思いたって、3月半ば桜の季節に、チェロと詩の朗読をパフォーマンスすることにした。
コロナ禍の事態がどうなるか不穏だが、それはそれとして、次の実りを考えながら、日々の楽しみを紡ぐ。現実、とはうまい表現だとわかる。うつつの生に実りを結ぶこと。
朗読する詩は、安房詩人会の前原会長にご教示いただいた、尼崎四郎の作品を取り上げたいと思う。
彼は立原道造と同年だ。関西人で、京大を中退したインテリだが、不器用な人生を短く、濃く生きた。
多くないその遺作品は素晴らしいと私は思う。尼崎自身が生前にあらかたの作品を取捨してしまい、駄作も余作もない。
一兵卒として太平洋戦争に従軍し、激戦下を凌いだ彼の詩は、生死を凝視して冷たい内容も多々あるが、恋人への愛を歌った作品は、心がふるえるほど無垢で美しい。
チェロを弾いている時、私はうつつを離れた夢を見ているのかもしれない、と思う。
それに尼崎四郎や立原道造の作品を加えて、この疫病に苛まれる息苦しい世界に、純な愛の夢を広げてみようと思う。
きれいな夢を。
良い日だった。感謝。