雪香の星月夜日記

山口雪香の歌がたり、ささやき、ひとりごと

夜来香おのづと浮かぶなめらかに吐息洩らせば白き百合のはか

2008-06-26 20:42:38 | Weblog
 夜の百合に。


















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さらひゆく風の流れに身をまかせて髪の先まで生きるいのちよ

2008-06-26 18:34:44 | Weblog

 いのち、という言葉は迫力があり、なかなか使えない。


     さびしさを日々のいのちぞ雁わたる


     罌粟ひらく髪の先までさびしきとき


 ふたつ、橋本多佳子さん。

 世にまれな才気と美貌、境遇にめぐまれた女人が詠う「さびしさ」そして「いのち」


 さびしさが切実であればこそ、「命」が心に迫ってくるのかもしれないと思う。


 俳句は短歌にまして無駄をゆるさない。

 だから、こころの核心をつかんで詠いとった句にであうと、眼がさめるような感動をくれる。


 




  






 

 
 




 


  

  



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ものいはぬ陶の器を鳴らすごと雨したたりぬ女体のなかへ

2008-06-26 13:33:43 | Weblog


 太秦由美子さんという歌人。



      雨降れば庭の夕顔夜もすがら陶器のごとく冷えて咲きゐむ

 

 夕顔の花、源氏物語のゆかりというわけではないけれど、大好きな花のひとつ。

 庭があったころ、この花をいっぱい育てて咲かせた。

 夕方ひらき、夜中三時ころまで咲いて、朝にはしぼむ。


 ほのかな品のいい香りがあって、あおじろい花弁は、ほんとうに陶器のようなふしぎな質感だった。


 夕顔のさびしさと美しさを詠いとる佳詠。


 太秦さんのように、さりげなく心を叙景に託す表現ができたら、と思う。






 
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すこやかなふくらみ持てり心臓のかたちは見えぬ乳房なれども

2008-06-25 20:11:59 | Weblog


  夜。


  虫の鳴き声が聴こえる。

 


  きりぎりすだろうか。










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黄百合伸びて夏あけはなつまぶしさを汗に働く我が視線とす

2008-06-25 17:00:34 | Weblog


 真夏日!


 帰りがけに通る丘や林のあちこちに、いつのまにか百合さまざま咲きのびる。


 午後の晴れた陽射しに、すかしゆりのきいろがきれいだった。



 無事に終わったことに感謝。


 いちにちは、まだ残っているけれど、ひとまずほっとする。













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朝のたまご焼きつつ髪は海の香をとどめたり彼我にうしお寄せくる

2008-06-25 07:45:58 | Weblog


 つゆぐもり。


 鈍いひかりのこもる空。


 こんな日の海は、空と同じいろをしているんだろう。



 いちにちていねいにすごせますように。











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墓のなかすらりと抜けば月光の女人はまさむねのごとうつくし

2008-06-24 21:29:14 | Weblog


 短歌から、すこし視線をずらして俳句をたどる。


 三橋鷹女というひと。以前は関心がうすかったのだけれど。


 というよりも、短歌や俳句は一般に出版部数がかぎられていて、ふつうの本のようにかんたんに私家集が手に入らない。

 限定版は、とうぜん高価。

 図書館でもあらためてあちこち検索し、中央からとりよせということになってしまうから、手の届く範囲でしか味わえなかったというのも理由。


 たまたま最近、三橋さんの代表句が掲載された小冊子を手に入れ、めくってみると、迫力ある句に出会った。


   けんらんと死相を帯びる金魚玉

   何者か来ておどろけと巻貝ころがる

   秋風や水より淡き魚のひれ

   笹鳴に会ひたきひとのあるにはある

   もう一漕ぎ  義足の指に藻を噛ませ



 この張り詰めた詩情が、最晩年の句作というから驚く。


 ずばりと感動の中心を詠いとり、毅然としてこちらを見据える。

 写真の鷹女は明治の美女そのもの。やせがたちの細面、和服を隙なく着こなし、唇をきりりとひきむすんで怜悧なまなざし。

 時代が重なれば長谷川時雨さんなど「美人伝」に書き取りそうな方。

 橋本多佳子さんも彫りの深い美貌だし。




 何者か来ておどろけと……


 息を呑む。心のなかのなにかを掬い取る断定。


 彼女のファン、今も多いということ。そうでしょう……。

 主情は時間を超えて心をつかむ。


 短詩形の俳句。ちいさくて奥深い世界。

 日常から非日常まで含んでひろがることばの宇宙がある。



 心のかたちを迷いなくきりっと詠いとった女人、外見だけでなく、芯から美しいと思う。

 わたしの歌は多佳子さんと鷹女さんの印象。


 










 



 


 






 
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君や知る夕べさざなみ海もまたかなしみ持てば肉体となる

2008-06-24 18:37:19 | Weblog

 ゆうぐれに。



 












   
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少年をそだてし母にあらざれど夏熟るる実のなやましきかな

2008-06-24 07:59:41 | Weblog


 木苺に。



 






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たひらかに食器洗ひぬ愛ののちに拭ふ手の中みづ仕事して

2008-06-23 20:17:21 | Weblog


 ほんの数年だけど、俳句の世界に遊んだことがあった。


 いろいろな俳人の句を読み、なかで橋本多佳子さんが、際立って好きだった。


 このごろ詠うことについていろいろ考える。


 ふと、多佳子さんのことを思いだし、またひきだしてみると、その詩精神の潔さ、的確さ、そして勇気に、あらためてあっと眼をひらかれる。



  月光にいのち死にゆく人と寝る

  雪はげし抱かれて息のつまりしこと

  乳母車夏の怒涛に横むきに

  一ところくらきをくぐる踊りの輪

  いなびかり北よりすれば北を見る

  ……


 ああ、こんな作品が好きだったと思い出す。

 この方の句を読むと、上村松園さんを連想する。どこか似ている気がして。

 十七文字という最短の詩形のなかで、個性をうちたてるのは、短歌にまして容易ではないこと。

 多佳子さんの句から、多佳子さんの心がつたわる。


 


 揺さぶられる。



 画像はまた、アルマ・タデマ













  
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アルファポリス