雪香の星月夜日記

山口雪香の歌がたり、ささやき、ひとりごと

霜月は死者恋ふる月閉ざされしひと部屋に棲む少年少女

2008-10-31 21:10:38 | Weblog


 死者……追憶のなかでは、過去の自分もまた死者のひとりかもしれない。


 亡き人と、今の自分ではない少年、あるいは少女。


 連続していながら、時間軸のかなたに遠ざかった存在。




 少年、少女。早熟で未分化な季節。



 
 

 
 



 
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御思(みおも)ひはまた夢なれや野火ともす冬は明日から死者しのぶ月

2008-10-31 21:02:42 | Weblog


 11月は「死者の月」


 なきひとを思う月。



 この一年の長さと速さ。


 なんて密度の濃い一年だったろうか。


 
 リルケ、というと浜田到さんを思う。一時はこの方に傾倒した。

 今でも好きだけれど、以前より距離ができた。



 彼の散文詩のほうが好きになった。


 ……ひたむきに詩を生きているあなたの心のほてりが寒くちぢかんだわたしの心さへ温めてくれました。それ以来洗濯――あなたの口より、この言葉を聞くたびに、私の心は温かく綻びるやうになりました。

                          1942年12月10日の日記


 いかにもリルケというか……簡素なロマンティシズム。たとえばハンマースホイの絵のどれかに添えてもよさそう。

 とはいえ、彼の絵にはあたたかさはなかったけれど。光の差し込む部屋の絵などに。





 


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絃はじくゆびごとに水したたりて夜うるほひぬされど恋する

2008-10-31 18:24:05 | Weblog


 また三味線をひきはじめる。


 なにかのかたちで、音楽に触れていると、こころがひたひたする。



 指先から水がしたたるように踊れ……昔はそう思って手をやわらかく保った。


 今は、自分のつむぐ音がそうであればいいと願う。


 したたるようないい音で。


 わたしの細棹の音色は、まだかたい……。



 この歌の結句にも言い訳がいるかしら。


 恋する……音楽に。そう思ってください。



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やはらかに薄紅包む罪いろも野にはあらしめよ山茶花の咲く

2008-10-31 08:23:42 | Weblog


 あるがままに我あらしめよ卓上の白き山茶花反りて散りたり


                             高橋希人さんから


 あるがままにある。

 ナチュラルであること、自分のなかにいろいろな物思いや限界、煩いを見ることもある。

 

 にんげんだから。

 相田ミツヲさんの「決め言葉」が、実感として身近な日々。


 今日もいちにち、できることを遂げよう。


 ずっとそう思って歩いている。



 もたもた。



 山茶花がきれいだ。白に浮かぶほのかな紅色、少女の頬のよう。


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白い扉(と)のあなたに虚無はひそみたり口腔(くち)ひらくイーダのくびをめがけ

2008-10-30 20:57:32 | Weblog

 ハンマースホイを観て。


 わたしは、すこし怖くなった。


 だって、この部屋、静かな沈黙というよりは、凝縮したなにかが緻密につまっていて、描かれているイーダやそのほかのひとびとよりも、つめたく呼吸をしている。

 まるでホラーハウスみたい。


 光射す扉のむこうがわ、あたかもスティーブン・キングの「シャイニング」のように何か得体のしれないモノがひそんでいそう。


 半開きの白い扉は静かな沈黙をささやく口のようだし、壁にならぶ二枚の絵は、目のように見える。

 
 そしてそこに後姿でたたずむ、あるいは坐っているイーダは、まるで部屋の奥へと吸い込まれるか、食べられてしまいそうな感じ。

 かすかにしなをつくった彼女のうなじは、ストイックな画面のなかで、唯一のエロスを漂わせるけれど、その清潔なしろさが「虚無への供物」のように思える、といったらおおげさだろうか。


 でも、好きな画家だ。ポスターを観たときからとても心ひかれていた。


 アンドリュー・ワイエスのように、この画家も空気を描くから。

 おさえた色調と。



 詩情……?


 空間のシュールレアルなささやきを聴いた午後。






 
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はつ雪は手触れぬ映像追憶よ白磁のごときつめたきくれなゐ

2008-10-30 08:28:17 | Weblog

 朝、PCを開いたら、いきなり青森で初雪のニュース。

 PCではないけれど、それから立山でも。


 
 初雪はどきどきする。すこしわくわくする。このあたりは、こどものころと変わらないな、と思う自分の感受性。


 湘南に雪が降るのはまだずっと先だ。来年かも。

 何年か前、まだ海辺にいたころ、大雪の朝、家庭ごみを出しに外にゆき、そのまま海岸へ行って、海に降る雪を見ていた。

 それは言いようのない景色だった。

 
 視界いちめんに雪がふりしきり、海面も数メートルさきから、雪曇りにかききえ、そのさきがみえなくなっていた。


 間近の渚に、銀鼠いろの波が打ち寄せる。


 しんしんと降る雪に吸われて、波のざわめく音の輪郭さえぼんやりしていた。


 みつめて……そんなに長い時間ではなかったはずだけれど、すぐもどるつもりで部屋を出た薄着のわたしは、ぼんやりたたずんでいる間にすっかり凍え、あたりまえだけれど大風邪をひいて熱を出し、一週間寝込んだっけ。

 でも、心にあざやかに残る画像。


 それを思い出した。


 青森では紅葉に雪が積もったそうだ。


 つめたいくれなゐ。


 とてもきれいだろう。
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海は弦にうち寄せやまずジャクリーヌの唄ひびく夜は藻のごと揺れて

2008-10-29 19:25:17 | Weblog


 デュプレの小品集をひさしぶりに聴いた。

 今日は、ケアが一本だったので、すこしからだによゆうがあった。

 それで、チェロをたどたどしくおさらいし、疲れて、でも気持ちが高揚していたので、思い切ってジャクリーヌのCDをかけた。

 マリ・テレーズ・フォン・パラディスのシシリアンヌが流れ出すと、思わずためいきが出た。

 なんてやさしくって優雅なんだろう。さっきまで鳴らしていた自分の音とは、月とすっぽん。

 あたりまえだけど。


 やわらかくて、つつみこむようなふくよかさ。


 フランス革命のころ生まれたパラディスはうまれつき盲目のピアニスト。そうして、この一曲のたおやかな作品を残した。


 このパラディスで踊るのが好きだった。いくつかの芝居のあとのご挨拶に、踊ったっけ。

 椿さんのチェロで、もちろん。



 チェロでも、わたしもずいぶんお稽古したけれど、デュプレのたおやかな唄には程遠かったろう。


 また弾けるだろうか。今はときどきしかチェロに触れない。でも鳴らすと、下手でもほっとする。


 

 優雅さは学べない、それは天性のものだ。


 これはヴァツラフ・ニジンスキーの残した言葉。


 英国の薔薇とうたわれた美貌のチェリスト、デュプレ。

 どうしてひとは、美しいものをおとしめたがるのか?

 彼女の音楽のやわらかさ、優雅を味わってほしい。もっときれいな心で。



 それにしても、ようやくジャクリーヌが聴けるくらいに元気になったのかな、と思う。

 さまざまな時のかけらを踏んで。






 
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薔薇おほきなる虚空保(も)てり欲情は透明にして秋雲わたる

2008-10-29 08:26:16 | Weblog


 今朝の空はとてもきれいだ。雲がまぶしい。ながれる。


 思ったまま。



 透明な薔薇のような大空。



















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梳かすたび髪のどこかに問ひのこすエロスも悪も少女なること

2008-10-28 17:11:10 | Weblog


 日本の悪と西洋の悪とはちがう。


 でも、森茉莉さんふうに詠えばこうなるだろうか。


 つくづく茉莉さんはしたたかな「作家」だった。矢川さんが心酔したのも無理はない。


 

 『闇の守り人』読み終える。あとがきを読んだら、シリーズ中では、やっぱり大人に人気のある作品とあった。

 
 『精霊の守り人』でも感心したのだが、上橋さんは、武芸のたしなみがおありなのだろうか。戦闘シーンの描写がいい。とてもいい。


 吉川英治さんの『宮本武蔵』を思い出した。

 女性作家で、これだけきったはったを切迫してえがけるひとは珍しいのではないかしら。

 善悪のからみが単純でないところ、いいなと思う。苦さと、適切なカタルシスをくれる。

 ちいさいころ、夢中でファンタジーに読みふけった経験を思い出す。


 本の世界に入ってしまって、なかなか現実にもどれなかった。エンデのことなど。バルタザアルとかも。




 


 

 
 

 
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鳥たちよ赤い実を野に散らすごとかくれなき思慕わたしにもある

2008-10-28 08:38:48 | Weblog


 ピラカンサスを見て。


 秋から冬へ。鮮烈な朱色、赤色、朱華(はねず)いろ……あたたかい色が目にしみる。紅葉は言はでものこと。


 ピラカンサスは小鳥たちの台所、誰かがそんなことをお書きだった。野鳥の本だったかな。


 
 鳥たちがにぎやかにさえずりながら、木の実をついばむ。


 雀、セキレイ、四十雀。


 秋のあかるさ。






 


 
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アルファポリス