母に。
親の介護は本当に大変だ。母はまださほど重態ではないが、通院介助と家事炊事で一日が過ぎる。
仕事を休んでさえこれだから、働きながらの介護の疲労はどれほどだろう。
老親は我儘だから、黙って従っていると、次から次へとさまざま用事を言いつける。娘の疲労より、自分の病苦で頭も体もいっぱいだから。
ある時、疲れのために忍耐が切れ、母に文句を言ったら、母の口数が減ってしまった。
すっかり痩せて小さくなった母の顔をしげしげと見つめ、私は自責にかられるが自身のキャパシティ全開、いたしかたないと思う。
私は今まで、世間並みの親孝行など何もできなかった娘だ。
せめて母の最晩年は、穏やかに安楽にと願う。
暇を見つけて、今日から新しい絵を描き始めた。知人の女性。若くないが、老いには遠い。
ある年齢を過ぎた人間の顔は、そのひとの生きてきた時間が刻まれる。生まれついた顔立ちという器に、当人が湛えた感情や思想が人相を作る。
モデルの女性の魅力を、冷静に、お世辞なく、描きたい。
敬愛する画家は、近代ではワイエス。
彼のように描きたい。
良い日だった。
感謝。