電脳筆写『 心超臨界 』

行動は人を作りもし壊しもする
人は自らの行為が生み出したものなのだ
( ヴィクトル・ユーゴー )

◆日本を裁いた側の「罪」

2024-07-02 | 05-真相・背景・経緯
§4 東京裁判――日本に犯罪国家の烙印を押すために演じられた政治ショー
◆日本を裁いた側の「罪」


世界の「公の秩序と安全」にたいする将来の脅威>をなくするのが裁判の趣旨の一つだと東京裁判でよくいわれたが、パルは<かような将来の脅威を判断する資料は、本裁判所には絶対にない。検察側も弁護側も、この点に関する証拠提出は、絶対に要求されなかったのである>と否定した。何のための裁判なのか。パルは<復讐の手段>だったとしたうえで、警告を発する。<おそらく敗戦国の指導者だけが責任があったのではないという可能性を、本裁判所は、全然無視してはならない


『「パル判決書」の真実』
( 渡部昇一、PHP研究所 (2008/8/23)、p219 )
第十二章 正義の秤

※注:パル判事の主張と見解を太字で示す。

◇日本を裁いた側の「罪」

「パル判決書」の最後となる第七部「勧告」の冒頭は、<以上述べてきた理由にもとづいて、本官は各被告はすべて起訴状中の各起訴事実全部につき無罪と決定されなければならず、またこれらの起訴事実の全部から免除されるべきであると強く主張するものである>という一文である。東條英機をはじめとするA級戦犯容疑者は全員、すべての起訴条項について無罪とパルは判断した。

以後、それまでに述べてきたことをあらためて総括しながら「勧告」は綴られているが、私が印象深いと思う箇所を挙げてみたい。

まず、次の一文である。

戦勝国は、戦敗国にたいして、憐憫から復讐まで、どんなものでも施しうる。しかし、戦勝国が敗戦国に与えることのできない一つのものは、正義である、ということがいわれてきている

これは東京裁判そのものへの皮肉といえる。

世界の「公の秩序と安全」にたいする将来の脅威>をなくするのが裁判の趣旨の一つだと東京裁判でよくいわれたが、パルは<かような将来の脅威を判断する資料は、本裁判所には絶対にない。検察側も弁護側も、この点に関する証拠提出は、絶対に要求されなかったのである>と否定した。何のための裁判なのか。パルは<復讐の手段>だったとしたうえで、警告を発する。

おそらく敗戦国の指導者だけが責任があったのではないという可能性を、本裁判所は、全然無視してはならない

最後は有名な一文で『パル判決書』は締め括られる。

「時が、熱狂と、偏見をやわらげた暁には、また理性が、虚偽からその仮面を剥ぎとった暁には、そのときこそ、正義の女神はその秤を平衡に保ちながら過去の賞罰の多くに、その所を変えることを要求するであろう」

牛村圭氏が『文藝春秋』2007年9月号で紹介しているが、これはジェファソン・デービスという南軍の大統領だった人の言葉である。デービスがなぜ、こういうことをいったのか、それは南軍の捕虜収容所長だったヘンリー・ワーズ大尉の死刑が関係している。ワーズ大尉は北軍の捕虜を残虐に扱ったという理由で死刑を宣告されたが、そこには根拠がなかったので、「全部悪いことをしたと認めろ。ただし、それは南軍大統領ジェファソン・デービスの命令があったといえば許される」と北軍側からささやかれた。ところが、ワーズ大尉は「そんな嘘はつきたくない」と拒否して死刑になった。デービスはこの大尉に心を痛め、汚名は晴らされるということを記したのである。

この言葉はぴったり東京裁判に当てはまると思う。「予言」といってもいいほどだ。時がたてばたつほど、日本を裁いた側の「罪」が明らかになってきた。アメリカ自体も無差別爆撃、原爆と、天人ともに許さざる犯罪に手を染めていたし、アメリカが同盟国としたソ連も悪辣であった。インドネシアに対するオランダの数百年にわたる掠奪、フランスのベトナムやラオスなどに対する悪質極まりない収奪、イギリスのビルマに対する残酷な統治……。すべて時がたって明らかになった。まさに、「予言」のとおりである。

また、日本が重視したのは共産主義の侵入だったが、日本が敗戦するとあっという間にシナ大陸は満洲を含めて共産主義国になり、さらに時間がたってわかったのは、共産主義政権の毛沢東が数千万の自国民を殺したということだった。

これらのことに思いを致すとき、パルが訴えたかった「正義」が、あらためてわれわれの胸を衝(つ)くのである。
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