雪香の星月夜日記

山口雪香の歌がたり、ささやき、ひとりごと

百年の眠り覚まして大島のひたと背に添ふ織りの確かさ

2013-02-28 18:14:30 | Weblog


 このごろ、和服で外出が多い。


 和装日記、というわけではないけれど、昨日、未明さんを椿山荘に訪ね、その時にも長くしまわれていた泥染め大島紬を選んだ。

 雨で裾周り足元を気にしなければ、相当な寒中でも、着物はあたたかい。

 なにより背筋がきちんと伸びる、それが心地よい。



 とても地味な大島に、錆朱の織り名古屋帯を合わせ、帯締めはおだやかに渋い紫。


 地味ではあるけれど、地紋のエキゾチックな織りの幾何学模様は、どことなくシルクロードを旅してきたペルシャ、インドのそれを偲ばせる。


 祖母はこれをいちども纏わなかった。



 躾糸がすこし残る。その糸さえ、手触りあたらしい。


 それでいて、古い防虫剤の樟脳や、昔の箪笥の匂いがしみついている。



 いそがしい時間を割いてくださった未明さんの眼に、また、場所柄にふさわしく、自分自身も誇りかに心地よいように、着物を選ぶ心はたのしい。




 髪には、銀の平打ちかんざしを挿した。これはアンティーク。江戸時代のもの。

 すっかり黒紫がかり、それこそを「燻し銀」という、と聞きました。


 




 待ち合わせの場所に御主人と現れた未明さんは、黒地に白梅を大きく絵羽に描き染めた華やかな訪問着、あるいは付け下げだったろうか。若々しい袖の印象は、留袖とも見えなかった。金襴西陣の袋帯に、緒〆も相応に華麗。帯には漆骨のお扇子をきちっと斜めに差し、総模様の刺繍半襟。

 カフェテラスのお客がいっせいに彼女を振り返るような礼装で、御主人もスーツ姿で並ぶ、いったいなにごとか、とわたしは驚いたが、御夫妻で、これから花嫁衣裳の試着とか。



 しばらくお茶をいただいて、初めて親しく言葉を交わしたご主人も丁寧で礼儀正しく、こちらを気遣ってくださる。


 御主人が未明さんをだいじにしておいでの気配は、傍目にはっきりと見えて。

 未明さんも「兄ちゃん」と甘える。





 いろいろな時間、出来事を経て、縁を結んでゆく方の姿を眺め、幸福にと願う。


 この日も、前を向いて、身だしなみ調え、美しい未明さんでした。


 






コメント

半襟の絹うすうすと古びたれど紅絞る雛の晴れ着に似たり

2013-02-25 10:28:38 | Weblog



 昨日、麻布で、歌人徳高博子さんの、歌集『ローリエの樹下に』読書会があった。

 御本をいただき、きれいな詠草の数々に、心ひかれ、参加させていただいた。



 日曜日の午後しばらく、浮世のさまざまを離れ、歌のことだけさまざまに語る。


 「未来」や「玲瓏」所属そのほか、三十人ほどの歌人がお出でだったろうか。



 それぞれの方が、いろんな感受性で読み込んでいらっしゃるのに耳を傾けた。




 たまさかのこと、この日も着物でうかがったのだけれど、どなたかに、半襟を誉められて、そのときの気持ちを。

 刺繍半襟ではなく、どこかの古着屋さんで見つけた匹田絞りの端切れを縫い重ねたもの。


 ずいぶん昔のものと見えて、洗い針を重ねたのか、手ざわりもろく薄く、和紙のようだった。

 若い娘の衣装だったに違いなく、紅の絞り地紋に青い蝶々が飛ぶ。

 わたしの選んだ長着は、木賊色の地に細い縞を描き、そこに帰る雁の小紋。

 袖に少し覗く裏地は辛子色。

 地味なので、半襟だけ、華やかに、と。

 
 雛の季節、読書会の会場となった国際文化会館のロビーには、五段飾りの雛人形が飾ってあった。



 いろいろなことが、一枚の衣装をめぐって思い出となる。














 


 
 
コメント (2)

耳と頬のあはひに残るおくれ毛の柔(やは)き去り際ふゆの雨の音

2013-02-18 12:00:59 | Weblog


 冬の終わり近く……?



 まだ?








 そうと思えば雨音も柔らかく聴こえる、ような。





















コメント (2)

ガラス扉(ど)にすらりと立てり寒椿北風を抜くたましひは紅(べに)

2013-02-17 13:48:26 | Weblog


 寒椿に。


 


 昨日、歌人の保田斐佐子さんと、長谷のある喫茶店でおしゃべりした。


 「未来」参加の縁でお知り合いになり、住まいが割合に近いこともあって、ときおりお会いして、四方山ばなしをする。

 いつも、歌のことが多い。それはわたしには楽しい。


 気ままにひとりで歌い始めて、どこの師承も受けず、口ずさみしてきたので、系統だった近現代の流れを知らないわたしは、この方とのおしゃべりで、ずいぶんとたくさんの知識をいただいた。


 ひとさまの詠草について、よしあしなど考えたことはほとんどないし、ただ和歌をすこしばかり学んだので、そうした感受性のままに、わたしなりの好みはある。


 歌会などでは、なかなか言い出せない自分勝手な感性や考えなどを、気がねなく、話し合えるのは、とてもうれしい。



 それは日常茶飯のあわただしさや、ごたごたを免れて、簡素な一輪挿しに無造作に投げ込まれた茶花を愛でるような時間と思える、と書いたら気取りすぎかしら。


 でも、歌って…わたしには、そんなきよらかな〈非日常〉をくれるだいじな彩りなんだもの


 
コメント

うつむいて唇ひらく言葉にはならない何か、とても甘いね

2013-02-14 18:48:00 | Weblog


 バレンタインデーに。



























 
コメント

猫の背の綿毛のやうに伸びる春は陽のそれぞれも無心にまるき

2013-02-11 10:43:16 | Weblog


 春のひなたに。










 おとといの未明さんのリサイタル。


 とても楽しかった。

 未明さんの人柄と、魅力がライブ空間いっぱいにあふれて、二時間、あっというまでした。

 たまにしかお会いできないひとではあるけれど、いつも飾らない、ナイーブな女性。


 甘え上手で、少女っぽくもあり、その反面、いろんな曲面を経験して、相手との距離を丁寧に測るこまやかなひと、と。


 会場のお客様に、終始笑顔と御自分の声と言葉、パフォーマンスで、あたたかい幸福感を分けようとしていらした。


 これからも、どんなふうに歌声でご自身の人生を表現してゆくのだろう。


 帰りに、彼女の新作CD「La magie de L’amour」を買いました。

 バビロンの妖精、おいしい水……私も好きないくつかの歌がリリカルに透明な声で歌われていて、すてきでした。








 


 
コメント

花菱の紬手重りさえざえと若き日のまま姿崩さず

2013-02-09 10:30:25 | Weblog


 今日は、さかもと未明さんのリサイタルに出かける。



 ひさしぶりに、引き出しから、これも最後に母親が袖を通してから、半世紀は経ったろう、蘇芳茜の亀甲花菱の紬を選んだ。


 昔の紬は、あたらしいものより、織りが固く、しっかりしているような気がする。

 染めなどは、時間がたつにつれて、しんなりとやわらかくなってしまうようだけれど、母、祖母、またひいおばあさんの紬などは、おどろくほと性(しょう)をしっかりと保っている。


 今日は北風が強め、とか。それでこれを。




 未明さんのブログに、おひきたてで映ったわたしのまぬけ顔に、我ながらわらってしまった。

 実物は、もうちょっとマシ、と思ってくだされば…(そぉ?

 和服が似合う、と書いてくださったので、今日は、お着物。



 あわただしい日々の中で、渡される花束。言葉と、こころと。



 みめいさんはどんな声でおうたいになるのだろう?



 そのひとの人生とこころがかもし出す、音色を聴きに。





コメント (2)

風邪の屑喉にまつはる声おさへ鬼福と呼べば来福あらむよ

2013-02-03 15:46:46 | Weblog


 節分と風邪の名残に。




 今夜は恵方巻を食べようかな。


 いっときより、ずいぶん声も出るようになったみたい。
コメント

春を含む雨のざわめきほのぼのと新芽呼ぶ柔らかき声のひそむと

2013-02-02 10:45:07 | Weblog


 如月の雨に。






 すこし寒さが緩んできたような気がする。

















コメント

アルファポリス