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シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ズートピア

2016-04-26 | シネマ さ行

「アーロと少年」は見に行きたかったのですが、吹替え版しか公開されていなかったのであきらめました。この「ズートピア」ももしかして字幕版ないのかなぁと思っていたら、今回はあったので行ってきました。

いつもディズニー映画を楽しみにしているワタクシですが、今回は動物たちのお話で主役がウサギ、と聞いてさすがにこれって子供向け過ぎる内容じゃないの~?と思っていたので字幕版が用意されていたことが意外で、お、これは逆に期待できるかも?と思いました。

すべての動物が進化し、野生ではなくなり文明社会に住む世界。ズートピアと呼ばれる大都市でウサギ初の警察官になる夢を叶えたジュディホップスジニファーグッドウィンは希望を胸にズートピアに上京するが、“小さくて可愛い”ジュディに与えられた仕事は交通違反の切符切りでガッカリ。それでもジュディは切符切りの記録を作る意気込みで仕事に打ち込んだ。

そのころ、ズートピアでは原因不明の連続拉致事件が起きており、その被害者の妻オッタートン夫人(かわうそ)オクタヴィアスペンサーに勝手に彼女の夫を見つけることを約束してしまったジュディに、チーフのボゴ(水牛)イドリスエルバはジュディに2日だけ与え、見つからなければ警察を辞めろと言う。

切符を切っているときに知り合った詐欺師のニックワイルド(キツネ)ジェイソンベイトマンを他の容疑で逮捕しない代わりに捜査を手伝ってもらうことにしたジュディ。この2匹のコンビが事件の解決に駆けまわる。

まず色んな動物が共存するズートピアの設定が興味深い。この辺りはもうディズニーの真骨頂と言えると思うけど、それぞれの動物の特性をものすごくうまく活かして擬人化している。彼らは本当に人間のように暮らしていて服も普通に来ているのだけど、なぜか靴を履いていない。文明社会なのに靴履いてないなーと思っていたら、足のアップだけでどの動物か分かるようにわざと靴は履かせなかったんだって。さすが。

ジュディとニックの捜査は、本当に普通の犯罪ドラマ並み。でもその中にちょこちょこ笑えるシーンを挟んでくるのもうまい。中でも傑作は最速のフラッシュ(ナマケモノ)レイモンドS.パーシ。ディズニー史上ベスト3に入る名脇役キャラクターと言っても過言ではないと思います。とある車のナンバーから持ち主を割り出すためにジュディとニックが行くのが陸運局なんだけど、そこの窓口の係がなんと全員ナマケモノ。(これってアメリカの陸運局の仕事の遅さを皮肉ってるのかな。まぁどこの国も「お役所仕事」っていうのがあるんでしょうね)ジュディ、ニックと最速のフラッシュの掛け合いがもう最高。何度でも見たくなる。ディズニーだめな人にでもこのシーンだけでもいいから見てほしいくらい。“最速の”というあだ名が皮肉でつけられたものではなく本当に“最速”だというのが映画の最後にちゃんと出てきます。

最近のディズニーやピクサーは色んな映画のパロディを挟んでくることが多い。今回はジュディが警察官ということで「ポリスアカデミー」っぽいシーンがあるし、捜査に協力してくれるマフィアのドン・ミスタービッグはもちろん「ゴッドファーザー」のドンコルレオーネ。そんなドンが小さな小さなネズミっていうのもなんだか面白い。

まさかのパロディだったのが「ブレイキングバッド」あんなヤバいドラマのパロディを一応は子供向けのアニメ映画にぶっこんでくるなんて!これ製作者の間でも賛否あったのかなぁ。まぁ、子供には分からんから完全に大人向けのシーンなんだけど、ジュディとニックが捜査で踏み込んだドラッグ精製所。ここが「ブレイキングバッド」のキャンピングカー内のブルーメス精製所にそっくり。こちらのドラッグもブルーだし、精製している奴のつなぎも黄色。訪ねてきたのは“ウォルターとジェシー”名前なんかいらないような雑魚キャラなのにわざわざ「ウォルターとジェシーが来たぜ」と言わせている。あー、「ブレイキングバッド」見てて良かったーと思いました。劇場でもウケている人がちらほらいて「お。ブレイキングバッド見てた人だねー」と思いました。

他にも「手」は「前足」だったり、ジェントルマンがジェントルママル(哺乳類)だったり、ジュディの持っているスマホのマークがりんごじゃなくてにんじんだったりと細かいところまで楽しい仕掛けがいっぱい。一度見ただけではまだまだ気付かなかったことがいっぱいありそう。

このズートピアは完全に実際の人間社会とリンクしていて、そこにある差別、不寛容さ、それによる衝突をどう解決していくかというのが、この物語の大きなテーマになっている。でも小難しいことだけではなくて、夢を持つこと、あきらめないこと、種を越えた友情なども語られて子供たちももちろん楽しめるようになっています。夢をあきらめないジュディにぴったりなテーマソング「Try Everything」を歌うのがズートピアのディーバ・ガゼルシャキーラ。ディーバだからビヨンセかなと思ったらシャキーラでした。シャキーラの伸びやかな歌声がズートピアの世界観にぴったりです。さっそくiTunesでダウンロードしました。スペイン語バージョンもシャキーラが歌っています。そっちも欲しいのだけど日本のiTunesでは売ってない。残念。

最近シリーズ化されることの多いディズニー作品。「ズートピア」もジュディ、ニックの警官コンビで続編が作られそうな気がしますね~。


セイフヘイヴン

2016-04-06 | シネマ さ行

アメリカの片田舎、緑豊かな小道、木漏れ日、湖、魅かれあう美男美女、どちらも心に傷を持ち、、、そして盛り上がるシーンには必ず大雨!もうこれザ・ニコラススパークス!

パターンなんだよなぁと思いつつ、なんかくすぐったくなりつつも心があったかくなるニコラススパークスのラブロマンス。今回は少しミステリー的な要素も加わってスリリングな展開もあり。

長距離バスが停まる港町。ここはバスの休憩所であってみな通り過ぎるばかり。ここで降りて観光したり根を下ろす人などいない。そんな小さな町に長距離バスで現れ居ついたケイティジュリアンハフ。この小さな港町で雑貨店を営む妻を亡くし1人で子供たちを育てているアレックスジョッシュデュアメルは彼女に魅かれる。ケイティは初めは警戒するが、近所に住むジョーコビースマルダーズの後押しもあってアレックスと距離を縮める。

一方ケイティがもともと住んでいた町では一人の刑事ケヴィンティアニーデヴィッドライオンズがケイティの周辺を執拗に捜査していた。思いつめた表情で捜査をしているティアニー刑事。どうやら殺人の容疑らしいのだが、あまりに執拗な雰囲気なのでケイティが彼の友人や兄弟でも殺したのかと思って見ていたら…

作品の冒頭にどうやらケイティが誰かを殺して逃げているようなシーンがあり、アレックスとケイティの関係がうまく進んでいけばいくほど、例え何か事情があったにしても、もし人を殺していたのならこんなところで幸せに暮らしましたとさってわけにはいかんよなー、どう収拾つけるんやろう?と先の展開が非常に気になりました。

そして、先の展開は気になりつつも、2人の関係が徐々に深まっていくシークエンスは見ていて非常に心温まるものでジョッシュデュアメルもハンサムだし、何よりジュリアンハフの笑顔が溌剌として可愛らしい。この子どっかで見たことあるけど分からんなぁと思っていたら、「ロックオブエイジズ」の女の子だった。髪型全然違うから気付かなかったよー。でも、なんかこの子歌うまそうやなぁと何の根拠もなくぼんやり思っていて。もしかしたらワタクシの脳みその端っこから「ロックオブエイジズ」の記憶が叫んでいたのかもしれません。

ミステリー的な要素もある物語なので、ネタバレになってしまうのですが、実はこのケヴィンティアニー刑事はケイティの元旦那。ケイティを殺人罪で探していたのではなく、DVから逃げた自分の妻を刑事のパワーを利用して探していただけでケイティが殺人を犯したわけではなかった。ほっ。

ストーリーの「転」の部分もニコラススパークスっぽく、ちょっとした事件が起こり雨降って地固まる的に「結」となるわけですが、今回の事件は結構大きかったなぁと。あんな大騒ぎになっちゃって。まぁ結果誰も死んだりしなかったから良かったけどね。

ケイティの隣に住むジョーという女性の役割がいまひとつ分からなくて、アレックスとの仲を取り持っているわりには、アレックスたちとジョーはまったく交流がないのが不自然だなぁ。もしかして、ジョーもケイティに恋してるとかそういう展開?と思いながら見ていたら、なんとなんと最後にびっくりなことが待っていました。そうか~そうだったのか~。だからアレックスたちとジョーとの交流場面ってなかったんだ。なんか宙ぶらりんな立ち位置の設定だなぁと思っていたら、まさに宙ぶらりんなところにいる人だったわけだ。納得納得。と、ここはネタバレしないでおいておきますね。

過去のニコラススパークスの作品が好きな方は絶対にハマる作品だと思いますのでぜひ。


サンシャイン~歌声が響く街

2016-03-24 | シネマ さ行

ケーブルテレビで見ました。まず本当にまったく何の知識もなく見始めて最初のシーンでいきなり兵隊たちが歌い始めたので「あ、これミュージカルか」と少し驚いて見始めました。そう言えば「歌声が響く街」やったなぁと思いつつ。

お話は超単純です。アフガニスタンから復員してきたデイヴィージョージマッケイと親友のアリーケヴィンガスリー。アリーはデイヴィーの妹リズフレイアメイヴァーと付き合っていてこのリズの職場の子でロンドンから来たイヴォンヌアントニアトーマスを紹介されたデイヴィーはすぐに彼女と意気投合。

デイヴィーとリズの両親ロブピーターミュランとジーンジェーンホロックスは結婚25周年を迎える安定した夫婦と思いきや、ロブは過去の浮気で娘がいた。ロブ自身も最近知ったようだが、結婚25周年パーティーの席で娘の母親からの手紙をジーンが見てしまい大変なことに。

アリーはロブたちのパーティーでリズにプロポーズするが、海外で働くという夢があるリズに「ノー」と言われ自暴自棄になり、またアフガニスタンへと向かう。

ジーンの機嫌を取ろうとジーンのために張り切って料理を作ろうとするロブだが、脳梗塞か何かで倒れてしまいジーンはやはりロブがいないと生きていけないと再認識する。

順調そうに思えたデイヴィーとイヴォンヌは些細なことでケンカをしてしまうが、デイヴィーはロンドンに戻ろうとするイヴォンヌを取り戻しに向かう。

だいたいお話はこんな感じで、ところどころに歌が挟まれて登場人物たちがみなその場面その場面に合った歌を歌います。

最後にデイヴィーがイヴォンヌを迎えに行くシーンで「I'm Gonna Be(500 Miles)」という知っている曲が流れて、「ん?これってもしかしてジュークボックスミュージカルだったの???」とやっと気付いた次第。最後の曲まで一曲も知らなかったので分からなかったのですが、後で調べてみると全部The Proclaimers というスコットランドの双子のデュオの曲だった。

この作品ねぇ、もうとにかく全体的になんとなくダサいの。最後のデイヴィーがイヴォンヌを迎えに行って周りの全然知らない人たちも一緒になって「I'm Gonna Be(500 Miles)」でダンスするとこなんて、超ダサくて、その辺のフラッシュモブのほうがずっとずっとカッコいいのがあるよっていうくらいの感じなんだけど、そこがねーもうなんかスコットランドっぽくって好きです。スコットランドの人には超怒られてしまうかもしれませんけど、ワタクシは好きです。

ジュークボックスミュージカルというのは既存の曲を使ったミュージカルでだいたい同じアーティストとか同じ作曲家という縛りがあるものでビートルズの「アクロスザユニバース」とかアバの「マンマミーア!」とかのことを言うんですが、その中でもこの作品はものすごく曲の内容と物語のシーンがシンクロ度が高いように思いました。そのせいもあって曲を知らないとミュージカルのために書き下ろしたのかと思うくらいでした。

スコットランド的ダサさが好きじゃない人にとっては、マジでただのダサいミュージカルかもしれません。。。ネットの評価も低いし。でもワタクシはなぜだか妙に愛しさを感じてしまう作品でした。


ソロモンの偽証~後篇・裁判

2016-02-26 | シネマ さ行

さていよいよ裁判です。こちらも前篇同様、裁判開廷までの経緯、開廷後の裁判の様子、周りの反応などを丁寧に丁寧に描いていきます。

生徒たちがきちんと裁判とはどのようなものなのかを調べて、弁護人、検事、陪審員、判事、廷吏と役割分担を決めていく過程までが丁寧に描かれていることに好感を持ちました。特に成績トップで高校受験のことしか頭になくこんな裁判受験の邪魔になるだけだと思っていた井上康夫西村成忠を藤野涼子藤野涼子がうまく乗せて判事になってもらうシーンが、この作品の少ないほのぼの笑えるシーンに出来上がっていて好きだった。その後も“判事”井上君は要所要所でいい味を出してくれていた。

大出君清水尋也に裁判に出廷してもらうために奔走する弁護人・神原君板垣瑞生と助手の野田君前田航基や、少しでも事件の真相に迫ろうと柏木君望月歩の通話記録まで調べあげ、聞き込み調査を行う検事・藤野涼子とその助手・倉田まり子西畑澪花と向坂行夫若林時英のシーンは結構本格的なミステリー要素も踏まえているようでかなり面白かった。

もう一人の重要人物である三宅樹里石井杏奈は松子富田望生の死以来学校に来なくなってしまい、彼女にもまた裁判に出廷するよう説得に行く藤野涼子。彼女たち2人の対比はこの物語の中で重要な役割を担っていたと思う。まっすぐに事件を見つめようとする涼子と自分が犯した罪と向き合えない樹里。彼女たちのそれぞれの家庭環境の違いもかなり影響しているように思えた。

家庭環境と言えば、秀才で私立の中学校に通っている苦労知らずのおぼっちゃんに見えていた神原君の衝撃の過去が大出君を裁判に出るよう説得するシーンで明らかになる。この彼の過去が裁判のクライマックスにおいても大いに関連してくるのだった。

いよいよ裁判が始まり、大勢のPTA、教員、生徒が見守る中、涼子たちは立派に裁判を進行していく。始めあまりにもざわついたり野次を飛ばしている傍聴席の群集に対して死んだ松子のお父さん塚地武雅が「この子たちが一所懸命にやろうとしている裁判、ちゃんとやらせてやってください」と頭を下げるシーンが泣けた。娘を亡くして、こんな裁判反対だと言っていたお父さんがどう心変わりしたのかという描写はなかったのだけど、それだけ涼子たちの本気が伝わったのだろうと感じた。

裁判の大きな見どころとしては大出君のアリバイの証明、三宅さんが告発状について何か知っているのか、なぜそんな告発状が送られなければならなかったのか、学校側の対応はどうだったか。といったところだろうか。

三宅樹里が証言台に立ち、「告発状は松子が書いたもので私は一緒に投函しただけ」と言ってみせたところは正直驚いた。ワタクシの中で三宅樹里がどういう証言をするのかというのが一番注目していたところだけに、そうきたかー!と思った。彼女にしてみればもうあそこであんなふうに言うしか残された道はなかったんだと思う。もちろんいけないことだけど、自分の浅はかな考えが大騒ぎを起こしてしまって、ぎりぎりのところまではまだ保身に走りたかった気持ちは分からないでもない。

大出君の弁護人である神原君がなぜ告発状が送られたと思うか、その原因は大出君によるいじめが原因だと大出君を責め立てていくシーンがあって、この裁判の大きな見せ場になっているが、あれは果たして彼の弁護人である神原君がやるべきことだったのだろうか。むしろ、それくらい人をいじめていた大出君なら柏木君を突き落としても不思議はないというふうに検察側が責めるべきだったんじゃないかと思う。

裁判から去って行った三宅樹里だったが、保健室で涼子に話した松子の死の真相というのはかなり衝撃だった。これが物語の中で一番衝撃だったかも。松子ちゃん、本当に死ぬ必要なんてなかった子なのに一番かわいそうだったな。

最終的に検察側の涼子が柏木君の死の真相について重要な証拠を新たに見つけたとして、柏木君ちの通話記録から柏木君が死んだ夜最後に4回も電話していた人物の存在を明らかにする。それはなんと神原君だと言うのだ。。。

ここから神原君が証言台に立ち、柏木君の死の真相について語り始める。ってか、お前最初っから全部知っとったんかーい!!!とビックリしたんだけど、一応神原君の説明を聞けば彼がどうしてここまでそのことを黙っていたかということも理解はできた。

フタを開けてみれば所謂青春の思春期特有の悩みが原因で、「告白」的なぞーーーっとするようなラストを期待していたワタクシは、え、これめっちゃ爽やか青春物語やんとこれまた少し驚いてしまった。そうか、そうやったんか、これ普通に青春物語なんや。あ、でも柏木君はなんとも言えず不気味やったなぁ。彼には確かにぞーーっとした。

エピローグ的に裁判後の校庭の風景が本当に青春物語っぽく描かれる中で、三宅樹里と松子の両親の対面シーンには泣けた。松子は亡くなってしまっているのに、ご両親があそこまで三宅樹里に寛大にいられるというのがすごすぎない?と思ったけど、それまで松子のご両親の人柄はよく表れていたので納得できるという部分もある。

とにかく全篇、中学生がこんなんできるかー?と思う部分もあるけど、中学生だからこそあそこまで懸命にできるのかもしれないという部分もあり。演じる生徒たちをきちんとあれくらいの世代でまとめたのもえらいなぁと思いました。だいたい学園ものって18才くらいの子でも中学生を演じてたりして違和感があるものが多いですから。そして、成島出監督がとても丁寧にワークショップを行った結果、彼らの演技を引き出すことができたんだろうなぁということがとても伝わってくる作品でした。

裁判のオチとしては少し物足りない感じもあるし、前篇のほうが面白かったかなという気はしますが、それでもやはりぐっと入り込んで見てしまう作品でした。原作を読んだ方がどう感じるかは分かりませんが、製作陣と出演者がとても誠実にこの作品に取り組んだことがよく伝わってくる作品でした。

*前篇、後篇と連続で見たので、厳密に2つの作品の切れ目が分からなくなってしまい前篇後篇が混じったレビューになってしまっているかもしれません。


ソロモンの偽証~前篇・事件

2016-02-25 | シネマ さ行

ケーブルテレビで見ました。公開時に面白そうだなと思っていたので楽しみにしていました。

クリスマスの朝うさぎの世話のために中学校に行った2年の藤野涼子藤野涼子と野田健一前田航基は屋上から飛び降りたクラスメイトの柏木卓也望月歩を発見してしまう。

状況から警察は自殺と断定するが、学校と藤野涼子の元に柏木君が大出俊次清水尋也たち不良グループに屋上から落とされたのを見たという告発状が届く。

校長小日向文世は警察と相談して生徒たちのカウンセリングと称して、誰が告発状を書いたのか探ろうとする。担当刑事の佐々木田畑智子は三宅樹里石井杏奈と浅井松子富田望生が怪しいとふんでいた。

そのクラスの担任だった森内恵美子黒木華のところにも告発状が届いていたのに、彼女がそれを破り捨てたという手紙がテレビ局に着いたことから、告発状の存在が世間にも生徒たちにもバレてしまい、学校は何もしていなかったのかと追及される。

しかし、目撃者はそんな真夜中にどうして普段鍵が閉まっている学校の屋上にいたのか?そして、そんな事件を目撃したのになぜすぐに通報しなかったのか?という単純な疑問を佐々木刑事はPTAに説明をし、PTAの怒りは収まった。

告発状が相手にされなかったことで、告発状を書いた三宅樹里のことを心配した浅井松子は樹里の家を向かい、事故に遭って死んでしまう。

柏木に続き、松子まで死んでしまったことで、これらの事件の真相を暴こうと藤野涼子は野田健一、そして柏木君の小学校の時の親友でいまは私立中学に通う神原和彦板垣瑞生とともに学校内裁判を行おうと考える。

最初は刑事である父親佐々木蔵之介や母親夏川結衣に反対されるが、涼子は自分の意志を曲げず、唯一最初から味方になってくれた北尾先生松重豊の協力を得てなんとか学校内裁判を行う許可を取る。

簡単にあらすじを紹介してもこれだけかかる。この中にもっと細かいエピソードが挿入されていて時系列もいじってあったりして、最初少し戸惑ったのだけどうまい作りになっています。

成島出監督他製作陣がかなり真剣にオーディションで選んだことが分かる中学生たちの人選。みんな演技がうまいし、一所懸命やっているのが伝わって来て魅入ってしまいました。特に主人公の藤野涼子の目力がすごくて泣くシーンも本当に涙腺の奥から涙がつーっと流れるのが分かって、泣こうとしていないのに泣いてしまう、泣きたくないのに涙が溢れてしまうという心情がすごく伝わってきました。

神原君を演じる板垣瑞生という子は初めて見たのですが、あまりの男前っぷりにびっくりしてしまいました。男前というか可愛らしいというかとにかく顔が整い過ぎ。この子は世間にきゃあきゃあ言われてるんやろうなーと思って、彼が映るたびにどうしても顔をじーっと見てしまいました。

樹里役の子も松子役の子もすごくリアルですし、樹里と言えば樹里の母親を演じる永作博美が妙に不気味で、やっぱりこの人うまいのよねぇと思いました。

あと大阪人としては小さい頃から見ているまえだまえだのお兄ちゃんが出ていてびっくりして、そして、やたらと標準語がうまいことにもびっくりしました。彼は大阪弁を話しているイメージしかなかったので。

役者のことばかり書いてしまいました。前篇なので、評価を下すのは難しいですが、柏木君の死をきっかけに1つの中学校が生徒、教師、PTA合わせて揺れ動く姿が綿密に描かれていて、この後の裁判に大きな期待を寄せるに十分な前篇の出来だと思いました。上映時間2時間1分なんだけど、良い意味で長く感じました。長くというと退屈なように聞こえると思いますが、密度の濃い2時間1分という感じでした。


ザ・コール~緊急通報指令室

2016-02-19 | シネマ さ行

911のオペレーターのジョーダンハルベリーは、少女から家の中に侵入者がいるという通報を受け、冷静に部屋に隠れて警官の到着を待つようにと指示を出すが、途中で通話が途切れてしまい思わず電話を掛け返してしまったことで犯人に少女がベッドの下にいることがバレ、その少女は殺されてしまう。自分のミスにより少女が死んでしまった罪悪感からジョーダンは一線を退き、新人オペレーターの教官として働いていたが、講習中にかかってきた電話を取った新人に代わり対応することになってしまう。

それはショッピングモールの駐車場である男に拉致され車のトランクに乗せられている少女ケイシーアビゲイルブレスリンからの通報だった。普通なら携帯電話を探知すれば位置が分かるが彼女が持っていたのはプリペイド方式の携帯で、その種類の場合簡単に逆探知ができないことから、ジョーダンが知恵を絞ってなんとか少女が閉じ込められている車を特定しようとするのだった。

いやードキドキしたよー。オペレーターの人と拉致された少女の電話のやりとりの緊迫感がものすごい。トランクからテールランプを壊して手を振って、とか、トランク内にあるペンキをその穴から流して、とか色々と指示を出してなんとか少女を助けようとするジョーダン。なんとか犯人に見つからないで車を特定できてくれーーーーと見ているほうはハラハラしっぱなし。

実際に自分の経験と知恵で少女を助ける方法をフル回転で考えるジョーダンがすごいんだけど、それだけじゃなくてジョーダンという30代女性がティーンエイジャーのケイシーを励ますときに使う"Honey"とか"Sweet Heart"とか"Good Girl"なんていう言葉がとてもアメリカ的でこちらも勇気づけられるように感じました。ジョーダンの話の持って行き方も、「私たちは2人ともやぎ座ね。やぎ座は戦う星座よ。2人で一緒に戦いましょう」「あなたはとても強くて賢い子よ」「好きな映画は何?この週末、一緒に見ましょう。私たち2人で一緒に見るのよ」とかってこの辺りもすごーくアメリカっぽくてなんかいいなぁと思いました。

土壇場で犯人に通話していることがバレて「いまなら引き返せるわ」と説得を試みるジョーダンに「もう遅いんだよ」と言う犯人の声とセリフが最初にジョーダンがしくじった少女を殺した犯人のものと同じだと気付いたジョーダン。おおおおー、アイツかー。とまったく予想していなかったので驚いてしまったのですが、確かに少女の特徴もよく似ている。。。

犯人は特定できたものの居場所は掴めない警察。ケイシーとの通話を繰り返し聞いてバックグラウンドの音からひらめくジョーダン。っておいー、ここで独りでそこに乗り込んでいくとかアカンからー。ジョーダンが単独行動をし始めたところからちょっと興ざめ。まぁ隠れ家の地下室を見つけたところで一回警察に電話はしようとしていて圏外だったからそこんとこは許すとしても。最初からそんなとこに独りで行ったらアカーン!そして犯人との直接対決。そして!

このラストはねぇ。。。かなり賛否両論あるだろうなぁ。ワタクシは全然現実的ではないけど犯人ざまぁみろと思っちゃうほうなのでまぁいっかなぁ。ラストは書かないでおきますが、このラストで評価が下がったという人もいるみたいです。

ワタクシはラストを受け入れることができたのと、途中のハラハラドキドキがかなり楽しかったので高評価です。


スティーブジョブス

2016-02-17 | シネマ さ行

アシュトンカッチャーが演じたほうの「スティーブジョブズ」で彼の人生のことはだいたい分かっていたし、彼についてもう一度見たいほどのファンでもない。というよりも、彼の人生をもう一度見るのは不愉快だなと感じるくらいイヤな奴だったスティーブジョブズについての作品をまた見に行こうと思ったのはひとえにケイトウィンスレットが出演していて、しかもゴールデングルーブ助演女優賞を受賞、アカデミー賞にもノミネートされているから。彼女が出ていれば賞レースにかかっていなくても見に行ったとは思いますが。

まぁぁぁなんと字幕翻訳者泣かせのセリフの多さ。それもそのはず脚本は「ソーシャルネットワーク」を書いたアーロンソーキン。あれもセリフが膨大でした。字幕の人もそうだけど、それよりも役者さんたち大変だっただろうね。でも主役のスティーブジョブズを演じたマイケルファスベンダーはいきなりしょっぱなの本読みからすでに台本なしでセリフが頭に入っていたとケイトが言っていたからびっくりです。

最初にも書きましtが、スティーブジョブズのファンの方には申し訳ないですが、この人ってほんっとーーーーにイヤな奴でしたね。亡くなった人をけなすのは良くはないのでしょうけど、早く死んだからと言って彼の人格が上がるわけでもない。天才ってイヤな奴でもどこかチャーミングだったりする人も多い中で、彼にはそんなところが1ミリもない。側近だったジョアンナ(ウィンスレット)にはそういう面が見えていたのかなぁ。。。それともやはり噂されているようにアスペルガー症候群だったのかな。本人が公言していたわけでも検査を受けたことがあるわけでもなさそうですが、アスペルガーと言われると彼の「イヤな奴」という部分にも納得がいきます。一応言っておきますがアスペルガーの人がイヤな奴と言っているわけではないです。彼がコミュニケーション障害を持っていたとしたらすべてに説明がつくと思います。

一緒にアップルを立ち上げたスティーブウォズニヤックセスローゲンが「君はプログラマーでもデザイナーでもない。一体何を作ったって言うんだ?」というシーンがあってちょっとスッキリしました。いままでココ一番疑問だったから。そう彼は何も作ってないんじゃないの?ってコンピュータのことが全然分からないワタクシは思ってしまいます。実際のところはジョブズ自身が言っていたように彼はオーケストラを指揮する指揮者の役割だったってことなのかな。彼の発想力がなければ現在のコンピュータやインターネットの世界の発展はなかったってことなんでしょうか。これもアスペルガー的な人並み外れた探究心のなせる技だったのかな。

アップルを支え続けたアップルⅡのチームに一度でいいから公の場で謝辞をを頼むウォズニヤックを拒否し続けるジョブズ。ここでも「天才と人格者であることは共存できるんだぞ」というウォズニヤックにスッキリ。ウォズニヤックを演じたセスローゲンは特に賞レースにかかっていないけど、すごく良い演技をしていたと思います。

物語は1984年のMac、1988年のNeXT Cube、1998年のiMacの発表会の直前という3幕でほぼ構成されているので、スティーブジョブズの伝記的なものを期待して行くとがっかりというか、ちょっとわけが分からないという感じになるかもしれません。そういう意味ではアシュトンカッチャー版が良い予習編と言えるかも。彼が頑として認知しようとしなかった娘リサのこともアシュトンカッチャー版を見ていたほうが分かりやすい。それにしても彼があそこまで頑なにリサの父親であることを認めるのを拒否していたのはどうしてなんでしょうか?それはどちらの作品を見てもよく分かりませんでした。彼自身が養子だったことと何か関係があるのかなー?

最初に書いたようにセリフの量が膨大なので、これも好みの分かれるところかもしれません。ワタクシはセリフが多い劇が好きなので入り込んで見ることができました。スティーブジョブズの伝記としてより純粋にセリフ劇として見れば評価できるかな。伝記として見に行った方はがっかりかもしれません。


スターウォーズ~フォースの覚醒

2016-01-21 | シネマ さ行

3Dで見るか4DXで見るか、と迷っていたのに結局普通に2D字幕で見ました。

ワタクシが子供のころにエピソード4~6が公開され、映画が好きと言えるようになるころにはもう「スターウォーズ」は過去の名作でした。テレビで何度も放映していたからもちろん見たことはあったけど、スターウォーズ世代ではなく、映画雑誌などで時々取り上げられる名作映画の解説などを読んで、いま公開されているのは実は9部作の真ん中の3作と知ったときには仰天しました。そして、大人になりエピソード1~3が製作され、40年の時を越えてエピソード7~9が公開されるという昔映画雑誌で読んだときは、前後の3部作なんて本当に作られるのかなと思っていたことが現実になって信じられない思いです。

そしてこの「フォースの覚醒」。シリーズの生みの親であるジョージルーカスが辞めてしまい、いまをときめくJJ.エイブラムスが監督を務めることに。ルーカスフィルムをディズニーに売っちゃったときにはびっくりしましたが、ディズニーは今回スターウォーズの雰囲気を守るためかいつも出しているシンデレラ城のマークを出すのはやめたみたいですね。

おそらく熱心なファンであればあるほど、今回の作品にはダメ出ししたいんじゃないのかなぁと思います。ワタクシは普通に楽しんで見ることができましたが、コアなファンであれば納得できないことも多かったんではないかと。

ワタクシが疑問に感じた点を挙げますと、

レイデイジーリドリーはジェダイの訓練をまったく受けていないのにどうしてフォースが覚醒したのか?(それほどレイのフォースが強い?スカイウォーカーの血筋?)デイジーリドリーって顔立ちがナタリーポートマンっぽいんだよねぇ。これが意識的だとすればやはり血筋?

フィンジョンボイエガはジェダイでもないのにどうしてライトセーバーを自在に操ることができるのか?(フィンも実はジェダイ?)

カイロレンアダムドライバーはなぜあんなに簡単にマスクを脱ぐ?そもそもマスクをしている理由は?

JJはカイロレンになぜもっとかっこいい役者をあてなかったのか?(これは個人の感じ方ですが)

4番目以外の疑問はこの先のシリーズを見ることで解決するのかもしれませんね。

あとは、エピソード4~6を見たのが相当前なので物語のつながりを忘れてしまっている部分が結構ありました。ちゃんと全部見直さないといけないな。

それにしても、エピソード7が作られるというニュースが流れたとき、ハンソロハリソンフォード、ルークマークハミル、レイアキャリーフィッシャーが再登場すると知って、出ると言ってもカメオ出演くらいのもんだろうと思っていたら、がっつり登場してそれは嬉しい気持ちになりました。

レイとフィンの初々しい雰囲気がとても可愛らしくて、これは新しいファンも取り込めそうな気がしました。主役が可愛くて強い女の子っていうのがいいよね。あとはやっぱりBB-8は超可愛かった~。一体欲しい。

今回は新たな3部作の1つ目としてすべて次回に続くとなっているところが最近の映画っぽいですね。昔ルーカスが4~6を作っていた時はその1本だけでも十分に映画として成り立っていたと思います。

なにはともあれ、きちんと9作目まで頑張ってほしいです。


進撃の巨人~ATTACK ON TITAN エンドオブザワールド

2015-10-16 | シネマ さ行

ぶっちゃけ前半を見てから特に後半を楽しみにしていたわけでもなかったのですが、前半を映画館で見てしまったので、後半もまぁ一応見に行こうかと思い行ってきました。

なんか、さらにチープになってた。。。

シキシマ長谷川博己の気持ち悪さは前半で慣れてしまったのか、今回ちょっとだけ大丈夫になってました。それよりもエレン三浦春馬のキモさ倍増。三浦春馬の演技のせいなのか、演出のせいなのか、、、なんかシキシマに詰め寄るところとかの動作もキモいし、いきなり「うわわわわわあああああ」とか奇声を上げるのもはぁ?って感じで。

前半でハンジ石原さとみは良かったって書きましたけど、これも演出が一本調子なせいか、ハンジ、ただの変な人。ハンジは確かに変態ですが、それだけではなくてもっとハンジの持ってる知識とかを生かす演出にしてほしかった。

アルミン本郷奏多とミカサ水原希子も準主役のはずが、影うっすー。ミカサなんてほとんどセリフないし。それでいて、サシャ桜庭みなみと2人で「あ」とか「ん」とかよく分からん音を発してコミュニケーションを取っていて意味不明。

シキシマが明かした巨人の真相ってのは、よくある設定ですけど、まぁいいとして。それでシキシマが蜂起を企てているのに、それに反対して必死になって壁を塞ぐエレンたち。意味不明。もうあそこまで巨人にやられているんですから、「死んでいい人間なんていないんだぁ」とか甘いこと言ってないで、体制をひっくり返すほうが良くないかい?でもシキシマが言うように昔々人間が兵器として巨人を作り出して、その後なぜか突如として巨人になる人々が出てきたって言ってたけど、それならなぜ壁の中の人々は誰も突如として巨人になる人がいないのかってのがよく分かりませんでした。

ソウダピエール瀧が死んだとき、エレンの兄がどうのこうのって意味ありげなこと言ってましたけど、結局何も分からないままでしたね。エレンの兄ってシキシマ?

シキシマが巨人になってエレンの巨人と戦いになったとき、え?これウルトラマン?って思いました。あのまま巨人同士で決着がついてしまったらどうしようかと思いましたが、それはちゃんとあとから巨人対人間になって良かったです。シキシマが最後「お前はお前の道をゆけ!」とか言って急にエレンの味方をしたのも意味不明でした。

シキシマが巨人にってさらっと書きましたけど、そのことも「知ってたのか?」と聞かれたミカサが「うん」と言っていてびっくりしました。は?うんって。うんってー。知っとったんかーい。なんじゃそりゃ。

ま、とにかく意味不明って何回も書いちゃう感じの作品です。

上映時間たった87分しかないんですよね。だからまだ見られたってのもあるかもしれませんが、もうちょっと頑張って作り込めよって思いました。


早熟のアイオワ

2015-09-07 | シネマ さ行

1976年のアイオワ。14歳のアグネスジェニファーローレンスは今夜のバスケットボールの試合を楽しみにしていた。彼女はバスケットボール部の花形選手のようだ。アグネスは一見普通の中学生に思えるが、彼女の母親サラセルマブレアは売春婦で、ポーカーハウスと呼ばれている売春婦やドラッグの売人たちが集まる家で暮らしている。アグネスには小さい妹が2人。2人ともまだ幼いながらも家の事情は察している様子。

アグネスは悲惨な状況下にありながら、新聞社やファーストフード店でアルバイトをし、ストリートバスケをやったり町の人たちには大変好かれているようだった。おそらく町の人たちは皆ポーカーハウスの悲惨な状況を知りながら、それでも健気に生きているアグネスのことを不憫に思いつつ可愛がっていたのだろう。末の妹キャミークロエグレースモーリッツが一日を過ごしいるバーの女主人もそんな感じだった。

アグネスは母親のポン引きの男ボキームウッドバインに会うたびに優しくキスをされていて、14歳の彼女はそれを愛だと信じていた。母親にはそろそろ客を取れと迫られていたが、なんとかやり過ごしていた。

試合の時間が迫る中、アグネスはいつものようにキスをしてくるポン引きに応えていると急に力づくで押さえつけられレイプされてしまう。泣きながら風呂に入り入ってきた母親に助けを求めるが無視され、銃を取り出したアグネスはポン引きと母親に銃を向け、「そいつにレイプされたのよ」と母親に訴えかけるが、母親はアグネスのことなど気にもかけず、むしろ嫉妬心も入り混じったように「これでお前も何の問題もないから客を取れる」などと言われてしまう。

心も体も傷ついたアグネスだったが、気丈にバスケットの試合に向かい、試合には遅れてしまったものの途中出場で驚異的な得点を挙げ、試合後に妹2人を迎えに行き車の中で「Ain't No Mountain High Enough」を3人で大声で歌います。3人のお気に入りのファミレス、ハワードジョンソンに向かって。その瞬間こそが悲惨な状況下にある3姉妹の最高の幸せだと言えると思いました。

アグネスの置かれた状況は悲惨です。母親が売春婦に堕ちたのは初めは父親のDVから逃れて生活をするためでした。悲惨な状況下にあるティーンエイジャーを演じさせたらジェニファーローレンスの右に出る者はいませんでした。撮影時はおそらく14歳よりも年上だっただろうし、そう見えるので14歳のリアリティとして見えないのが少し残念でしたが、14歳で母親のポン引きにレイプされたなんて本当に悲惨過ぎますし、幼い妹のことも気にかけて、彼女たちが自分と同じ運命をたどるのではないかという恐怖心も伴っていると考えると本当に心が痛みます。

この作品の監督はロリペティ。彼女の自伝的作品というのだからビックリです。ロリペティといえば「「ハートブルー」「プリティリーグ」「タンクガール」などに出演していて、どちらかと言えば明るく元気なスポーツウーマン的なイメージでした。そんな彼女にこんな悲惨な過去があったなんて。きっと役者になったときからいつか自分の過去を映画にして語りたいという気持ちがあったのでしょうね。14歳でレイプされた過去を告白することには相当の勇気が要ったと思いますが。

作品としては暗いし、単調だし少し退屈だったかも。ただやはり映画ファンとしてはあのロリペティの自伝的作品ということで一見の価値はあると思いました。

最後にアグネスはニューヨークに行って演劇界に入るという説明が入るのですが、その時妹たち2人はどうしたんだろう?と気になってしまいました。もちろん、アグネスのことだからそれで2人をほったらかしにしたってことはなかったと思いますが。


死刑弁護人

2015-08-31 | シネマ さ行

ワタクシが安田好弘弁護士を知ったのは、光市母子殺人事件の弁護士としてだった。彼が死刑反対の主張のためにこの裁判を利用しているというメディアの報道を鵜のみにして、ひどい弁護士だと思った。被告の「ドラえもん」発言の時には精神異常で無罪を主張するために弁護士が入れ知恵をしたのかと思ったし、チョウチョ結びに関してもふざけるな!と思った。それでも、橋下弁護士(当時)が彼らを懲戒処分にしようと呼びかけたときはさすがにそれはちょっと違うんじゃないの?それはあなたが弁護士として何か勘違いしていないか?と思った。

あの事件以来、彼のことはワタクシの周辺でも嫌っている人が多いようだった。そんな彼のドキュメンタリーの放映があると知り興味があったので見てみました。

オウムの麻原、和歌山カレー事件の林眞須美、光市母子殺人事件の元少年、その他にも現在とこれまでに渡り、相当数の死刑宣告を受けた被告の弁護を引き受けてきた安田弁護士。本人は学生運動の激しい時代に大学時代を過ごしており、「反体制」というのが一番染みついている世代という。

ワタクシは死刑反対論者ではない。もろ手を挙げて賛成しているわけでもないと言えばないんだけど、反対だと考える根拠はワタクシの中ではかなり薄い。なんとも曖昧な表現になってしまってますが。死刑に関しては安田弁護士の主張には相容れないんだけど、それでも彼の弁護士としての姿勢にはものすごく感服しました。

彼のような弁護士がいなければ、日本の刑法制度の正義が守られることはないと思うからです。どんな罪を犯した人であっても弁護を受ける権利があるということ、疑わしきは罰せずということは、いつどんな時代になろうとも揺らいではいけないことです。酷い罪を犯した人が捕まると、まるで弁護を受ける資格などないと言わんばかりの世論をマスコミは煽ります。そして、一度捕まってしまえばほとんどが無罪になるいうことはないという日本の検察と裁判所の癒着の怖さ。こういったものと闘う安田弁護士は弁護士の鑑と言えるのではないでしょうか。

犯した罪が何であれ、ただ断罪するのではなく、真実を追求しなければ再発は防げない。その犯人の背景を無視していたのでは、同じ犯罪は繰り返されるばかりだという安田弁護士の主張は確かに正しいものだと思います。

そんな中、安田弁護士が顧問である不動産会社に違法な資産隠しを指示したとして逮捕されてしまいました。当時オウム事件で麻原被告の弁護人を務めていたこともあり、おそらく検察が仕組んだ逮捕だったと考えられ、全国から1000人以上、第二審では2000人以上の弁護士が彼の弁護人として名を連ねた。これこそまさに彼が闘いを挑んでいる「体制」のやり方そのものでしょう。

そして、彼が裁判を通して死刑反対を訴えるなど愚の骨頂であると発言していることも注目しなければなりません。そのようなやり方は当然間違っているし、彼はそのようなことをしようとしたことは一度もなく勝手にマスコミが作り上げた像であるということです。

死刑に関する考え方以外でも光市事件の弁護の論法や、昔の事件のバス爆破事件の弁護の仕方などは、彼の主張はちょっと受け入れがたいと感じる部分は確かにありました。ただそれはやはり裁判上のテクニックなどもあるでしょうし、その意見が合わないからと言って彼への敬意の気持ちが変わるわけではありませんでした。

ひとつ彼が担当している興味深い事件の主張がありました。それは和歌山カレー事件です。逮捕された林眞須美死刑囚は詐欺屋であり、そんな彼女が一銭の得にもならない不特定多数の人の殺害をするわけがないという主張と、警察の証拠に捏造があるのではないかという疑いです。もちろん、実際に彼女が犯人なのかどうかは分かりません。でもやはり証拠の捏造などがあった場合、それはきちんと精査されるべきですし、疑わしきは罰せずという根本理論からすれば、彼女の死刑を確定していいものかどうかまだ裁判の余地はあるような気がしてきます。

ワタクシたち一人一人がマスコミに煽られて断罪する側に容易に立ってしまいがちな中、立場的に賛成であれ反対であれ、権力の不正と闘う安田弁護士のような方が絶対的に必要なのだと思わされる作品でした。


ジュラシックワールド

2015-08-20 | シネマ さ行

あまり見に行くつもりはなかったのですが、IMAXでなら迫力があって面白いかもしれないと思い、近所のIMAXで見てきました。

前の作品からつながっている設定なのでリブート版というわけではありませんが、20年以上前の一作目はもう今の世代は見ていないだろうし、CGの技術も進歩しているしということで作りたいということになったのでしょう。ラプトルの扱いなどは前のを見ていれば、どうしてあんな扱いになっているのか分かりますが、特に前のを見ていなくても全然問題のない作りになっていると思います。

んーーー、ちょっと期待し過ぎたかなぁ。ストーリーはどうでもとにかく大迫力の恐竜たちが見たかったんですが、映像的にそこまですっげーーー!って思ったところなかったような…強いて言えば、あのイルカショー的なシーンで水から出てきた恐竜が肉をばくーーーーってやるシーンが一番だったかな。まぁそれもテレビCMで流しちゃってるし…ばくーーーのあと、客席ごと下に沈んでいって水中での捕食の様子が見られるのはすごいと思いました。あの設備本当にどっかの水族館で作ったらいいんちゃうん?って思ったけど、それは本編には全然関係ないとこでの感動でした(笑)

このシリーズのお約束で運営側は神をも恐れぬ所業でハイブリッド恐竜を次々に世に送り出しているようです。パークの責任者であるクレアブライスダラスハワードを訪ねてきた甥っ子2人ザックニックロビンソンとグレイタイシンプキンスの兄弟でしたが、クレア叔母さんは新しいハイブリッド恐竜を株主たちに売り込むのに忙しくて助手に2人の子守りをさせていた。

元軍人の飼育員オーウェンクリスプラットは次々とハイブリッド恐竜を生み出すパークのやり方に警鐘を鳴らしていたが、聞き入れてはもらえなかった。彼は厳重に監視下に置かれているラプトルたちを訓練し、手なずけていたが、彼らは野獣だからと決して気を緩めることはなかった。ホスキンスヴィンセントドノフリオというリーダーはそんなラプトルたちを兵器として利用することを考えていて、オーウェンはもちろん反対しているが大企業の思惑に勝てそうもなかった。

ま、パークが良識のある人たちの意見を無視して神を気取るっちゅうのはお約束の展開ですな。そして、もちろんそのハイブリッド恐竜が暴れ出すのもお約束。

そこでパークの中で行方知れずになった甥っ子たちをオーウェンの助けを借りて必死で探すクレア叔母さんなのですが、、、え?あなたパークの責任者ですよね?何千人って客のことはほったらかしで自分の甥っ子探しに行っていいの?ほんでそんなピンヒールでジャングル駆け回って恐竜から逃げ回ってって無理でしょー。

CEOイルファンカーンも勇気のある行動でインドミナスを止めようとはするけど、翼竜を放しちゃうわ、自分はヘリ墜落であっけなく死んじゃうわ。コントロールルームで指揮を執るのは一体誰が???恐竜オタクのスタッフ以外はコントロールルームのみんなも船に乗って避難するとか言ってたけどさ、お客さんまだいっぱいいるよ?翼竜に食われてるよ?ってなんかもーめちゃくちゃ。

救いはザックとグレイの兄弟が可愛かったこととオーウェンがカッコ良かったことくらいかな。ワタクシはクリスプラットもブライスダラスハワードも好きだからまだ見れたって感じでした。ところどころ入る笑いのシーンは良かったと思います。兄弟が「僕達と一緒にいて!」と頼むシーンで「もう離れないわよ」とクレア叔母さんが言うと「いや、オーウェンのほう」と2人で声を合わせて言うシーンが一番笑いました。2人で声を合わせて言ったあとに弟君が「絶対オーウェンのほうだよ」ともう一回言うのも良かった。あとは恐竜を追っていくオーウェンを見て「叔母さんの彼氏かっこいいね!」とザックに言われてニマっとするクレア叔母さんが良かったな。

そしてラプトルを兵器として使うことには反対だったオーウェンもインドミナスの退治にはラプトル使うんだね…まぁ背に腹は代えられないという状況ではあるか。でもなんか結局ラプトルはインドミナスのことをアルファだと思ってついて行っちゃったけどな。でも最後にはオーウェンの味方をしてくれるのな。。。気持ちが通じ合ってるんだか合ってないんだかよく分からん。。。

ホスキンスがラプトルに襲われるのを黙って見ていたオーウェンもよく分からんかったしな。いくら敵でも恐竜に食われそうになっていたらさすがに助けないかな?銃持って目の前にいるのにさ。

最後は結局クレア叔母さんがT-レックスを連れてきて対決させるんだけど、水から出てきた例のヤツが最後はおいしいとこを持って行きましたね。お前かいっ!ほんで、T-レックスはすべてが終わっておとなしく自分のゾーンに帰っていくってのも不思議でした。奴は人を襲わんのか?そういうふうに手なずけられているのか。

大勢の負傷者たちが治療を受ける中クレアとオーウェンがロマンティックに去って行きましたけど、あーたたちもっとやることあるでしょうよ。パークの責任者がそんなとこのんびり歩いてたら怒り心頭のお客さんたちにボコられちゃうよ?気を付けて。


進撃の巨人~ATTACK ON TITAN

2015-08-19 | シネマ さ行

漫画を読んでいるので見に行くことにしました。登場人物も違う人がいるし、漫画とは別物と考えて行かないといけないなと思いつつ、やっぱりどうしても比べてしまいました。

まず、ワタクシの目当てとしては漫画の中で一番好きなキャラクターであるハンジを石原さとみが演じるということでとても楽しみにしていました。結果石原さとみのハンジ、めちゃ良かったです。シーンとしては彼女が変態と言われるほどの巨人好きというのを表すシーンがちょっと少なかったかなとも思いますが、それは彼女が映画の中心ではないので仕方ないかなぁと思いました。石原さとみのハンジの演技としては大満足でした。

その次の目当ては巨人のCGかな。冒頭の超巨大巨人のシーンも普通の大きさの巨人もすごくリアルですごかったと思います。エレンが巨人になって他の巨人と戦うシーンも良かった。ただ普通の大きさの巨人は気持ち悪い風貌をした人間という感じが原作より強かった気がします。漫画のほうでは普通の大きさの巨人は体の比率が変な奴とかがいて、そういうのがかなり気持ち悪さを倍増させていたので、そういうのももっと出して欲しかったです。そういうのが少なかったのはCGの予算の問題かなぁ?あの赤ん坊の巨人はすごく気持ち悪くて良かったです。普通の大きさの巨人の中に女性っぽい体つきのが何体かいたのが気になりました。漫画では後に女型(めがた)というのが登場するのでその時が女性っぽいタイプは初めてでてきたんだと思うんですけど、映画では女型のアイツは登場しないのかな?後半に注目です。

登場人物たちの設定が漫画とは違うのでそれはそれで良いのですが、エレン三浦春馬、ミカサ水原希子、シキシマ長谷川博己の3人の演技が妙にクサくてかゆーってなりました。漫画が原作だし、漫画のセリフなんかもクサいからわざとそうしているのだとは思うし、役者の演技の評価をこれで下すのは酷かもしれないんですが、単純にキモっ!て思うシーンがちらほらあってつらかったです。特にシキシマが。。。キモ過ぎです。アルミンを演じている本郷奏多にはそんなふうに感じなかったので、それはやっぱりうまいってことなのかな。

アレンジを加えているのは分かって見てるので変更はあって良いのですが、あの変な男女のラブシーンはなんなんでしょうか?エレンにも「娘の父親になって」とか言って迫ってくる女の人がいて、それもなんかキモって思いました。あれは観客へのサービスのつもりなんでしょうか?だとしたら安っぽ過ぎます。あの中にカップルがいてもおかしくないし、それはいいけど、なんかやたらとフィーチャーし過ぎって感じがありました。

あと、ミカサが巨人に襲われて助かった傷跡を見てエレンがショックを受けるシーンがありますが、その傷跡がなんともチープでした。巨人に襲われてあんな傷跡で済む?そこをシキシマが助けたから恋愛関係にあるっていう設定なのかな?それにしてもなんかもっとエグい傷跡にすれば良かったのに。あんな時代であんな傷跡程度でショック受けるってすごく甘ちゃんに思えたな。

エンディングのSEKAI NO OWARIの曲もあんまり合ってなかったような…ボーカルの声がなんかこの世界観に全然合ってない。まぁ若い人に人気のあるバンドだからワタクシ世代では良さが分からないだけかもしれません。

最後に英語の副題の「ATTACK ON TITAN」ですが、これって「巨人への襲撃」みたいな意味ですよね?これはエレンが巨人になって巨人を攻撃することを示しているのかなぁ?どなたかご存知の方いたら教えてください。

一応、前編を見に行ったので後編も見に行くつもりではありますが、、、まだ後編を見るまでは完全な評価は下さないでおきます。


シェフ!~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ

2015-05-13 | シネマ さ行

なんだかドキュメンタリー映画のような副題がついていますが、フランスのコメディ映画です。

スランプ気味の老舗レストランのシェフアレクサンドルラガルドジャンレノは次のミシュランで三ツ星を維持しなければクビだとオーナーに宣言され悩んでいる。(ただし映画の中ではっきり「ミシュラン」とは言われない。許可降りなかったのか?)一方天才的な舌を持ちラガルドに憧れて彼のレシピをすべて暗記しているジャッキーボノミカエルユーンはこだわりが強すぎてすぐに料理人の仕事を辞めてしまい、妊娠中の妻ベアトリスラファエルアゴゲが見つけてきたペンキ塗りの仕事をすることになった。

ペンキを塗っている建物の中に老人ホームがあり、そこの料理を作っているコックらと仲良くなるジャッキー。彼らに料理を教えてホームの老人たちにふるまうようになる。ある日、店の元オーナーを訪れたラガルドがその料理を口にし、自分が作ったレシピであることに気付く。これを作ったのは誰だ?とジャッキーを紹介されるラガルド。三ツ星を維持するためにジャッキーをアシスタントにすることにする。

ラガルドとジャッキーは三ツ星を維持するためには元来の料理ではダメで今はやりの分子料理を審査員に食べさせなければと分子料理の発祥の地スペインからコックを呼び寄せ勉強するがことごとく失敗。ライバルの店に偵察に行くが身元がバレてはいけないと、なんと日本人夫婦に変装して行くことに…

この日本人夫婦の扮装が酷すぎてもう怒りを通り越して笑えます。ジャンレノがチョンマゲでミカエルユーンが白塗りの芸者???だかなんだかよく分からない格好。まさかあれが本当の日本人だとダニエルコーエン監督が思っているとも思えないので、あれは“外国人のステレオタイプの日本人のイメージ”っていうのをわざとやってみせただけだと思うんだけどね。それでそんな無茶苦茶な格好のくせにミカエルユーンがやたらと日本語を喋っていてそれもまた笑えます。フランス語なまりがきついんだけど、言ってることはちゃんと日本語なんですよ。ちゃんと誰かに教えてもらったのかな。

途中からジャッキーがペンキ屋を勝手にやめてレストランで(最初)タダ働きしていたことを知って家出してしまったベアトリスを取り戻しに行ったり、家庭を顧みず仕事ばかりしてきたラガルドが大学生の娘サロメステヴナンのために論文発表会に行くと言いだしたりと、話が脱線してしまうのですが、まぁコメディ映画なので仕方ないかな。ベアトリスのところになぜかラガルドも一緒に行って、彼女の実家近くのレストランのオーナーに恋しちゃったりするところも良かったな。

全体的にアメリカ映画と何が違う?と言われると答えられないのだけど、フレンチコメディっぽい。フランス語ってだけでそう感じるのかなぁ。特にミカエルユーン演じるジャッキーがフレンチコメディっぽい雰囲気を醸し出している気がする。最近のアメリカ映画に多いおゲレツ系ではないですね。おゲレツ系もそれはそれで好きなのですが。かる~い気持ちで見られる作品です。ただ料理にもう少しスポットが当たっていたら嬉しかったのだけど。

ジャンレノが堅物でちょっとなんだかどんくさそうなシェフを演じていて、最初は少し違和感があったのですが、だんだんハマってくるのはミカエルユーンとの相性が良かったからなのかなー。

ワタクシは分子料理より昔ながらのフランス料理のほうがいいな。


シンデレラ

2015-04-28 | シネマ さ行

本編の前にある「アナと雪の女王」の短編に魅かれて見に行こうと思っている方も多いと思います。ワタクシはどちらにも興味があったので行ってきました。

まず「アナ雪」のほうですが、すごく可愛らしかったです。風邪を引いたエルサがくしゃみをするたびに現れるちっちゃい雪だるまが可愛くて、またそれに名前をつけているオラフが最高でした。「BANANA HIPPY HAT!」も笑った。本当の続編のほうは来年か再来年になるのでしょうか?もそれまでこの短編で我慢です。

さてさて、「シンデレラ」本編。物語はもう誰もが知っている王道のまさしく“シンデレラストーリー”というやつなんですが、シェイクスピアを大胆にのびやかに演出するケネスブラナー監督がどう料理しているのか?それが一番の楽しみなところでした。

まずはエラ(のちのシンデレラ)リリージェームズの生い立ちから。両親に愛され幸せいっぱいで動物が大好きな心優しい娘に育っていたエラは母親ヘイリーアトウェルを病気で亡くしてしまいます。お母さんは最期に「いつも勇気と優しさを持って生きるのよ」と言い残します。お母さんのその言葉を守りながら成長していくエラ。お父さんベンチャップリンと2人でも幸せに暮らしていましたが、まだ若いお父さんは再婚することにしました。お父さんの幸せを願うエラは再婚を心から祝福していたのですが、やってきた継母のトレメイン夫人ケイトブランシェットと2人の連れ子ドリゼラトリーマクシェラとアナスタシアホリディグレインジャーにはあまり良い印象は持てませんでした。しかし、お母さんの言いつけを忠実に守るエラはそんな彼女たちにも常に優しく接することを心がけていました。そんな時、お父さんは仕事先の外国で病に倒れそのまま亡くなってしまいます。残されたエラは意地悪な継母と姉妹たちに徐々に召使のようにあしらわれるようになっていきます。

と、ここまでの成り行きを丁寧に説明して、ここからはみんながよく知っているシンデレラのお話に入って行きます。ここからはストーリーの説明は必要ないかと思います。

上映時間113分。正直言って不安だったんです。筋は知っているし、お姫様の童話なわけだし、いまさら113分も眠くならずに見られるのかなー?って。ところが、見ていてまったく退屈しませんでした。その理由はいくつかあると思います。

まずは衣装や小道具が素晴らしいこと。衣装はたくさんの映画の衣装を手がけているサンディパウエル。義理姉妹の常に色違いの衣装や、継母のグリーン(嫉妬のグリーンかな?)を基調とした衣装の細部の凝りようが素晴らしいです。そして、シンデレラの屋敷の水鳥のシャンデリアや舞踏会のシーン。もっとゆっくり細部に渡って見たくなります。

再三登場する「勇気と優しさ」というこの作品のテーマも、いつの時代にも通じる大切な人としての要素だと思います。それをシンデレラが嫌味なく体現しているところが良かった。

王子リチャードマッデンとシンデレラがパッと見の印象や外見、富のあるなしなど関係なくお互いのパーソナリティに魅かれあったというのも、現代的な設定になっていてとても良かったと思います。シンデレラが残したガラスの靴を履くまで舞踏会で会った女性だと分からない王子のことをワタクシはずっとアホだと思っていたのですが、この作品では、靴を合わせる前にシンデレラがきちんと自分が森で恋に落ちた女性だと分かっていたのも好感が持てたところでした。王子のキャラクターも“プリンスチャーミング”という添え物としてだけでなくきちんと描かれていました。

継母の男性に頼るしか生きていく術がなく、そして自分の娘たちにも同じような幸せの形しか願うことのできない愚かな母親という悲哀を表現するのにケイトブランシェットの演技力が必要とされたのだと思います。「だからと言って私への仕打ちは酷すぎるわ」とシンデレラがきちんと面と向かって主張するところも良かったし、それでもあなたを許すというのはさすが良い子ちゃんだなぁと思ったけど、それが「勇気と優しさ」というやつなんでしょう。

唯一の難点としてはフェアリーゴッドマザーがヘレナボナムカーターだったことかなぁ…なんかねー、申し訳ないけど彼女って意地悪なイメージが強い。こればかりはケネスブラナーのブラックジョークか?ディズニーへのささやかな反乱か?と思っちゃいました。他にももっと優しそうな女優さんいるのになぁ。かぼちゃの馬車やシンデレラが可愛がっているネズミたちが馬になるシーンは素敵でした。耳がでかくて丸い変身途中の馬が可愛かった。トカゲ男はちょっと気持ち悪かったけど、そういうのを気持ち悪いと思わないのがシンデレラの良いところなんですよね。お母さんが遺してくれたドレスの面影はどこへやら?とは思いましたが…

ささやかな反乱と言えばグリム版で義理姉妹たちがガラスの靴に足を合わせようとつま先やかかとを切ったりしますが、(先日見た「イントゥザウッズ」には入っていた)ケネスブラナー版でそのシーンが入るのかな?と期待していたんだけど、そこはさすがに入れなかったようですね。

最後に主題歌の「夢はひそかに」と「ビビディバビディブー」をちゃーんと流してくれて、あ~また素晴らしいディズニー映画だったわぁと思わせてくれたケネスブラナーの才能に惚れ直しました。