近所の桜並木、行き交いのたびに四季の表情をたのしませてくれる。
夏蔭りさわやかな青葉は、八月半ばごろから、はやくも黄葉し、ちらちらといつしかアスファルトに葉を落とし始めていた。
秋の情緒には、まだ早いのに、とうだるようなあぶら照りのなか、わたしはぼんやりと桜落ち葉をながめた。
どういうわけか、ベランダの植木鉢にも桜の苗木がある。
小鳥が種を落としたんだろうか。誰が植え込んだわけでもない、数年前、武蔵野で拾ってきたドングリを植木鉢に植えたら、かれんな芽吹き。
それから野性の楢の木は、ちいさな鉢に根をまわし、枝を伸ばし、ろくに手入れもしないのに、ゆたかに葉をしげらせる。
その小脇に、いつのまにか、違った種類の小株がのびている、と思ったらどうやら桜のよう。数年間、こんな異種の生え出る気配もないし、土は園芸店で仕入れたものだから、この種は、どこでいつから楢と同居しはじめたんだろう。
鳥が落としたんだろうか?
どうなるかなあ、と忙しさのせいもあって、ほったらかし、時折水やりだけして、悠長に数ヶ月眺めていたが、桜の若木は、けっこうしっかりと繁茂しはじめたので、むやみにひきぬくのもかわいそうになり、しばらく前に、この二株をわけて、それぞれを、もうすこし大きめの鉢に移した。
どちらも、真夏の陽盛りに耐えて、ちゃんと根付いたよう。
そうして、このちいさな葉桜も黄変を始めた。
この子が花を咲かせるのはいつだろう。
日脚が爛(た)け、午後の陽射しは、もじどおりうだるような毎日が続く。
夏中、つめたいものばかり摂っていたせいか、ちょっと「陽あたり」気味の食欲。
秋鯵、秋刀魚、おみおつけ……そんな晩御飯を考えよう。
体調管理もしごとのうち。
桜の秋は、とても早いこと。