最近読んだ本。
この2冊とも、やはり母の書架から。ほとんど外出しないが、蔵書のおかげで充実している。
最初に「貞明皇后」を読み、その中に引用されていた「女官」に手を伸ばした。両方とも母の蔵書だから、歴史とアリストクラート、セレブが好きな彼女も同じように興味を広げたのだろう。
どちらも面白かったが、私は平安文学を専攻したので、ことに明治宮廷に出仕した山川三千子、桜木内侍の自伝にウットリしてしまった。そこに描かれた明治天皇、昭憲皇太后、一生奉公原則の高級女官たち、その女官にまた使える侍女団の様子など、まさに紫式部日記や源氏物語の精神世界そのものだった。流麗でやわらかな、それでいて平易な桜木内侍の文体も立派なものだ。賢い女性だったに違いない。
「貞明皇后」の読後、あらためて日本の近代史に惹かれて、同じ作家の別な著作を今は読んでいる。
セレブリティは、時代が変わるととかく評価や褒貶が変化するが、「貞明皇后」は丹念な敬意を捧げながら皇室のデリケートを描いている。読者としては、その誠意に好意を持つ。
これも良い出会いだった。
花壇の手入れをしながら恵みの雨を待つ穏やかな日、全てに愛と感謝。