母は、昔わたしに重かった。
確か、『母が重くてたまらない』という著作もあった。
わたしはそれに共感した記憶がある。
若さを過ぎ、晩年を見通す年齢に差し掛かり、さらに数年前から母が病んだためもあり、わたしと彼女の関係は変化したようだ。
たぶん、彼女もわたしも、自分たちの現世に生きる時間の残りを測る切なさを知ったためだと思う。
その点では、子ナシのわたしのほうが、母親よりも達観が早かったことになる。
晩年は人生の集大成であり、人格の凝縮が往々にして表現される。
すこやかに、つつましく、丁寧に。
美しい感情を保って年齢を重ねたいものだ。
自分の描く作品は、内面のひとつのバロメーターだ。
メムリンクは難しい。
気高さと初々しさ。
陰翳の細かさ。
永遠への希求。