ほんの数年だけど、俳句の世界に遊んだことがあった。
いろいろな俳人の句を読み、なかで橋本多佳子さんが、際立って好きだった。
このごろ詠うことについていろいろ考える。
ふと、多佳子さんのことを思いだし、またひきだしてみると、その詩精神の潔さ、的確さ、そして勇気に、あらためてあっと眼をひらかれる。
月光にいのち死にゆく人と寝る
雪はげし抱かれて息のつまりしこと
乳母車夏の怒涛に横むきに
一ところくらきをくぐる踊りの輪
いなびかり北よりすれば北を見る
……
ああ、こんな作品が好きだったと思い出す。
この方の句を読むと、上村松園さんを連想する。どこか似ている気がして。
十七文字という最短の詩形のなかで、個性をうちたてるのは、短歌にまして容易ではないこと。
多佳子さんの句から、多佳子さんの心がつたわる。
揺さぶられる。
画像はまた、アルマ・タデマ