調和の門ー小椅子の聖母鏡模写。
油彩F10号。
小椅子の聖母は、ラファエルロ30歳のころの作品。なんと、私の息子ほどの年齢。私には子供はいないけれど、こうした数字を知ると改めて息を呑む。
描きながら、いろいろ考えた。このイエスはたぶん5〜6歳くらいだが、幼児にはやや立派すぎる肘と膝をしている。西洋人の子供は体格が良いとはいえ、こんなにしっかりした手足ではないだろう。
赤ん坊の太りすぎとあっさり眺めるより、私はいささかおばさん視点から、ラファエルロは、このおさな子にこっそり青年の肉体をほのめかせたのでは、と。
優しく若く、美しい母は、全ての男性にとり、永遠の憧れ、恋人原型だ。この絵を見る男性は、ごく自然にイエスに感情移入して、美しく華やかなマリアに抱かれている感覚を楽しむことができるはずだ。イエスがやわらかな赤ん坊の体で描かれているよりも、ずっと強く、リアルに。
ラファエルロは、他の作品では、いかにも赤ちゃんらしい、イエスやヨハネをたくさん描いても、いる。
いつもこんな逞しいおさな子ではないから、何か企みがあったに違いない、と私は思う。
天才は長生きしなかった。
数多の素晴らしい作品を残し、37歳で帰天。
彼の死とともにイタリアルネサンスは終わる。ひとりの画工の死が世界史を作ったとは、やはり彼はラファエルの名前どおり、神が地上に遣わした天使だったのかな。
たぶんね。
今日も良い日だった。神に感謝。