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シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

さよなら渓谷

2014-09-09 | シネマ さ行

公開時、集団レイプ事件の加害者と被害者が夫婦になっている話。と聞いて、は???と思ってまったく見る気がしなかったのだけど、今回ケーブルテレビで放映していたので見てみることにしました。

んんん…まぁ映画作品としては悪くないんではないでしょうか。この作品に出てくるこの加害者と被害者がなぜ一緒にいたのかという部分の説明はきちんとできていると思う。このお話の中の説明は完璧だと思う。ただどうしてもどこか割り切れない、もやもやする、という感想は残る。頭で理屈は分かっても心がついていかないとでも言おうか。そういう感じ。

この尾崎俊介大西信満とかなこ真木ようこの内縁の夫婦の過去は思わぬところから明るみに出る。彼らが住むぼろアパートの隣の家で幼児が母親に殺され母親が逮捕され、尾崎がこの母親と不倫関係にありその子どもを殺すよう教唆したのではないかという容疑がかかる。そこへ妻かなこが警察に夫はその子の母親と不倫関係にあったと証言したことで尾崎は連行される。この事件を調べていた記者・渡辺大森南朋は尾崎夫妻の過去へと調べを進めていく。

その過程で尾崎が大学時代、集団レイプの加害者として大学を中退しており、その被害者というのがかなこ(本名ではない)だったということが分かる。なぜレイプ事件の加害者と被害者が共に暮らしているのか。徐々に事件以来2人が歩んだ道が明かされていく。

かなこは事件以来、婚約しても事件を理由に破談にされ、その後結婚した相手からは事件を理由に暴力を受け、自殺未遂を2回していた。その後尾崎と再会。大学の先輩のコネで小さな証券会社に勤めていた尾崎は結婚まで考えていた女性がいたが、かなこと再会したことにより2人で堕ちていく道を選ぶ。かなこは尾崎に復讐のつもりで一緒にいたのだろうか。「私が死ぬことであなたの気が楽になるのなら生きてやる。あなたを殺してあなたが楽になるのなら私は絶対にあなたを殺さない」と言うかなこ。“一緒に不幸になる”それだけが2人が一緒にいられる条件だった。

渡辺の相棒記者鈴木杏が言った「尾崎といれば自分の過去を隠す必要がないからなのか」という一言だけはなるほどと思ったが、実際集団レイプ事件の被害者のPTSDがかなこのように消化されるというのはあまりにもファンタジーの世界のような気がしてならない。高校生だった自分を集団レイプした相手と夫婦として暮らし連日のようにセックスをしているという設定にはどうしても納得はいかなかった。それからいくら若かったとはいえ、女性を集団でレイプした男といまの尾崎の人物像があまりにもかけ離れていて、同じ人間だとは思えない。あんなことをする奴がこんな殊勝な男になるかなー?過去の尾崎と現在の尾崎の架け橋がまったくなくて納得いかない。

かなこが警察にウソをついて尾崎を逮捕させたのは、尾崎への復讐心かそれとも「死ねと言われれば死ぬから」とまで言う尾崎を試したのか。実際尾崎は妻の証言は正しいと警察でウソの自白をしている。それはかなこからされることは何でも受け入れるという証明だったのだろう。そして、いったんその証明がされてしまえば、かなこは満足したのか証言を撤回している。警察もいい迷惑だね。

警察に釈放されたあと、テーブルを買い棚を買い気持ちも新たに生活をと思った矢先、かなこは尾崎の前から失踪する。“2人で不幸になる”それだけが一緒にいられる条件だったので、ふと2人で幸せになりそうになってしまったのからなのか。それまでにはかなこも尾崎に魅かれていただろうし、かなこが幸せになるのはいいとしても尾崎まで幸せになってしまいそうだった。それはかなことしてはできない相談だったというわけか。それでもいつか必ずかなこを探し出しますよという尾崎。

最後に渡辺が尾崎に聞く。「かなこさんに出会わなかった人生と出会った人生のどちらを選びますか?」と。映画は尾崎の表情のアップで終わり、尾崎はその質問には答えないのだけど、おそらく「かなこと会った人生を選ぶ」と考えていそうで虫唾が走った。だってかなこを探し出そうとしている男なんだもの。そりゃ会った人生を選ぶでしょう。でもさ、あなたにさえ出会わなければかなこはあんな目には遭わなかったんだからさ、本気でかなこのことを思うなら自分とかなこが会わなかったほうが良かったと思うはずでしょう。でも、結局尾崎は自分の幸せを考えている。そんな気がして吐き気がした。しかも自分がかなこを探し出すことがかなこの幸せとか思っていそう。っていうのはワタクシの勝手な妄想ですがね。。。ここの解釈はそれぞれにゆだねられているのでしょう。ただ尾崎を幸せにしてしまいそうだから出て行ったかなこには溜飲が下がりました。この後かなこには良い人生があってほしい。

この作品で日本アカデミー賞主演女優賞を取った真木よう子ですが、どうなんでしょうね…彼女の演技はうまいのかどうかいまいち分かりません。激しいベッドシーンに挑んでいるという大胆さと演技力は別に関係ないと思うのでね。。。まぁがんばってるよねーとは思うけど。

読み返すと悪口しか書いていないですね。。。完全にフィクション、ファンタジー、として見るならばいいかなと思います。集団レイプの被害者がたとえ15年の時を経たとしてもその加害者と幸せになるなんて妄想爆発のお花畑もいいところだとはっきり言って思っています。でもこのブログでは過去の作品の場合は自分が面白くなかった作品は取り上げないことに決めています。この作品に関してはかなり評価が難しい。でもあくまでもお話として、映画としてはきちんと成り立っていると思うし見ていて色々と考えさせられるし悪くないと思います。見るときは精神的な覚悟が必要かと思います。



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4 コメント

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新たな発見でした (1973papermon)
2014-09-09 17:16:50
こんにちは。去年の僕の邦画1位の作品なんで興味深く拝見しました。

過去の尾崎と現在の尾崎が結びつかない、というの確かに。

原作でも映画でもそこは曖昧でしたが、再会までの尾崎が罪悪感を抱えていたといえ、かなこに傾倒する動機づけが弱いので過去と現在の尾崎が結び付かないのかもしれませんね。

僕は尾崎がかなこに傾倒するのは自分の人生からの逃げでもある、と考えられる描写がもっとあっても良かったと思います。キャバクラのシーンとかありますが、かなこ同様に社会の目が自分が過去に犯した罪から逃げられないほど尾崎も追い込まれているので、罪の意識という免罪符でかなこに逃げ込み、すがり、世間から逃げようとする卑怯さというか。この人間的な弱さは周りに流され罪を犯した過去の自分と繋がるのではないのかな、と。

結果として最後に<尾崎にとって>かなこはかけがえのない存在となりましたが、そのきっかけは必ずしもかなこのためだけとは言えない、自分の都合もあったんじゃないかな~と。

ラストの尾崎の(おそらくの)決意に虫唾が走ったという意見、強烈でした。哀しいかな僕の感性に無い意見。確かにそうだよなぁ~と。かなこの為というより自分のためですよね。

ラスト近く、橋で二人、話すシーンでのかなこの「わたし次第なのよね・・・」の台詞はもう、かなこは尾崎を許していると取れる。解放してあげようと取れる。とりようによってはかなこは尾崎無しで新しい人生を歩めるのかな、とも。

僕、原作小説読んだ直後はこの二人は過酷な運命で結ばれた2人で、いずれ再び逢えるだろうと思って、映画一度目観てもさほど感想変わらなかったんですが、番組の後解説で真木よう子が言ってた様に2度目鑑賞時のトークショーで「多分この2人は二度と交わらないと思う」と真木よう子が言ったのを受けて、確かに感想が変わったんです。真木いわく、全体的に男側の意見は<何時かまた逢える>という意見が多かったみたいです(原作者の吉田修一氏も!)。

この映画、あれこれ考えてると揺さぶられるんですよね。映画としては瑕疵も結構あるように思うんですけど(鶴田真由の存在とか)、そこまで突きつけてくれた原作と監督と演者さんに感謝です。

まだ観れてないんですが、この映画のブルーレイに真木のコメンタリーが特典にあって、男目線にはない興味深い話が聞けそうな気がします。

なんか上手く意見をまとめられて無い気がしますが・・・新鮮な感想でした。ありがとうございます。
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1973papermonさま (coky)
2014-09-11 10:57:36
コメントありがとうございます。

まずこの作品のレビューを書く前にワタクシの基本的な考えを表明しておくべきだったかなと反省しています。

ワタクシはレイプ犯は死刑に値すると心の底から本気で思っています。レイプは被害者の心身を完全に破壊しその後の人生に大きな傷を残す犯罪です。未成年に対する集団レイプならなおのこと。
尾崎に対して厳しい評価をしているのはこのワタクシの考え方のせいかもしれません。

ワタクシの考えに基づくと、尾崎が受けている社会的制裁など甘っちょろ過ぎてちゃんちゃらおかしいという具合に思ってしまうのです。だから尾崎を幸せにしてしまいそうだったかなこがいなくなったことにすっきりしたし、この2人がまた再会するなんて気持ち悪すぎると思ってしまうのです。

自分がレイプして人生を破壊した女性が自分を愛してくれてHappily Ever Afterなんてね…ご都合主義的に思えて。

それならこの作品を取り上げなければ良かったのかもしれないんですが、、、映画作品としては悪くなかったと感じたので。その感想自体ワタクシの主義に反するのかもしれませんが。

記者・渡辺の夫婦のほうにも言及したかったんですが、ちょっといっぱいいっぱいになってしまったので端折りました。あそこはもう少し掘り下げが必要だったと思います。あの事件を調べただけでなんか急に夫婦がうまくいったってのがどうもね。原作にはあるのかな。
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これまた強烈ですU+1F4A7 (1973papermoon)
2014-09-17 12:21:02
レイプ犯に関する私見に再びなるほどと。確かに卑劣極まりない犯罪ですよね。痛みを分かち合えるレベルとは到底思えません。仰る通りだと思います。

原作では記者の奥さんは映画以上に描写無いんですよね。監督はかなこ夫妻との対比として描きたかったフシがありますが如何せん、中途半端でしたね。

またいろんな映画の感想御期待します。
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1973papermoonさま (coky)
2014-09-18 14:37:31
いわゆる“普通の”夫婦よりも尾崎たち夫婦のほうが愛し合っていると表現したかったのかとうがった見方をしてしまいました。

尾崎たちを見て渡辺が奥さんを大切にしようと感じたまでは良いかもしれませんが、あの奥さんにいきなり何の脈絡もなくそれが伝わったのが不自然に感じました。
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