照りもせず曇りもはてぬ春の夜のおぼろ月夜に如(し)くものぞなき
大江千里 新古今集 巻一
もうじき如月。すこし早いけれど、こんな和歌が、もう脳裏をかすめる。鎌倉市外では季節を問わず、和服姿の女性が多い。あちこちの古刹でお茶席があるからだろう。
通りすがりに、そんな女人たちを眺めるのはたのしい。ことに、後姿がうつくしいひとは。帯の締めかた。抜き衣紋、襟足のきれいさ、など。
冬だから、みんなまだ被布をまとい、襟巻き、肩掛けに装っているけれど、あたたかくなれば、それぞれのお人の長着と帯の選びようなど、傍目にもたのしめる。
紫式部も、その日記のなかで、宮仕え女房たちの衣装、重ねの色目など、こまかに描きこんでいる。
そんなとつおいつ。