マグノリアに。
まだしばらく咲かないけれど。この近くでは、辛夷のつぼみがようやくふっくらとしてきたくらい。
白木蓮。わたしの好きな花のひとつ。奥行きふかい、ほのあたたかな厚みのある花色は、白磁のようにきよらかに見える。
夜さり、帰り道、唐突にその花を想った。
花郁悠紀子さん。ずいぶん前に若くして亡くなられた漫画家。
彼女の作品のなかで、この季節「白木蓮抄」を思い出す。
大正浪漫ふうに、あえかな純情……
登場人物の造型といい、あらすじといい、少女小説めいた設定。
クラシカルな、どことなく四条円山派ふうな描線・絵柄とあいまって、わたしは大好きだった。
どこかとおくの物語。
現実の記憶よりも濃い抒情をくれる思い出。
夜空はしんと澄んで、なおオリオン輝く星月夜。
春が待ち遠しい。