あっちゃん。
となまえをつけたのは、二週間ほどまえに、わたしの部屋の扉の前にたおれていたクワガタムシの雌。
触角と、左手がはんぶんもげている。右手は途中でまがってしまっていて、血色もわるく、全体につかれはててボロボロ。
喧嘩でもしたのかな?
このままだと死んでしまいそう。
どうしてここまで来たんだろう。去年はミツクニだった。
でも彼(彼女?)は、五体まんぞくで、おなかがすいていただけみたいだったし。
スイカを与えたら、二日でげんきになり、三日目には森にかえしてやったっけ。
この子はどうだろうか。ほっておいたら死んじゃうな。
家に来たのはうれしいから、去年ミツクニを飼っていた大きな金魚鉢に葉っぱや菜っ葉を敷いて、スイカを入れ、そっとおろしてやる。
名前はどうしよう。角がちいさいから、これは♀だ。
タフに復活してほしいなあ。
……と思ったら、すぐに名前はきまった。篤姫さん。
おもおもしいから、あっちゃんと呼ぶ。
あっちゃんは、やっぱりなかなか元気にならず、二日三日よろよろしていたが、キュウリが好物らしく、食欲はある。→見込みある。
そうして、今ではすっかり
だ。
毎朝とりかえてやるキュウリも、かじった痕がくぼんでぼこぼこになるくらい。
よく食べて、昼はじっと眠っている、みたい。
キュウリのおかげで、つやつやしてからだもひとまわりくらい大きくなった。
もげたと見えた触角も、じつは曲がっていただけで、いつからか、ちゃんと伸びた。
ただ、左手は半分で、右手もへんなぐあいに関節がよじれているのは、なおらない。
元気な夜行性で、一晩中、わたしの枕元でかさこそ動いている。
ガラス鉢の外に出たいのよね……。
どうしようかなあ。
ミツクニみたいに体が大丈夫だったら、すぐに自然に帰してやるんだけれど。
あっちゃんは、こんなふうだから、自然環境の中では、きっとすぐに誰か、何かにやっつけられてしまうだろう。
このまま、うちの子にしておこうか……そしたら長生きだろう。
どうしよう。
あっちゃんのフォトは載せません。かわいそうだから。でも元気で、きたときより器量もよくなった。
かわりに、野花。
名前は知らない。子蜘蛛のふろくがついていた。