リサイタル第一日め。
20数年前からの友人がはるばる訪ねてくれた。再会は10年ぶりだろうか。
彼女と親しく交流していた頃の出来事は、つい昨日のように思い出される。以前より口数が増え、全体にゆったりと明るくなっていた。
目鼻だちの整って愛らしい顔立ちだが、やや俯きかげんに感受性鋭い少女時代から、結婚、出産を経て、人生経験が彼女の雰囲気をゆたかに、前向きにしたと思う。
それから、安房詩人会の会長、前原武さんも参加してくださり、尼崎安四についての貴重なお話しをして下さった。
私はこの方から尼崎安四を教えられ、この朗読リサイタルを企てた。
立原道造、尼崎安四、ほぼ同い年で、ともに優秀だった2人の天才詩人の作品は、じつに対照的だ。
繊細で、洗練された感性のレース編みを極め、青春だけを生きて、結核により夭折した立原。
京大出のインテリでありながら、わざわざ一兵卒として太平洋戦争を戦い、戦後も不器用な生活の労苦を重ねながら、真摯に詩作を重ね、稀に見る深遠な言葉の彫琢を残した尼崎。彼も38才という男盛りで没している。白血病だった。
私が今読み取る立原と尼崎の共通項は、純粋、イノセント、自己のナイーブな本質の認識、個人主義。2人の作品が、永遠に読み継がれてほしいと私は願っている。
花束はお客様からいただいた。御自宅の花壇から、と。
良い日だった。
すべてに感謝。