雪香の星月夜日記

山口雪香の歌がたり、ささやき、ひとりごと

やがて明日虚空およがす指たちの羽得てそれぞれ夢見む弥生

2010-02-27 18:06:36 | Weblog


 明日はまだ2月なのだけれど。




 春弥生。月の異名に夢見月、早花咲月(さはなさつき)、花津月など。



 
 心待たれる爛漫のゆめ。




 なんということもなく、理詰めでなく、想いうかんだ言葉の幻想。








 ひらひらと、ゆびさきから心と言葉が泳ぎ出るような……三月。
















 




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風のおく恋(こ)ほしき速度はらみ来ぬ指組むいのり弾力持てり

2010-02-26 19:16:23 | Weblog

 夕べに。




 風の気配、湿度と気温は昇って、皮膚に触れる密度が違う。



 まだ冬のなごりにつめたい、けれどもなまあたたかい、まとまった気体のかたまり、のような風に吹かれて歩いた。













 ドラセナ、またひとつあたらしいつぼみをつけてくれた。




 先月、ふたつ花を咲かせ、それでおしまいとおもっていたのに。




 つぼみの画像はあんまり見ないかもしれないので、アップ。



 ちいさな八つ手みたいな感じ。つつましい葱坊主か。





 暖かくなってきた気候のためかすくすく育つ。


 一日に、2~3cmほども茎が伸びてゆく。


 来週にはもう咲くかもしれない。









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こゑひそめて髪ほどかむとふかみどりの海より魅する春は匂ふよ

2010-02-25 18:17:21 | Weblog


 如月もまもなく終わる。






 今日、大気には湿った海の匂いが混じる。夕風の気配、輪郭をやわらげて春にじりよる。





 鏑木清方さんの、女人のようなイメージが浮かんで。

























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追憶はほのか夢見るみどりごに母匂ふごと夕風のなか

2010-02-24 17:44:31 | Weblog

 夕暮れに。








 いちばんやさしい記憶ってなんだろう?




 赤ちゃんは、一日のおおかたを眠っている。


 人間だけでなく、仔犬や仔猫も。


 ねむりながら育ってゆく。



 仔犬を育てていたとき、眠っている彼をながめて、何を夢見ているのかな、と想った。



 
 やわらかくてあたたかい仔犬の眠り。










 今日、春の大気は、赤ちゃんのねむりみたいにほのかで静かだった。


 わたしは、じっさいに子育てしたことがないから、ほんとの育児経験は、わたしの歌みたいに甘くはないんでしょう。



 「お母さん」の読者さん、かんにんしてください。








 
 
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思慕滲むみずいろ半月帰去来の知れぬ花降る天上のこみち

2010-02-23 18:04:08 | Weblog


 帰り道。



 たくさんの春の花を見ながら。



 あたたかく、今までの重ね着が、すこし重いような気さえして。




 マフラーをゆるめ。





 あわあわとした、情緒、夕暮れの光のように滲む。




 かたちなく浮き沈む……おぼろうたかた。喜怒哀楽いずれでもない。




 空には、昼の半月がうかんでいた。




 そんなものを見ながら、歩いて帰った。








 桜吹雪のまぼろし。


 杏の花も桜に劣らずさわやかに花びらを散らすことなど、思い出したり。




 
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ゆるやかに胸ひるがへれ虹いろのいつくしみ抱く我は帆舟よ

2010-02-22 17:22:51 | Weblog


 春風に。







 歌うこと……うたうまえは、ほとんど何も考えないでいる。


 自分のなかから、ヴィジョンやイメージをひろいながら、すらすらと流れ出るときと、ずいぶん考えるときがある。


 今日はすらすら。




 春風のなかを戻ってきた。午後の陽射しはもう寒くなかった。




 紅梅、薄紅梅、椿。



 どこかから濃い沈丁花の香り。



 なすべきことは終えたと想う。今日の。






 
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追憶は静寂(しじま)に入る夜のあひかつて臍の緒なりし星屑

2010-02-21 18:51:25 | Weblog

 夜に。











 月光。それから曇のあいまに星の影。





 淡いひかり。彼方にはなお茜いろの夕陽が残って見えた。




 なだらかに済ませたとおもう。できるだけのことを。



 丁寧に。


















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白木蓮夜映えにしるき春のくび汝撲(う)つときに性は潔(きよ)かり

2010-02-20 19:50:33 | Weblog


 マグノリアに。



 まだしばらく咲かないけれど。この近くでは、辛夷のつぼみがようやくふっくらとしてきたくらい。


 白木蓮。わたしの好きな花のひとつ。奥行きふかい、ほのあたたかな厚みのある花色は、白磁のようにきよらかに見える。



 夜さり、帰り道、唐突にその花を想った。



 花郁悠紀子さん。ずいぶん前に若くして亡くなられた漫画家。


 彼女の作品のなかで、この季節「白木蓮抄」を思い出す。


 大正浪漫ふうに、あえかな純情……

 登場人物の造型といい、あらすじといい、少女小説めいた設定。

 クラシカルな、どことなく四条円山派ふうな描線・絵柄とあいまって、わたしは大好きだった。


 どこかとおくの物語。


 現実の記憶よりも濃い抒情をくれる思い出。






 夜空はしんと澄んで、なおオリオン輝く星月夜。



 春が待ち遠しい。








 
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つとめ終へてちひさき星の光るごとやさしい声の残る両手(もろて)や

2010-02-19 19:16:48 | Weblog


 「疲れたでしょ、もういいよ」



  そんな言葉を今日いただいた。



  その方は、わたしを逆にいたわってくださった。


  重いでしょ? など……。


  「仕事ですから、お気遣いなく」


  わたしは答えたのだけれど、何度もいたわられ、ちょっと困ってしまった。




  うれしかった。


  感謝の言葉を目当てに働くわけではない。

  
 「ありがとう」という言葉は、簡単なひとことだけれど、ほんとうに心をこめて伝えられるのはなかなか……かもしれない、と感じる。


 介護職は守秘義務厳守だから、今のわたしの力量では、具体的なシチュエーションはほとんど歌わない。


 ずっと、現実詠は苦手だった。 今も。


 ここからさき、わたしの歌も輪郭と声調を変えてゆくかもしれない。



 一日の出来事をふりかえるとき、こころに少しずつ、よいものがたまってゆくのを感じる。

 それは、したたるようにうれしい。



 わたしの手で、なにができるかなあ、と迷いながら過ごした数年。


 いろんなでこぼこがあったし、これからもたくさんあるだろうけれど、ずいぶん進歩したね、と自分のの手にささやく。


 手は心。



 そのひとの声をとどめる。











 
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ゆくりかに微光松葉の匂ひ射すさやかに消ゆる雪とふるさと

2010-02-18 17:47:09 | Weblog

 春の雪。



 朝方ふりしきり、ずいぶん積もるかと想ったのに、昼すぎから陽射し照りつけ、今はもうあとかたもない。



 向かいの山など、樹影くきやかに白かった。


 アスファルトの雪などは、たちどころに消えてしまう。


 雲が割れて薄日さした午前中に出かけたら、もう雪融けの滴りが、あちらこちらの軒から伝う。


 ふっと、どこからともなく、松林の匂いがした。それは、たぶんわたしの思いなし。


 このあたりに香りたつほどの松はないから。



 

 A・ワイエスの絵のいくつかを思い出す。


 針葉樹の森の大気の記憶は、たぶんわたしの脳のどこかにしまいこまれていたものだろう。



 回想、というほどにもさだかでない、一瞬のノスタルジア。



 雪融け、松林。












 どこか遠くの追憶の巣。
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アルファポリス