電脳筆写『 心超臨界 』

人生は良いカードを手にすることではない
手持ちのカードで良いプレーをすることにあるのだ
ジョッシュ・ビリングス

ゴーン事件とフランス病――三井美奈さん

2018-12-04 | 04-歴史・文化・社会
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《 いま注目の論点 》
★靖国神社に御親拝を――櫻井よしこ
【「美しき勁(つよ)き国へ」産経新聞 H30.12.03 】https://tinyurl.com/y8v5c2r6
★「代始改元」の伝統にのっとれ――百地章・国士舘大学特任教授、日本大学名誉教授
【「正論」産経新聞 H30.11.30 】https://tinyurl.com/yc9l9tbw
★中国経済の「10月ショック」――石平さん
【「石平のChina Watch」産経新聞 H30.11.29 】https://tinyurl.com/ya47maoe
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ゴーン事件とフランス病――三井美奈・パリ支局長
【「美しき勁(つよ)き国へ」産経新聞 H30.12.04 】

クリスマス商戦が台無しだ。パリは2週間連続で催涙ガスや放火、投石で大揺れになった。恋人たちをロマンチックに盛り上げようと、シャンゼリゼ通りにともった赤いイルミネーションは今や、炎と血の色に見える。わが家の階下のカフェも襲われた。

デモは「ガソリンなどの燃料税を来年1月から引き上げる」という政府方針に抗議する。「黄色いベスト」をシンボルとして自然発生的に広がった。「増税より生活苦を何とかして」(パリの72歳女性)など、マクロン政権そのものへの反発も多い。世論調査では8割がデモを支援する。

マクロン大統領には、仏ルノー、日産自動車の連合維持をめぐる問題に続く危機となった。2つの問題の共通点は「自動車」だけではない。病根は共に、「国家主導経済」にある。国の役割が極端に強い。政府は企業に介入し、国民は何でも政府のせいにする。経済不振も「政府の責任」だ。

ゴーン容疑者逮捕後、マクロン氏やルメール経済・財務相が、ルノーの暫定経営陣そっちのけで「連合維持」を訴えるのも、こんな「フランス病」の表れだ。

ルノーは今夏、大統領がテコ入れする電気自動車の開発・生産に向け、国内で10億ユーロ(約1300億円)の投資を表明したばかり。来年中に約5千人の雇用が生まれる。その命運は、日産にかかる。

国民の不満がすぐデモに発展するのは、フランスでは日常的な光景だ。革命が生んだ伝統で「民衆の訴え」は権利とみなされ、政府は強硬な鎮圧には及び腰。これに乗じて暴徒がのさばる。

サルコジ、オランドと過去2人の大統領は相次ぐデモで支持が低迷し、1期で退陣した。昨年さっそうと登場したマクロン氏もいまや支持率は20%台。就任1年余りで、前任者たちの運命が眼前にちらつく。

何でも国が主導すれば、民間活力は衰える。戦後、フランスが生んだ超音速旅客機コンコルドや高速鉄道TGV、原子炉は全て、国家一丸の巨大投資が可能にした。コンコルドは15年前に退役。重厚長大産業はいま、長期衰退にあえぐ。

経済協力開発機構(OECD)の2015年統計によると、フランスで国内総生産(GDP)に占める政府支出の割合は56.6%。日本は39.4%だ。経済の政府依存度が、フランスは極めて大きい。

仏紙ルモンドの元経済記者、フィリップ・シモノ氏は「何でも『お上が決める』が当たり前。グローバル市場との隔絶は著しい。これでは外国にそっぽを向かれる」と話す。

マクロン氏は20カ国・地域(G20)首脳会議の会場で安倍晋三首相と会談し、3社連合の維持を共通の課題にしようとした。「政府が関与すべきではない」といなされ、当てが外れた。

失業率は10年来、10%前後で高止まり。マクロン氏が「起業奨励」を叫んでも、元気のある新興企業はなかなか出てこない。

政府は外資を経済復活の呼び水にしようとする。だが、日産の業績を自国の苦境に役立てようというのは「提携」ではない。フランス病の処方箋は「民活」。治療は政府と国民にしかできない。背景に目を向けず、ゴーン容疑者逮捕を「日本の陰謀」と論じる仏メディアはお門違いも甚だしい。
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