雪香の星月夜日記

山口雪香の歌がたり、ささやき、ひとりごと

御随身(みずいじん)汝(な)のたましひの尽くるまで影と添ひたる翡翠幻想

2008-01-31 23:05:37 | Weblog

 御随身は、平安時代の貴族のボディガードということだろうか?

 光源氏にも、外出のときは、影のように彼らがぴったり付き添うた。

 ものがたりには、彼らのことはなんにも描かれない。

 使い走り、守護びと、数行の断片、ちらほらするだけ。

 源氏絵の袋帯を眺めていたら、脇役のそのまた脇役の彼らの視線が、ふと気になった。

 主人公の、いちばん身近だったかもしれないひとたちだから。


 このフレーズは、たぶん塚本邦雄さんの「馬のたましひ冴ゆるまで」のうねりに乗っているんだろう。






 

 

 
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てならひの新床踏めば金鈴(きんれい)をさやか韻(ひび)かす聖チェチリアよ

2008-01-31 20:31:08 | Weblog


 音楽の守護聖人聖チェチリアに。

 
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薄雪にすれちがひつつアレルヤなど散るかもしれぬ夢まどひかな

2008-01-31 18:45:50 | Weblog

 買い物にでかけたら、はらはらと雪が舞い降りて、すぐ消えた。

 葛原さん、浜田さん。

 親近する歌人ふたりともにクリスチャンなのは、偶然ではないだろう。


 祈りのこころと、うたごころとは一線を画す。

 そうしないと両立しない。互いを制約しあうと、硬直して、まずしいものしかうまれない。







 

 




 
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頬(ほ)に触れる大気よぎりて蜻蛉の君消えゆくか香りも残さず

2008-01-31 15:32:37 | Weblog


 こういう曇り日、風低い、しんと冷たい流れのなかで、

 自分だけに差し向かいに過ごしていると、いやおうなしに詩にひっぱられる。

 そう表現するしかない感覚。からだのなかから流れ出してしまうような、

 自分が違う世界にひきこまれてしまいそうな感覚。

 いろいろなヴィジョンがうまれる。つかまえようとする。


 これは、源氏物語の蜻蛉の巻からか。

 明日、また着物をまとう。あらたまった席なので、袋帯。源氏物語を意匠にした全通の金襴をながめていたら、その華麗さよりも、宇治十帖のしめやかなくだりが思い出された。

 おてんきのせいか。

 長着は、加賀友禅にしよう。

 あかるい浅緑地に寒牡丹の裾模様。

 さっき、仕付け糸を切った。

 あたらしい絹は、重い。


 似合うといいな……。



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暁に舟ほどきゆくてのひらの熱さに依れば火屋(なや)昇ること

2008-01-31 12:40:43 | Weblog

  宇宙なる火屋(なや)さびしめば窓にともる芯さへなくに火山灰(よな)ふりつづく

 
 浜田さんの歌から。

 火屋って、なんだろう?

 このひとの歌、一首一首のイメージはとらえがたく、朦朧としているのに、こころひかれる。ことばのむこうにおぼろなヴィジョン、感覚、情感がゆれている。

 なにをうたっているのかわからない。

 でも、このひと独得の語彙と語感と色彩感覚、描線の角度があって、あたかも銀筆画で描いた繊細な風景画のように、こころをとらえる。

 こんなしずかな曇り日には、ふとひらいてしまう歌集……。






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くちびるはかりそめの宿愛しければ言の葉削ぎてはだかになれよ

2008-01-31 11:39:50 | Weblog

 はだか木を見て。

 素のままのこころが見える瞬間は、空白なのかもしれないと思う。









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夜(よ)づたひて水滴歌はしたたるや澪残す暁(あけ)に男をかへし

2008-01-31 09:35:50 | Weblog

 いにしへ、後朝(きぬぎぬ)のこころを。

 昔物語、たとへば、伊勢、大和などには固有名詞はほとんど書かれない。

 みじかい小段は、スケッチふうにあっさりと「昔、おとこありけり」「女、いと思ひわびて……」などと綴られる。

 固有の名前はイメージの喚起力が強いから、人物造型より、ものがたりの流れそのものを淡々と味わうときは、こんなふうに、ただ、男、女、それだけのほうが情感があると思う。

 こころの原点に触れてくる。

 男と女。









 
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薔薇縊(くび)るゆびさき茎を痛ましむくちびる同士は優しいけれど

2008-01-30 22:54:32 | Weblog

 もげてしまった薔薇のために。

 

 
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額(ぬか)しろく硝子は眠りはなびらの灯る夜な夜なわたしは海藻

2008-01-30 22:24:40 | Weblog

 くらい、夜の海底でゆれる海草を。

 ものいいたげな、こころの深みでゆらぐ……。

 なにかを。
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酔ひ伏して胤したたらす植物の樹液抜くごとロトしぼる娘

2008-01-30 18:16:21 | Weblog

 葛原妙子さんの、歌へ。

   
  ほのぼのとましろきかなやよこたはるロトの娘は父を誘(いざな)ふ

 
 聖書の一節。ソドムとゴモラが滅びたあと、ロトと娘ふたりが生き延びた。

 娘たちは、一族を絶やさないために、老父を前後不覚に酔わせてから、共寝し、それぞれこどもを産んだ。

 この逸話は、アダムとイヴの神話時代よりも、なまなましく、リアルに思える。

 ストイックな主張の目立つ聖書の中では、うたごころをそそられる伝説。

 詠ってみたい、とふと思う。

 葛原さんの歌は近親相姦を、美的婉曲に詠いまわして、あくどさを免れている。

 ロト、という固有名詞だけで、浮かぶものがある。

 わたしの歌は、ちょっとあざとい。






 
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アルファポリス