ペンによる大公の聖母子擱筆。
ラファエルロの最高傑作のひとつ。
この聖母像の感動の中心は、衣装やディテールではなく、原画でなら吸い込まれるように美しい色彩調和と、神秘的で典雅な聖母子の容姿、ことにマリアの美貌だろう。微笑とも憂いともつかない、謎めいて、慎ましく、そして聡明さをかんじさせる顔。
ラファエルロのほかの作品、またボッティチェルリなど、衣装や装身具、背景のさまざまを緻密に描写する場合、鑑賞者のまなざしは、イコンからあちこち拡散して楽しむ、あるいは感動することになる。
しかし細部の描写が巧みであっても、中心となる人体に魅力がなければ、感動は少なくなる。
たとえは、画業の最盛期からボッティチェルリなどは細密表現を好んでしているが、メインテーマを担う人物は、そうした舞台装置、衣装に負けずにこちらを魅惑するのはさすがだなあ、といつも感動する。
大公の聖母子は、小道具だてを極力なくして聖母子だけを描く。
シンプルで、いつまでも惹きつけられ続けるイコン、と思う。
それで、私のアンテルプレットも思い切ってメインテーマだけにしぼった。
私の作品の別名は、薄明の聖母子、としようか。
実際、夜明けに仕上げたので。