雪香の星月夜日記

山口雪香の歌がたり、ささやき、ひとりごと

放射能ほの添ふ雨にあるがままいのち委ねて濡るる春かな

2011-03-31 19:23:12 | Weblog




 福島原発が廃炉になるという。


 当然だとおもう。数々のいたましい悲劇をひろげて…。そのあがないは、どこまで実現できるのだろう。


 湘南にさえ微弱だけれど、汚染の伝えあり、今日の春雨にもつくづくと空を見る。


 日常のつとめはすきまなく終えなければならない。

 必要以上に神経を騒がせるのはもってのほか。









 ベランダの植物たちはめきめきと勢いづき、若葉をひろげている。初々しい黄緑がうつくしい。

 ……一雨ごとに春になるよ


 昔読んだ北欧の童話、「ニルスの不思議な旅」のなかで、渡り鳥たちは春になると、こんなふうに歌いながら飛ぶのだったっけ、などど思い出したりする。


 桜も、返る雁がね、白鳥も、そして人の営みも、避けることのできない災いを身に受けて季節をわたる。



 百年後、わたしたちの子孫は、どんなふうにこの時代を眺めるんだろう? 

 愚行への非難や批判はかんたんだけれど、廃残から立ち上がり、気力を尽くして復興への道のりを戦い抜いた有名無名のさまざまをも、見つめてくれたら……なんて、ちょっとなまいきだろうか。





 





 
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なめらかに花の曲線圧すごとく夕暮れ滲む手にひき据ゑよと

2011-03-30 16:56:54 | Weblog


 春の夕暮れに。








 今日はお休み。いろいろ整理を始める。





 計画停電、中止になり、静かな黄昏は音もなく、ゆっくりとひろがってゆく。






 この季節にいつも、たびたび思い出す和歌いくつか。


   けふ暮れぬ花の散りしもかくぞありしふたたび春はものを思ふよ      女御殿百合花(前斎宮河内)


 もう何度か引用したと思う。





 花の散りし……過去形だから、この百合花が心の眼に移している花は、過ぎ去った日々の花なんだろうと思う。

 かくぞありし……このようだった……幾重にも言葉に襞をふくませて、彼女のつややかな内面はおぼろにしかつかめない。


 それがまた、おっとりした好ましさなのだけれども。





   






 
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前進のちからみづからひたむきに残骸超ゆる桜花(はな)ひらき初む

2011-03-29 19:42:01 | Weblog



 帰り道、咲き初めた桜を見た。




 3月11日以来、被災地には文字通りの驚天動地、悲劇、瓦解の日々だったことか。



 数々の悲惨、心から痛み、いくばくなりとも、その苦痛を分かち合いたいと願いました。そうでないと、日々綴る歌や詞書が空疎になってしまうような気がして。





 このごろ、ラジオや新聞から伝えられるニュースは、立ち上がろうとしている現地、現場の方々の奮闘。




 長い長い忍耐と試練が待っている。それは直接の被災者だけでなく、日本じゅうのすべてのひとに投げかけられる「問い」かもしれないと感じる。


 桜の開花を見たとき、甲子園で青春を燃焼している球児たちのひたむきさと、ただ前へ向かって進んでゆこうとする自然のエネルギーを思った。









 立ち上がって、力強く歩き出してくださいますように。かなしみ傷ついたひと、病に伏している方、


 光りがありますように。






 
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さすらひに踏み出づるひと胸いたく破壊尽くしてなほ海のある

2011-03-27 19:02:34 | Weblog


 これは、数日前に詠いとどめておいてもの。




 被災地を逃れて全国各地へ避難するというひと、あまた。

 その胸のうちはどれほどのものかと思う。




 わたしていどのちいさな脳みその持ち主の綴り方で、あだおろそかには…。


 たださきざきの仕合せ、幸せを祈るばかり。







 今日は御ミサにあずかり、短いひととき、さまざまな思いめぐらしをして戻ってきた。


 教会も節電のために暖房をきっていた。


 入り口に手作り、手書きの募金箱。わたしもささやかに貢献。









 髪をあらって、それを乾かすまでと、入浴の前後は暖房をつける。そのあたたかさが、一日の時間の流れのなかで、くっきりと感じられる。



 

 


 
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薔薇玉(ろざりお)に唱はぬ春は面(おも)伏せて白磁のごとく静かに揺れむ

2011-03-26 20:40:42 | Weblog



 ざわめいて日々がすぎる。

 のどかにも謳歌できない今年の春。





 敬虔な……という地平には遠い今の有様なのだけれども、聖堂の静けさがなつかしい。






 今日も、できることは勤めたと思う。無事だった。









 過ぎ行きに感謝。



 ちいさな、ひとつづつの見極めをしながら、日々をこなしてゆく。





 
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分かちえぬ痛みと知りつ避難所にまた雪の降る死者の増すかも

2011-03-25 20:16:53 | Weblog



  ……。



  早く暖かくなるといいのに。













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雲の名を問ふて行かまし草原にシロツメクサはいつも編まれて

2011-03-25 19:56:45 | Weblog


 停電の仄闇のなかで浮かんだ情景。




 クローバーやしろつめくさの季節は、まだずうっと(?)さきのよう。



 まだ寒い。明日はまた雨雪もよいとか。


















 
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四旬節十字架耐ふる子羊へかなしみ添ふる祈りめぐらす

2011-03-24 16:50:47 | Weblog


 いつのまにか四旬節。ちょうど今の季節は基督の受難への祈りを捧げる季節。

 忙しくて、という言葉はよくない…(心が亡くなる、という字なので)あまり使いたくないけれど、ここしばらく御ミサにもあずかれない。


 もうしばらくして復活祭。





 介護のおつとめをはじめたころ、いろんなことで思い迷って、途方にくれると、なんとなく大聖堂に行って、ぼんやりしていた。


 何かを真剣にお祈りしたということではなく、自分の心のありかを、静かに見定めたくて。





 以前なら、とうていこなせない、と思っていたことなど、今は、すこしずつできるようになってきたかもしれない。


 百年にいちどの世界同時不況、また昨夏の口蹄疫騒ぎからこの震災まで、日本は「受難」の季節。




 停電の静寂、ものの気配が途絶えた空間に入り込むと、たびたび聖堂を思う。






 原発、余震、水の汚染と、苦しい状況が続く。





 それでも、復活をめざして、傷ついたひとびとや、日本は歩き出している。

















 
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霧雨のつつむろうそく火あかりに母濡れしごと揺るる星空

2011-03-22 18:51:58 | Weblog


 さっき、ちいさな余震。







 一日、空には濃い、また薄い雨雲がゆっくりと動き、傘をさしかけるほどでもないが、濡れれば冷たい霧雨が降り続けた。



 午前中停電あり、そのとき、ふと浮かんだ。



 



 被災地、避難所の方の状況はとても苦しいそうだ。


 暖かい春、早く訪れて、と願いながら。

























 
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青い麦膝を抱へて潮の香のゆくへに思慕を問ひし季節も

2011-03-21 19:06:28 | Weblog

 コレット「青い麦」に。




 シドニー・ガブリエル・コレット、大好きな女流のひとりだけれど、日本ではあまり読まれないのもしれない。


 サンド、コレット、サガン…それからデュラスという、フランス女流独特の系譜。



 たくさんの著作を残した中で、わたしは彼女の若い時代の小品、「青い麦」を愛読していた。

 特にドラマティックとはいえないけれど、みずみずしい青春小説のおもむきで、繊細でこまやかな描写がこのましかった。





 主人公の少女は小麦色に日焼けしたおてんば娘で、幼馴染の少年を好いているが、その気持ちを素直に表現できない。

 彼女は濃い青い目をしていて、瞼を閉じていても、薄いきれいな瞼の皮膚を透かして、その瞳の青が映った、という……くだりをいつも思い出す。


 そうして、夕暮れになると、湿った夕風が、満ちてくるうしおの匂いを伝えて……という描写なども。


 雨の匂いに、またそんなことを想った。





 今日も無事に勤め終えた。




 感謝。















 
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アルファポリス