタカタ、、、スランプの小説家マイケルは書き続ける。自分とアンナの関係を、実際に起こったことを、自分の創作を。実在の人物はマイケルと妻のエレインだけなのか。アンナは過去の愛人かと思ったけど、エレインのiPhoneに息子の写真が入っていたことを考えると息子を亡くしたのも最近の話か。

全編ポールハギスらしい切ないトーンで続き、極端に短いスパンで別々の物語へと飛ぶんだけど、その切り替わりが驚くほどにスムースで編集の腕の高さを感じる。色を印象的に使用しており、演出のトーンは一貫していながらも、各都市の印象をうまく出しておりこれだけの物語でありながら混乱はない。

役者陣の演技も素晴らしく、全体的な点数としては高評価をつけるところなんだけど、あのオチというのはちょっと禁じ手に近いような気もするんだよなぁ。ポールハギスだけにさらにすごいオチを期待してしまったというか。どこからどこまでが、っていうのはポールハギス自身も答えは用意していないと言っているようなので、それはそれで不満はないんだけどね。このモヤモヤした余韻、っていうか、余韻がモヤモヤしてるっていうのかな、それがこの作品の狙いなんだろうかという気もするし。ぶっちゃけよくは分かりません。

それぞれの人物に感情移入できるのに、なぜかマイケルにだけはいまいち感情移入できなかったのはこのオチが原因だったのかな。マイケルだけは観客が感情移入すべき「キャラクター」ではなかったから。

見終わったあとすぐに頭からもう一度見たくなるタイプの作品です。評価は両極端に別れているようですが、ワタクシは好きな作品でした。

オマケ1ロマという民族のことを少し知らないとどうしてモニカがあんな扱いを受けるのか分かりにくいと思うのでご存知ない方は調べてからご覧ください。

オマケ2モニカを演じたモランアティアスが川原亜矢子に似ているなぁと感じました。


ジョイフル♪ノイズ

2014-06-16 | シネマ さ行

ケーブルテレビで放映していました。DVDスルー作品かと思ったのですが、ミニシアター系で公開したようですね。クイーンラティファが結構好きなので見ることにしました。

不景気に悩むジョージア州の小さな町の教会のゴスペル隊。リーダーのバーニークリスクリストファーソンが急死し、後任にヴァイクイーンラティファが選ばれる。それが気に入らないバーニーの妻でゴスペル隊のメンバーであるGGドリーパートンとは対立してしまうが、ヴァイの娘でゴスペル隊のリードヴォーカルオリビアキキパーマーとGGの孫ランディジェレミージョーダンが急接近し…

このゴスペル隊はなかなかの実力を備えているのだけど、毎年ライバルのゴスペル隊に負けて全国大会には出場できていなかった。そこで、GGはヴァイの好きな伝統的な楽曲はやめて、いま風の楽曲とアレンジでいこうとランディにアレンジを任せるのだが、ヴァイはそれも気に入らなかった。

お話自体はまぁ大したことはないですね。ヴァイとGGの対立とかオリビアとランディの交際に反対のヴァイとか、ヴァイと夫マーカスジェシーLマーティンとのうまくいかない夫婦生活とか、そういう問題を盛り込みつつところどころにゴスペル隊の歌を挿入してって感じです。基本的にみんな良い人なので、安心して見られます。

クイーンラティファとドリーパートンが世代は違うものの、歌謡界の大物同士やり合うのですが、もうドリーパートンを出そうと思ったら、あの整形顔とブーブジョブをいじくるしかないわけですよ。ドリーパートンのキメキメの髪型もぐちゃぐちゃにしてやるー!とかクイーンラティファにしかできません。ゴスペル隊のローブも一人だけおっぱいのとこ絞って強調してるんだけど、それもちゃんとクイーンラティファが突っ込んでくれますから。あぁ、良かった。その辺突っ込まずにスルーされたらムズムズしますもん。それを突っ込ませてくれるドリーパートンはさすがの貫録です。

やはり歌は素晴らしかったです。クイーンラティファとドリーパートンはもちろんのこと、キキパーマーとジェレミージョーダンという若い2人の才能にすごく引き込まれました。特にジェレミージョーダンの歌声はパワフルでとても魅力がありますね。ゴスペル隊なので、歌う曲がすべて神とキリストを崇め奉るもので、無宗教なワタクシとしてはそれにはちょっと辟易とする部分もあるにはあるのですが、たいがい普通の曲でもhimをHimとみなして歌うだけでゴスペルソングになるものだなぁとちょっと感心しました。

歌以外のエピソード部分で良かったのはランディとオリビアの弟でアスペルガーのウォルターデクスターターデンの交流でした。オリビアとの交際には反対しているヴァイもウォルターに接するときのランディを見て、本当はランディが良い子だと分かってくれていたでしょう。

こういうコンペものの物語では、たいがいライバルが優勝したけど不正していて、その杯がこっちに回ってくるというパターンが多いですね。すんなり優勝ってするのはドラマチックじゃないからなんでしょうけど、あまりにもそういうパターンが多いので、何か別の良い展開がないもんかなぁと思いますがそれもなかなか難しいですかね。

ゴスペル隊の歌が素晴らしいので、それで☆ひとつ分足される部分があると思いますが、特に最後に大会で歌う曲が素晴らしいのでお好きな方はぜひご覧になってみてください。

オマケジェレミージョーダンのことは今回初めて知ったのですが、昔同姓同名のアイドルがいましたよね?覚えている方いらっしゃいますか?