偶然、とおりすがりのマーケットで、優雅な魚にひとめぼれしてしまった。
ベタ、という小型の熱帯魚。ゆらゆらと濃青の長い鰭ふり、水中におっとりと浮き沈むムーヴメントが綺麗だ。綺麗、という漢字がふさわしい、装飾的な姿をしている。
全身深いラピスラズリの光沢に、腹部から尾鰭にかけて、面相筆でいっぽんづつ描いたような繊細な緋色の筋模様がこまかに光る。
「闘魚」だと聴いた。
穏和な動きなのに、同族であれ、他種であれ、自分のなわばりに入ってきた魚には攻撃をしかけてやまない。
雄はもちろん、雌でも譲らない。だから、水槽には一匹づつ飼うのが原則という。
メダカと同居なんてとうてい無理だから、その場で、ガラスの水鉢と、水草も購入。
気が荒い、という感じでもないし、きっと、この子の住まう環境には、危険な天敵が多くて自衛本能なんだろう。
メダカとおなじ餌をやったら、ゆっくりのんびり食べている。
こわいところなんかどこにも見えないなあ……
そういえば、つぶさに眺めるとしっかりした顎をしているかな…。
人気の熱帯魚らしくて、わたしが買った子が、店頭販売の最後という。
飼いやすい、それも人気のひとつみたい。
冬の寒さにだけ気をつけて、と念押しされた。
メダカも元気。この子も長生きしてくれるといいな。